上 下
213 / 283
第5章【石碑の守護者】

41罪 真実①

しおりを挟む
『さ、雪さん。記憶を、力を…………取り戻す時間ですよ』

 すっと、石碑へと手を翳す耀ひかりさん。はぐらかされた。
 答えてくれないって事?

「はぐらかさないでよ! ねえ、名乗り出たってどういうことなの⁉」
『雪ちゃん……知らない方がいいことも、あるんだよ』
「だけどっ」

 食って掛かる私にひかるは首を左右に振った。
 どうあっても教えてくれないって事なの?

白卯はくうはっ⁉」
「はいっ⁉」

 私とひかる耀ひかりさんで話していたからか、話を振られると思っていなかったのであろう白卯はくうが、裏返った声を上げた。
 私はひかる耀ひかりさんから視線を離し、私の後ろに立っていた白卯はくうを真っすぐに見つめた。

白卯はくうは何か知らない⁉ 二人の言う“名乗り出た”ってどういう意味か……知らないっ?」

 私には、彼らが私達の記憶と力を守るためにわざわざ死を選んで肉体を放棄して、十二の精神体に分離したようにしか思えなかった。その考えばかりが脳裏をぐるぐるとめぐり続けて、他の考えに至ることが出来ない。

わたくしは……」

 知っていたら卯ノ国の石碑の時にひかる耀ひかりさんの話をされていたかな? とも思った。その話をされなかったという事は、白卯はくうも知らなかったんじゃないかと私は予想する。
 だけど、それは予想に過ぎない。真実と予想は異なるものだ。

白卯はくう殿』
「……っ」
白卯はくう
ひかる様、耀ひかり様……」

 そのやり取りが物語っているように思えた。彼らがただの顔見知りではないという事が、手に取るようにわかる。

白卯はくう

 ぴしゃりと、白卯はくうの名前を呼び彼をジッと見つめた。申し訳なさそうにおろおろしながら困る白卯はくうを見ていると、なんだか少しだけ申し訳なく思えてくる。
 だけど、秘密にされるのもなんだか嫌だ。知りたいんだ。だって、無関係じゃないから。

ひかる様、耀ひかり様……申し訳ございません」
白卯はくう殿っ』
わたくしは雪様に嘘はつけませぬ! 隠し事も…………できませぬ」
『あーあ……白卯はくうはほんと、この子に弱いよね』

 白卯はくうのうさ耳が垂れ下がり、申し訳なさそうに肩を落とししょぼくれる姿を見て、ひかるは肩を竦めた。
 なんとなく予想は出来ていた、とでも言わんばかりの態度に私は期待の目を白卯はくうに向けた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...