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第5章【石碑の守護者】
41罪 真実①
しおりを挟む『さ、雪さん。記憶を、力を…………取り戻す時間ですよ』
すっと、石碑へと手を翳す耀さん。はぐらかされた。
答えてくれないって事?
「はぐらかさないでよ! ねえ、名乗り出たってどういうことなの⁉」
『雪ちゃん……知らない方がいいことも、あるんだよ』
「だけどっ」
食って掛かる私に燿は首を左右に振った。
どうあっても教えてくれないって事なの?
「白卯はっ⁉」
「はいっ⁉」
私と燿と耀さんで話していたからか、話を振られると思っていなかったのであろう白卯が、裏返った声を上げた。
私は燿と耀さんから視線を離し、私の後ろに立っていた白卯を真っすぐに見つめた。
「白卯は何か知らない⁉ 二人の言う“名乗り出た”ってどういう意味か……知らないっ?」
私には、彼らが私達の記憶と力を守るためにわざわざ死を選んで肉体を放棄して、十二の精神体に分離したようにしか思えなかった。その考えばかりが脳裏をぐるぐるとめぐり続けて、他の考えに至ることが出来ない。
「私は……」
知っていたら卯ノ国の石碑の時に燿と耀さんの話をされていたかな? とも思った。その話をされなかったという事は、白卯も知らなかったんじゃないかと私は予想する。
だけど、それは予想に過ぎない。真実と予想は異なるものだ。
『白卯殿』
「……っ」
『白卯』
「燿様、耀様……」
そのやり取りが物語っているように思えた。彼らがただの顔見知りではないという事が、手に取るようにわかる。
「白卯」
ぴしゃりと、白卯の名前を呼び彼をジッと見つめた。申し訳なさそうにおろおろしながら困る白卯を見ていると、なんだか少しだけ申し訳なく思えてくる。
だけど、秘密にされるのもなんだか嫌だ。知りたいんだ。だって、無関係じゃないから。
「燿様、耀様……申し訳ございません」
『白卯殿っ』
「私は雪様に嘘はつけませぬ! 隠し事も…………できませぬ」
『あーあ……白卯はほんと、この子に弱いよね』
白卯のうさ耳が垂れ下がり、申し訳なさそうに肩を落とししょぼくれる姿を見て、燿は肩を竦めた。
なんとなく予想は出来ていた、とでも言わんばかりの態度に私は期待の目を白卯に向けた。
すっと、石碑へと手を翳す耀さん。はぐらかされた。
答えてくれないって事?
「はぐらかさないでよ! ねえ、名乗り出たってどういうことなの⁉」
『雪ちゃん……知らない方がいいことも、あるんだよ』
「だけどっ」
食って掛かる私に燿は首を左右に振った。
どうあっても教えてくれないって事なの?
「白卯はっ⁉」
「はいっ⁉」
私と燿と耀さんで話していたからか、話を振られると思っていなかったのであろう白卯が、裏返った声を上げた。
私は燿と耀さんから視線を離し、私の後ろに立っていた白卯を真っすぐに見つめた。
「白卯は何か知らない⁉ 二人の言う“名乗り出た”ってどういう意味か……知らないっ?」
私には、彼らが私達の記憶と力を守るためにわざわざ死を選んで肉体を放棄して、十二の精神体に分離したようにしか思えなかった。その考えばかりが脳裏をぐるぐるとめぐり続けて、他の考えに至ることが出来ない。
「私は……」
知っていたら卯ノ国の石碑の時に燿と耀さんの話をされていたかな? とも思った。その話をされなかったという事は、白卯も知らなかったんじゃないかと私は予想する。
だけど、それは予想に過ぎない。真実と予想は異なるものだ。
『白卯殿』
「……っ」
『白卯』
「燿様、耀様……」
そのやり取りが物語っているように思えた。彼らがただの顔見知りではないという事が、手に取るようにわかる。
「白卯」
ぴしゃりと、白卯の名前を呼び彼をジッと見つめた。申し訳なさそうにおろおろしながら困る白卯を見ていると、なんだか少しだけ申し訳なく思えてくる。
だけど、秘密にされるのもなんだか嫌だ。知りたいんだ。だって、無関係じゃないから。
「燿様、耀様……申し訳ございません」
『白卯殿っ』
「私は雪様に嘘はつけませぬ! 隠し事も…………できませぬ」
『あーあ……白卯はほんと、この子に弱いよね』
白卯のうさ耳が垂れ下がり、申し訳なさそうに肩を落とししょぼくれる姿を見て、燿は肩を竦めた。
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