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第5章【石碑の守護者】

37罪 気まずい①

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 あれから軽く白卯はくうと雑談してから、白卯はくうも眠れそうだと言っていたし私も眠くなってきたからテントに戻った。横になった途端、ずぶずぶと沼に沈んでいくように私の意識は暗転した。
 ふと意識が戻れば、ちゅんちゅんと小鳥のさえずる声が聞こえる。テントの中も明るく照らされていて、日が昇っていることを確認した。
 ゆっくりと瞼を開けばテントの天井が見える。真ん中に吸い込まれるようにすぼまっている、円錐のような形をしたテント。私はその頂点を見つめて、ボーっとしていた。隣で寝ている静がすでに起きているのか、まだ寝ているのか、もうテントの外に出て行ってしまっているのか、気にはなったけど確認しようと思えなかった。

(今、静の顔を見たら絶対変な顔しちゃう……)

 わかりきっていたからこそ、真っすぐ視線を向けたまま微動だにしない。
 もちろん、そのままでい続けるわけにいかないことも理解はしている。起きて、テントを出て、片付けて、旅を続ける支度をしなくちゃいけない。丑ノ国の石碑を探さなきゃいけない。だけど、動きたくない。

「雪様? 起きていらっしゃいますか?」

 ふと、外から聞こえた声に私はピクリと眉を動かした。白卯はくうの声にほんの少しだけホッとする自分の心がある。

「みな起きて外に出ておりますゆえ、身支度が整いましたらいらっしゃってください」

 それに対して私は返事はしなかった。白卯はくうも私の返事は求めていなかったのか、そのまま立ち去る足音が聞こえた。
 地面を踏みしめる音が、どんどん遠ざかっていく。
 外からの音や声は聞こえるが、中からの音や声は外には届かない。だから白卯はくうは返事を待たずに立ち去ったのだろう。

(みんな……って事は、静もだよね?)

 ふとそう思って、私はゆっくりと恐る恐る横を向いた。視界の端も端、ギリギリ景色が映る範囲に静が寝ていたであろう場所を捉える。

(……いない)

 ホッとした。外に聞こえないからか、安心して大きく息を吐き出せた。
 ハーッと大きく吐き出すと、それに伴って緊張して強張っていた肩の力が下りた。そこで初めて、私自身がこんなに緊張していたんだということに気付いた。

(起きなきゃ)

 そう思って、パンパン‼ と大きく自分の両頬を両手で叩いた。

「よし!」

 肺で大きく息を吸い、吐き出しながら声を出す。内に閉じ込めていくよりも、外へと放出させた方が精神的にもいいと何かで聞いたことがあった。だから私は、とりあえず声を外に放出するイメージで息と同時に声を出した。
 ちょっとだけ、気分が変わる気がした。気のせいかもしれないけど。
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