異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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第5章【石碑の守護者】

40罪 再会を最初から①

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「……ひかるっ! 耀ひかりさんっ‼」

 そこに彼らがいることを私は『知って』いた。森を駆け抜け、開けた場所へ出た瞬間に私は彼らの名前を呼んだ。
 すがるように、求めるように、私は視線を前に向ける。

『久しぶりですね』
『久しぶりだね』

 石碑を挟むようにたたずむひかる耀ひかりさんの姿を確認すると、今にも泣きだしそうになった。
 鼻がツンと痛むような感覚を覚え、視界が揺らぎ始める。

ひかる……耀ひかり、さんっ」
『あれ、僕達の名前を知ってるって事は……』
『そういう事のようですね。もう……すでにいくつか記憶を取り戻している、と』

 私を見つめる二人の目が、とても暖かかった。懐かしい人を見るような、愛しい人を見るような、大切な人を見るような、そんな優しくて暖かなものだった。
 そんな彼らの視線が、逆につらかった。胸がギュッと締め付けられるように痛い。心が泣き叫んでいるように震える。

「覚えて……いないの?」
『覚えていない――とは?』
『どういうこと?』

 ひかる耀ひかりさんの反応が、まるで初対面の時のようで……私は唖然とした。口から溢れ出るようにこぼれた言葉は掠れてしまっていた。

「子ノ国でっ……話し、た…………のに……」

 なんで覚えていないの? と言葉にしたかった。だけど、私は思い出してしまった。前回会った彼らが言っていた言葉を。
 彼らは最後、私になんと言った? 彼らは最後、なんて言っていた?
 彼らは『あとは、別の僕達に任せるとするよ』と言っていた。『また、最初からだけどね』って言っていた。そして、『何度もそれを繰り返させるのは、酷だとは思います』とも言っていた。
 それはつまり――――。

「子ノ国の二人とは……違う、の?」

 問いかけた私に、ひかる耀ひかりさんはにっこりと微笑みを浮かべるだけだった。
 何も答えてくれない。何も教えてくれない。
 それがかえって肯定しているように思えた。

(このひかるひかるさんは……あの日会ったひかる耀ひかりさんじゃ…………ない)

 ストン、と落ちるように納得した。だからこその二人の反応だったのだと、理解できた。
 同一人物でも違う二人ならば、初対面のような反応になるのは当たり前だ。

『僕達は、それぞれの国の石碑に憑依しているようなものだからね』
「憑依……?」
『はい。私達はすでに肉体はありません。精神体だけとなった私達は』
『十二の国の石碑にそれぞれ憑依して、ずっと守り続けてきたんだよ』

 だから、子ノ国の二人と、丑ノ国の二人は同じであって同じじゃない。
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