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第4章【ずっとずっと大切な人】
31罪 勃たなかったら……①
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「ヴェルくん自身の目で雪ちゃんのこと、確認していないでしょう? ほら……入って」
テントの入り口を開け、後ろで立ちすくむヴェルを振り返りながら見つめて静は微笑んだ。
あいた手でおいでおいでと手招きするようにヴェルを呼ぶ。
「……ヴェルくん。ほら。はやく」
有無を言わさない威圧感を感じて、ヴェルはごくりと息をのむと一歩を踏み出した。
(大丈夫だ。大丈夫だ大丈夫だ、きっと大丈夫だ。さすがにそんな事はないはずだ)
いくらなんでも、いつ雪が起こるか分からない今、セックスに興じるはずがない。ヴェルは自分に言い聞かせるように心の中で何度も何度も呟いた。
「……あ。ほんとだ……静に寝てるというか、結構ぐっすり?」
むにゃむにゃと口を動かしながらスヤスヤと眠る雪の姿を、ヴェルは静よりテントの中に身を乗り出しながら見つめた。
きちんと眠れている事にホッと胸を撫でおろし、静の方に顔を向けた。
「大丈夫そうで良かっ……んむっ」
「……んっ」
ヴェルが振り返るのを待っていたかのように静が顔を近づけた。
予想していなかったヴェルは、静からの口づけにハトが豆鉄砲を食らったかのように目を丸々と見開いた。
すぐに身を引こうと思ったヴェルだが、その行動すら静には先読みされていた。
ヴェルの体に抱き着くようにして密着し、彼に濃厚な口づけをした。舌が絡み合い、角度が変わる合間に甘い吐息が漏れる。酸素を欲するように口を開けばより奥へと静の舌が入り込んでくる。
口内を蛇が這いずり回るように舌がうねり、ヴェルの上の歯の裏側をかすめた。
「ふ、ぅ……」
「ん……むぅ……」
重心をヴェルに預けるようにして静は彼ごとテントの中へと身を投じた。
よろけながらも寝ている雪に当たらないように、雪を起こさないように、足元に気を付けながらヴェルはヨタヨタと後ろに下がっていってしまう。
本当は完全にテントの中に入るつもりなんてなかったのに。
「ぷ……ぁ…………」
「静、ちゃ……なん、でいきなり……」
はぁはぁと足りなかった酸素を取り込みながら、口元を手の甲でグッと拭って問いかけた。
静は恍惚な笑みを浮かべながら赤い舌でぺろりと自身の唇を舐める。その姿がとても妖艶だった。
「なんで? 恋人同士なら……普通なことでしょう?」
その言葉にヴェルはあんぐりと口を開けた。確かに雪に『静と付き合っている』と伝えたことがある。そして、真も白卯も静とヴェルが恋仲だと思っている。でも、実際は静に寝返られないように、裏切られないように、雪を傷つけないようにするために、ヴェルがなくなく静の言う事を聞いているだけだ。
どちらかというと、セフレという言葉が似合いそうな関係だ。
けれど、静は雪にもっと自分に依存してほしくて、自分を必要としてほしくて、自分をあがめてほしくて、自分の方が上だと実感させてほしくて、雪の大好きな彼を自分のもののように扱いたいのだ。
心も、体も自分のものなんだと知らしめたいのだ。そして、自分の欲求も充たしたいのだ。
だから、雪が見ていない場所でもヴェルを縛る。そうすることで、ヴェルが自分に従順になり雪よりも上だと実感できるのだ。
テントの入り口を開け、後ろで立ちすくむヴェルを振り返りながら見つめて静は微笑んだ。
あいた手でおいでおいでと手招きするようにヴェルを呼ぶ。
「……ヴェルくん。ほら。はやく」
有無を言わさない威圧感を感じて、ヴェルはごくりと息をのむと一歩を踏み出した。
(大丈夫だ。大丈夫だ大丈夫だ、きっと大丈夫だ。さすがにそんな事はないはずだ)
いくらなんでも、いつ雪が起こるか分からない今、セックスに興じるはずがない。ヴェルは自分に言い聞かせるように心の中で何度も何度も呟いた。
「……あ。ほんとだ……静に寝てるというか、結構ぐっすり?」
むにゃむにゃと口を動かしながらスヤスヤと眠る雪の姿を、ヴェルは静よりテントの中に身を乗り出しながら見つめた。
きちんと眠れている事にホッと胸を撫でおろし、静の方に顔を向けた。
「大丈夫そうで良かっ……んむっ」
「……んっ」
ヴェルが振り返るのを待っていたかのように静が顔を近づけた。
予想していなかったヴェルは、静からの口づけにハトが豆鉄砲を食らったかのように目を丸々と見開いた。
すぐに身を引こうと思ったヴェルだが、その行動すら静には先読みされていた。
ヴェルの体に抱き着くようにして密着し、彼に濃厚な口づけをした。舌が絡み合い、角度が変わる合間に甘い吐息が漏れる。酸素を欲するように口を開けばより奥へと静の舌が入り込んでくる。
口内を蛇が這いずり回るように舌がうねり、ヴェルの上の歯の裏側をかすめた。
「ふ、ぅ……」
「ん……むぅ……」
重心をヴェルに預けるようにして静は彼ごとテントの中へと身を投じた。
よろけながらも寝ている雪に当たらないように、雪を起こさないように、足元に気を付けながらヴェルはヨタヨタと後ろに下がっていってしまう。
本当は完全にテントの中に入るつもりなんてなかったのに。
「ぷ……ぁ…………」
「静、ちゃ……なん、でいきなり……」
はぁはぁと足りなかった酸素を取り込みながら、口元を手の甲でグッと拭って問いかけた。
静は恍惚な笑みを浮かべながら赤い舌でぺろりと自身の唇を舐める。その姿がとても妖艶だった。
「なんで? 恋人同士なら……普通なことでしょう?」
その言葉にヴェルはあんぐりと口を開けた。確かに雪に『静と付き合っている』と伝えたことがある。そして、真も白卯も静とヴェルが恋仲だと思っている。でも、実際は静に寝返られないように、裏切られないように、雪を傷つけないようにするために、ヴェルがなくなく静の言う事を聞いているだけだ。
どちらかというと、セフレという言葉が似合いそうな関係だ。
けれど、静は雪にもっと自分に依存してほしくて、自分を必要としてほしくて、自分をあがめてほしくて、自分の方が上だと実感させてほしくて、雪の大好きな彼を自分のもののように扱いたいのだ。
心も、体も自分のものなんだと知らしめたいのだ。そして、自分の欲求も充たしたいのだ。
だから、雪が見ていない場所でもヴェルを縛る。そうすることで、ヴェルが自分に従順になり雪よりも上だと実感できるのだ。
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