177 / 283
第3章【一途に想うからこそ】
26罪 ネヘミヤと女王陛下①
しおりを挟む
「ねぇねぇ、ネヘミヤ」
「なんじゃ?」
ネヘミヤを手招くのは、銀髪を両側でふんわりとお団子にした美女だった。
ゆったりとした足取りで近づくネヘミヤの首に両手を回し、抱き着く様に彼を見上げる。
鼠色の髪で顔の半分を隠されたネヘミヤの片側の瞳を真っすぐ見つめる美女は、グレーのくりっとした瞳を持っていた。
彼女は子ノ国の女王陛下だった。
「童が七つの大罪を捕まえてこいと申したら、ネヘミヤはどうする?」
「女王陛下のご命令とあらば。じゃが……」
そこまで言うと、ネヘミヤはジッと女王陛下の瞳を見つめた。
女王陛下に対してこうも平然としていられるのは、子ノ国に存在する窮鼠という妖の長だからかもしれない。
彼は何代も前からこの国の陛下に仕えている。
女性だった時も、男性だった時も、変わらずに仕え続けてきた。
「女王陛下はあまり乗り気ではなかったのではなかったか……?」
記憶違いかのぉ? と首を傾げるネヘミヤに女王陛下は苦笑を浮かべた。
「確かにそうだったのだけれどな……」
ネヘミヤの言うとおり、女王陛下は七つの大罪(グリモワール)を捕まえることに乗り気ではなかった。
何故別の世界の者達を自分たちの都合で呼び寄せて、無理やり従わせなければならないのか、彼女には理解できなかった。
人はどんな身分であっても自由というものを持っていて、それは何人にも犯されるべきものではないと考えていたからだ。
召喚された七つの大罪(グリモワール)が自らの意思で神国王の命令に従うのなら、それは彼らの自由だから女王陛下だって何も言わない。
けれど、今回、各国に出された命令はそんなものじゃなかった。
「なにか、あったのかぇ?」
女王陛下の両頬を包み込むように、ネヘミヤは彼女の顔に両手を添えた。
二人の視線が絡み合い、そして女王陛下の方から視線を逸らした。
それはいつもの女王陛下からの合図。肯定する意図を含む仕草。
「童はネヘミヤを失いとぉない」
「……女王陛下」
「ネヘミヤは童のそばにおらんといかん」
小さく呟く女王陛下の声はか細くて、近くにいるネヘミヤですら聞き取るのがやっとだ。
地面を踏みしめる足のつま先でグッと背伸びをすると、女王陛下は自身の顔がネヘミヤから見えないようにより一層彼に近づいた。
首に回す両腕に力をこめて、ギューッとネヘミヤに抱き着いたのだ。
「女王陛下?」
「童はネヘミヤを失わないためなら、なんだってするぞ」
女王陛下は、自身の大きなつぶらな瞳をスッと細める。
神国王から提示された命令を守るために、女王陛下は心を鬼にすることを決めた。
本当は飲み込みたくない命令だったが、女王陛下が小さく告げた言葉の意味どおりネヘミヤを守るために命令に従うことにしたのだ。
神国王は子ノ国の女王陛下が七つの大罪を捕まえることに前向きでないことは分かっていた。
だからこそ、女王陛下に言ったのだ。
命令に従わないなら、ネヘミヤをよこせ――――と。
子ノ国の窮鼠の長を辞めさせ、神国王直属の部下として七つの大罪を捕まえることに奔走させる――――と。
そして、ぼろ雑巾のように擦り切れるまで使い切って、死したら返してやる――――と。
それが、子ノ国の女王陛下が神国王に従わなかった場合のやり方だと、神国王は笑っていた。
「なんじゃ?」
ネヘミヤを手招くのは、銀髪を両側でふんわりとお団子にした美女だった。
ゆったりとした足取りで近づくネヘミヤの首に両手を回し、抱き着く様に彼を見上げる。
鼠色の髪で顔の半分を隠されたネヘミヤの片側の瞳を真っすぐ見つめる美女は、グレーのくりっとした瞳を持っていた。
彼女は子ノ国の女王陛下だった。
「童が七つの大罪を捕まえてこいと申したら、ネヘミヤはどうする?」
「女王陛下のご命令とあらば。じゃが……」
そこまで言うと、ネヘミヤはジッと女王陛下の瞳を見つめた。
女王陛下に対してこうも平然としていられるのは、子ノ国に存在する窮鼠という妖の長だからかもしれない。
彼は何代も前からこの国の陛下に仕えている。
女性だった時も、男性だった時も、変わらずに仕え続けてきた。
「女王陛下はあまり乗り気ではなかったのではなかったか……?」
記憶違いかのぉ? と首を傾げるネヘミヤに女王陛下は苦笑を浮かべた。
「確かにそうだったのだけれどな……」
ネヘミヤの言うとおり、女王陛下は七つの大罪(グリモワール)を捕まえることに乗り気ではなかった。
何故別の世界の者達を自分たちの都合で呼び寄せて、無理やり従わせなければならないのか、彼女には理解できなかった。
人はどんな身分であっても自由というものを持っていて、それは何人にも犯されるべきものではないと考えていたからだ。
召喚された七つの大罪(グリモワール)が自らの意思で神国王の命令に従うのなら、それは彼らの自由だから女王陛下だって何も言わない。
けれど、今回、各国に出された命令はそんなものじゃなかった。
「なにか、あったのかぇ?」
女王陛下の両頬を包み込むように、ネヘミヤは彼女の顔に両手を添えた。
二人の視線が絡み合い、そして女王陛下の方から視線を逸らした。
それはいつもの女王陛下からの合図。肯定する意図を含む仕草。
「童はネヘミヤを失いとぉない」
「……女王陛下」
「ネヘミヤは童のそばにおらんといかん」
小さく呟く女王陛下の声はか細くて、近くにいるネヘミヤですら聞き取るのがやっとだ。
地面を踏みしめる足のつま先でグッと背伸びをすると、女王陛下は自身の顔がネヘミヤから見えないようにより一層彼に近づいた。
首に回す両腕に力をこめて、ギューッとネヘミヤに抱き着いたのだ。
「女王陛下?」
「童はネヘミヤを失わないためなら、なんだってするぞ」
女王陛下は、自身の大きなつぶらな瞳をスッと細める。
神国王から提示された命令を守るために、女王陛下は心を鬼にすることを決めた。
本当は飲み込みたくない命令だったが、女王陛下が小さく告げた言葉の意味どおりネヘミヤを守るために命令に従うことにしたのだ。
神国王は子ノ国の女王陛下が七つの大罪を捕まえることに前向きでないことは分かっていた。
だからこそ、女王陛下に言ったのだ。
命令に従わないなら、ネヘミヤをよこせ――――と。
子ノ国の窮鼠の長を辞めさせ、神国王直属の部下として七つの大罪を捕まえることに奔走させる――――と。
そして、ぼろ雑巾のように擦り切れるまで使い切って、死したら返してやる――――と。
それが、子ノ国の女王陛下が神国王に従わなかった場合のやり方だと、神国王は笑っていた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる