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第3章【一途に想うからこそ】
21罪 人質⑦
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誰も死なせないために、と思って選んだ選択肢だったけれど、これだと七つの大罪の生まれ変わりとされている静か真兄でも良かったのでは……? なんて考えてしまう。静でも真兄でも、たぶん結果は同じだったと思う。
だけど、やっぱり友達である彼らに押し付けて自分だけ助かりたいとも思わないけど。
「みんなを解放して、私だけを連れていくって考えには……ならない?」
もし、それが叶うのならば、私が一番望んだ形になる。だけど、ネヘミヤの表情を見てすぐに“そういう考えにはならない”ということがわかった。
ネヘミヤは私の発言に対して、何を言っているんだと言わんばかりの表情を浮かべて私を見下ろしている。
「……ならない、よね」
少しだけしょぼんとして、肩を落とした。そうなってくれたら、手放しで万々歳だった。
「そもそも、我はもともと七つの大罪を除く一人は殺して、三人を神国王様に捧げるつもりだったからな。予定が狂ったが、神国王様に捧げる七つの大罪を逃がすわけがなかろう?」
「じゃあ、私が二人を選んだ際に七つの大罪じゃない人を選んでいたら!? 貴方、言うだけで選んではいなかったじゃない!」
ネヘミヤはそう言うけれど、彼が二人助けると言っていた際に誰かを指定することはなかった。だから私が選んだ結果こうなったのだけれど。
もし、私があの時こういう選択を選んでいなくて、本当に助かる人を二人選んでいたとしたら? そして、その選んだ二人のうち一人が、七つの大罪ではないヴェル君だったとしたら?
そういう可能性だってあったはずだ。
「我は殺すとはあの時一言も言っておらんぞ?」
その言葉でハッとした。
「残りの一人に対して、今の私にしようとしていることと同じことをするつもりだった……?」
「正解だ。もちろん、七つの大罪二人を選んでいた場合は残された一人は殺すつもりだったがの」
私の選択肢ひとつで、人の生き死にが変わっていたという事実に私は背筋が凍る思いだった。
「さて……では、さっそくうぬの気をわけてもらうぞ?」
じり、とにじり寄るようにネヘミヤが私に近づいてくる。
そういえば、気を奪われることは理解していたけれど、その方法を私は知らなかった。
(え、どうやるつもり?)
そもそも、気がなんなのかというのさえ私はわかっていない。
七つの大罪の力とは別の、私自身がもともと持っている何かなのかなとは思うものの、よくはわからない。
「痛くはないから大丈夫だ」
いや、そういう問題ではなくてね? 何もわからないから怖いんですけど?
そんな風に思いながら、ネヘミヤがにじり寄ってきた分だけ私も後ろへ下がる。
だけど、ずっと逃げ続けるわけにはいかないことはちゃんと理解している。みんなを人質に取られているようなものなのだから、下手に逃げてみんなに危害が加わってもよくない。
むしろ、嫌だ。私はみんなに傷ついて欲しくなくて、この選択肢を選んだのだから。
だけど、やっぱり友達である彼らに押し付けて自分だけ助かりたいとも思わないけど。
「みんなを解放して、私だけを連れていくって考えには……ならない?」
もし、それが叶うのならば、私が一番望んだ形になる。だけど、ネヘミヤの表情を見てすぐに“そういう考えにはならない”ということがわかった。
ネヘミヤは私の発言に対して、何を言っているんだと言わんばかりの表情を浮かべて私を見下ろしている。
「……ならない、よね」
少しだけしょぼんとして、肩を落とした。そうなってくれたら、手放しで万々歳だった。
「そもそも、我はもともと七つの大罪を除く一人は殺して、三人を神国王様に捧げるつもりだったからな。予定が狂ったが、神国王様に捧げる七つの大罪を逃がすわけがなかろう?」
「じゃあ、私が二人を選んだ際に七つの大罪じゃない人を選んでいたら!? 貴方、言うだけで選んではいなかったじゃない!」
ネヘミヤはそう言うけれど、彼が二人助けると言っていた際に誰かを指定することはなかった。だから私が選んだ結果こうなったのだけれど。
もし、私があの時こういう選択を選んでいなくて、本当に助かる人を二人選んでいたとしたら? そして、その選んだ二人のうち一人が、七つの大罪ではないヴェル君だったとしたら?
そういう可能性だってあったはずだ。
「我は殺すとはあの時一言も言っておらんぞ?」
その言葉でハッとした。
「残りの一人に対して、今の私にしようとしていることと同じことをするつもりだった……?」
「正解だ。もちろん、七つの大罪二人を選んでいた場合は残された一人は殺すつもりだったがの」
私の選択肢ひとつで、人の生き死にが変わっていたという事実に私は背筋が凍る思いだった。
「さて……では、さっそくうぬの気をわけてもらうぞ?」
じり、とにじり寄るようにネヘミヤが私に近づいてくる。
そういえば、気を奪われることは理解していたけれど、その方法を私は知らなかった。
(え、どうやるつもり?)
そもそも、気がなんなのかというのさえ私はわかっていない。
七つの大罪の力とは別の、私自身がもともと持っている何かなのかなとは思うものの、よくはわからない。
「痛くはないから大丈夫だ」
いや、そういう問題ではなくてね? 何もわからないから怖いんですけど?
そんな風に思いながら、ネヘミヤがにじり寄ってきた分だけ私も後ろへ下がる。
だけど、ずっと逃げ続けるわけにはいかないことはちゃんと理解している。みんなを人質に取られているようなものなのだから、下手に逃げてみんなに危害が加わってもよくない。
むしろ、嫌だ。私はみんなに傷ついて欲しくなくて、この選択肢を選んだのだから。
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