異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

文字の大きさ
上 下
216 / 283
第6章【守護者二人の過去】

42罪 命の輝き②

しおりを挟む
 苦笑を浮かべて頬をポリポリと掻きながら、聖月みづきは困ったようにひかる耀ひかりを見つめると、ゆっくりと重く閉ざしていた口を開いた。
 ホワイトブロンドの髪がさらりと風にたなびくように揺らめいた。顔を覆い隠すように流れてきた髪の隙間から、聖月みづきの細められた瞳が垣間見える。その瞳は何かの決意を秘めているように熱く、そして慈しむように優しく、儚げだった。

「彼女は――――いえ、彼女たちは……」

 言い直したのはゑレ妃えれひだけに留まらない話だから。ひかる耀ひかりもそれを感じ、ゑレ妃えれひオーブからハルナをオーブに視線を向けた。

「前世の力のせいで、不必要な出来事に巻き込まれてしまいました。不要な犠牲になってしまったのです」

 ゑレ妃えれひの深く緑色に輝くオーブと違い、ハルナのオーブはか細く光る淡い紫色をしたオーブだった。死したオーブの光の強さや色の濃さは、そのままそのオーブ自身の寿命を表していた。それを知っているのは、こういった輪廻転生の儀式に携わるもの達だけだ。生きていたころのゑレ妃えれひもハルナも知る由もないことだった。
 そしてそれは、とどのつまり言うと。

「ハルナさんの魂が特に……消耗が激しいです。それはひかるさんも耀ひかりさんも分かっていましたよね?」

 魔人、冥界人にはオーブの輝きが見える。ひかる耀ひかり聖月みづきの言葉に静かにうなずき返した。

「ハルナさんは革命軍で、とても素晴らしい力を発揮してくれました。それが……かつて七つの大罪グリモワールと呼ばれた者たちの力です」
「だけど、そのせいで革命軍の人たちは皆してハルナちゃんの力をあてにした」
「ええ、その通りです」

 聖月みづきの説明に補足するように付け足すひかるの言葉に、一瞬だけその時のことを思い出したのか聖月みづきの表情が曇った。けれど、それに気づいてもひかる耀ひかりも何も言いはしなかった。
 だって、これはすべて事実だから。

「そして、求められるがままに力を発揮し振るってくれたハルナさんは、オーブに大きなダメージを受けました。キャパシティ以上の力の行使は、彼女のオーブにまで影響を及ぼしたのです」

 だからハルナのオーブゑレ妃えれひのものと比べるとか細く光り輝いていて、色も淡いものだった。ハルナとゑレ妃えれひオーブへのダメージの違いでもあった。

「それで?」
「そこからなぜ、ゑレ妃えれひさんのオーブを保管していた話になるのですか?」

 彼らの問いかけはもっともなことだった。現在話していたのはゑレ妃えれひの事ではなく、つい最近亡くなったハルナのオーブの話なのだから。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...