上 下
179 / 283
第3章【一途に想うからこそ】

26罪 ネヘミヤと女王陛下③

しおりを挟む
「…………ネヘ、ミヤ?」

 何かが聞こえた気がした。
 大切な人の気配を感じた気がした。
 まるで、今ここにいるかのような――――そんな気配。
 けれど、女王陛下があたりを見渡してもネヘミヤの姿はなかった。

「~~~~~~~っ」

 それでも、女王陛下は分かった。ネヘミヤに何があったのか。
 ネヘミヤと女王陛下は、主従の関係を結んでいるだけではなかったのだ。
 心を通じ合わせ、同じ時間をともに過ごしてきた。
 虫の知らせ――とでもいうのかもしれない。
 女王陛下はネヘミヤがもうこの世にいないことを、何となくだが感じ取った。
 半身が失われたような、胸の中がぽっかり空虚に空いてしまったような、そんな虚無感。

「ネヘッ……ミヤァッ……」

 ネヘミヤの名前を口にしながら彼女は膝から崩れ落ちるように、その場にうずくまった。
 大切な人はもう居ない。
 守りたかった人は、もう居ない。


* * *


「…………」

 白卯はくうのツタに貫かれたまま、微動だにしなくなったネヘミヤを見つめながら、ゆっくりと息を吐き出した。
 張り巡らしていた緊張が解けて、その場に崩れ落ちそうになる。

「雪様、大丈夫ですか?」
白卯はくう……ありがとう。大丈夫、だよ」

 そうは言うけれど、実際問題、私は無理をしていた。
 空元気、とも言うのかもしれない。
 先ほどまでネヘミヤに体を蹂躙され、好き勝手にされてきた。
 そして、それを皆に見られていたのだ。あられもない姿も見られ、声も聞かれている……恥ずかしい。

「雪ちゃん、助けられなくて……ごめんっ」
「私も……何も、できなくて……雪ちゃん…………ごめん、なさいっ」
「すまなかった」

 ヴェル君も、静も、真兄も、申し訳なさそうな表情を浮かべて私をギュッと抱きしめてくれた。
 そっと寄り添うように私を囲んで、みんなで私を抱きしめてくる。
 その温もりが、優しさが、痛いくらいに身に染みる。

「うっ……うぅぅっ」
「雪様、今は泣きたいだけ泣いてください」

 みなが受け止めます、と呟く白卯はくうの声がより涙を誘うくらいに優しかった。
 なんで私ばっかりこんな目に合うの? と、そんな風に思いながらも皆を守るために身を挺した。
 恨めしくて、悔しくて、つらくて、何かを恨みたくなる気持ちもあった。
 だけど、皆を守れてよかったとも思えた。
 大手を振って喜ぶことは出来ないけど、少なくとも“後悔したくない”と思った。

「なるべく早くここを離れてテントを張って休みましょう?」
「そうだね。雪ちゃんの体も心配だし……ゆっくり休んでもらった方がいいかもしれないね」

 静の提案をヴェル君がナイスアイディアだと頷きながら同意した。
 大好きな彼に心配してもらえるのは嬉しいが、体が心配だというヴェル君の発言にフラッシュバックのようにネヘミヤとの行為が思い起こされ吐き気をもよおした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼馴染による寝取り性感マッサージ

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな幼馴染が迎えに来たお話。 今回はえっち多め、激しめのつもりです。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

【完結】令嬢が壁穴にハマったら、見習い騎士達に見つかっていいようにされてしまいました

雑煮
恋愛
おマヌケご令嬢が壁穴にハマったら、騎士たちにパンパンされました

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

処理中です...