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第5章【石碑の守護者】
38罪 白卯と燿(ひかる)と耀(ひかり)①
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「いや、よく眠れたなら良かった。その……うなされてたらって心配してたから」
「…………っ。そ、だね……うん、心配してくれて、ありがとう」
その心遣いが少しだけ痛かった。ヴェル君の心配している『うなされていたら』は、おそらくネヘミヤとの事での悪夢の事だろう。だけど、私には『ヴェル君と静の事』で悪夢を見たんじゃないかと認識してしまう。
(違う違う違う。そのことじゃない。大丈夫大丈夫、バレてないんだから……)
大々的にかぶりを振ることは出来なかった。だから、私は心の中でそんな風に自分に言い聞かせるように何度も呟いた。
「そだ。今日中にもう丑ノ国の石碑を探しに行くんだよね?」
「あ、うん。そうだね、その方がいいと思う。あまり悠長にしていると丑ノ国の人たちに見つかるかもしれないしね」
あの話を続けたくなくて、私は話を変えた。それにヴェル君も勢いよく食いついてくれた。たぶん、ヴェル君もあの話の続きをしたくなかったんだろう。
私は、とりあえず……と言わんばかりに白卯の隣に腰かけた。ずっと静とヴェル君から距離を取ったまま立った状態で挨拶をしていたから、そろそろ座った方が自然かな? と思ったのだ。だからといって、二人の近くに座るという選択肢はないのだけど。
「またあの二人……いるのかな?」
「その可能性はあると思うよ」
「あの二人?」
私とヴェル君の会話で気にかかった点があったのか、白卯がキョトンとした表情を浮かべて首を傾げた。
そういえば、白卯は燿と耀さんが現れた時はそこに居なかったんだった。その事に気付いて、私はなんと説明しようかと斜め上へと視線を向けた。
「うーんとね、燿と耀さんって人が石碑を守ってくれていたみたいなの」
「燿さんと……耀さん、ですか」
「あれ? 白卯、知ってる感じ?」
「いえ……その、ずいぶんと昔に同じ名前の方と話したことがありましたので」
同姓同名かな? なんて少しだけ疑問に思ったけれど、そんなのは石碑までたどり着ければわかることだ。
私は白卯の返事に「そっかぁ」とだけ返した。
「本人かどうかも分からないですし、本人達だったとしても私のことを覚えているかどうかも……まあ、わからないですしね」
「あまり関わり合いにならなかったの?」
「――――私が想定している『燿さんと耀さんと関わり合いが深かったのは私ではなくて……その、姫様、でしたので』
物凄く言いにくそうに口ごもりながらも、はぐらかすわけにもいかないと思ったのか白卯は教えてくれた。ただし、完全に私の方から視線を逸らしていた。私の方を見ようともしない。
それはたぶん、私が白卯の言う姫様――――ゑレ妃に似ているから、だろう。
「…………っ。そ、だね……うん、心配してくれて、ありがとう」
その心遣いが少しだけ痛かった。ヴェル君の心配している『うなされていたら』は、おそらくネヘミヤとの事での悪夢の事だろう。だけど、私には『ヴェル君と静の事』で悪夢を見たんじゃないかと認識してしまう。
(違う違う違う。そのことじゃない。大丈夫大丈夫、バレてないんだから……)
大々的にかぶりを振ることは出来なかった。だから、私は心の中でそんな風に自分に言い聞かせるように何度も呟いた。
「そだ。今日中にもう丑ノ国の石碑を探しに行くんだよね?」
「あ、うん。そうだね、その方がいいと思う。あまり悠長にしていると丑ノ国の人たちに見つかるかもしれないしね」
あの話を続けたくなくて、私は話を変えた。それにヴェル君も勢いよく食いついてくれた。たぶん、ヴェル君もあの話の続きをしたくなかったんだろう。
私は、とりあえず……と言わんばかりに白卯の隣に腰かけた。ずっと静とヴェル君から距離を取ったまま立った状態で挨拶をしていたから、そろそろ座った方が自然かな? と思ったのだ。だからといって、二人の近くに座るという選択肢はないのだけど。
「またあの二人……いるのかな?」
「その可能性はあると思うよ」
「あの二人?」
私とヴェル君の会話で気にかかった点があったのか、白卯がキョトンとした表情を浮かべて首を傾げた。
そういえば、白卯は燿と耀さんが現れた時はそこに居なかったんだった。その事に気付いて、私はなんと説明しようかと斜め上へと視線を向けた。
「うーんとね、燿と耀さんって人が石碑を守ってくれていたみたいなの」
「燿さんと……耀さん、ですか」
「あれ? 白卯、知ってる感じ?」
「いえ……その、ずいぶんと昔に同じ名前の方と話したことがありましたので」
同姓同名かな? なんて少しだけ疑問に思ったけれど、そんなのは石碑までたどり着ければわかることだ。
私は白卯の返事に「そっかぁ」とだけ返した。
「本人かどうかも分からないですし、本人達だったとしても私のことを覚えているかどうかも……まあ、わからないですしね」
「あまり関わり合いにならなかったの?」
「――――私が想定している『燿さんと耀さんと関わり合いが深かったのは私ではなくて……その、姫様、でしたので』
物凄く言いにくそうに口ごもりながらも、はぐらかすわけにもいかないと思ったのか白卯は教えてくれた。ただし、完全に私の方から視線を逸らしていた。私の方を見ようともしない。
それはたぶん、私が白卯の言う姫様――――ゑレ妃に似ているから、だろう。
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