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第6章【守護者二人の過去】
45罪 必要な人②
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深月の時のような政策にはならないとは思う。だが、深月にすべてを任せたハルナの想いはどうなってしまうのか。
そんな事を考えていた燿は、無意識に両手に力がこもり始めていた。手のひらに爪の痕が残りそうなほど、力強く握りしめていた。
「確かに深月が神国王だった時よりはマシになるかもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない。深月の政治が『深月の考えの元』に行われたものだったのか、『天界の考えが影響されていた』のか、僕らにはわからない。だけど、深月を止めなかったって事は、天界は今までの政治でも全く問題がなかったってことじゃない?」
「そういう政策をしてほしかったのか、人界に興味がなかったのか、それは私達にはわかりません」
「だけど、聖月はハルナちゃんから神国を託されたんだろう?」
燿と耀は真っすぐに聖月を見つめながら問いかけた。神妙な面持ちで、真面目な声色で、怖いくらい真剣な眼差しで、彼らの視線に聖月は射貫かれた。
なぜ、自分が犠牲になろうと考えていたと気付かれたのか、と聖月は狼狽えた。ホワイトブロンドから覗く瞳がゆらゆらと揺れる。薄く結ばれた唇が、硬く閉じられた。
「僕らは許さないよ」
「え?」
「聖月さんは、ハルナさんから託された神国をしっかりとまとめ上げる義務があります」
「聖月。僕らに、二人の記憶と力を分離させるためのリスクを教えてよ」
その瞬間、その場の空気がシン……と静まり返ったような気がした。
冷たい空気が流れ、その場が凍り付いたようにも思えた。長い長い時間が流れたようにも感じた。
けれど、どれもこれも気のせいだ。それらすべては一瞬の瞬きの間に過ぎ去ったことだ。
あまりにも、衝撃的すぎる発言だったからだ。
(まさか……)
目を丸く見開いて、聖月はハクハクと金魚のように呼吸をした。
「まさか、そのリスクを二人で負うつもりじゃありませんよねっ!?」
責め立てるように聖月は声を荒げた。そんな事はしたくないと思ったから。そんな事は許したくないと願ったから。ゑレ妃とハルナが大切に思っていた人たちを、そして彼女たちを大切に思っていた人たちを犠牲になんてしたくなかったから。
そんな事を考えていた燿は、無意識に両手に力がこもり始めていた。手のひらに爪の痕が残りそうなほど、力強く握りしめていた。
「確かに深月が神国王だった時よりはマシになるかもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない。深月の政治が『深月の考えの元』に行われたものだったのか、『天界の考えが影響されていた』のか、僕らにはわからない。だけど、深月を止めなかったって事は、天界は今までの政治でも全く問題がなかったってことじゃない?」
「そういう政策をしてほしかったのか、人界に興味がなかったのか、それは私達にはわかりません」
「だけど、聖月はハルナちゃんから神国を託されたんだろう?」
燿と耀は真っすぐに聖月を見つめながら問いかけた。神妙な面持ちで、真面目な声色で、怖いくらい真剣な眼差しで、彼らの視線に聖月は射貫かれた。
なぜ、自分が犠牲になろうと考えていたと気付かれたのか、と聖月は狼狽えた。ホワイトブロンドから覗く瞳がゆらゆらと揺れる。薄く結ばれた唇が、硬く閉じられた。
「僕らは許さないよ」
「え?」
「聖月さんは、ハルナさんから託された神国をしっかりとまとめ上げる義務があります」
「聖月。僕らに、二人の記憶と力を分離させるためのリスクを教えてよ」
その瞬間、その場の空気がシン……と静まり返ったような気がした。
冷たい空気が流れ、その場が凍り付いたようにも思えた。長い長い時間が流れたようにも感じた。
けれど、どれもこれも気のせいだ。それらすべては一瞬の瞬きの間に過ぎ去ったことだ。
あまりにも、衝撃的すぎる発言だったからだ。
(まさか……)
目を丸く見開いて、聖月はハクハクと金魚のように呼吸をした。
「まさか、そのリスクを二人で負うつもりじゃありませんよねっ!?」
責め立てるように聖月は声を荒げた。そんな事はしたくないと思ったから。そんな事は許したくないと願ったから。ゑレ妃とハルナが大切に思っていた人たちを、そして彼女たちを大切に思っていた人たちを犠牲になんてしたくなかったから。
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