上 下
154 / 283
第3章【一途に想うからこそ】

21罪 人質⑦

しおりを挟む
 誰も死なせないために、と思って選んだ選択肢だったけれど、これだと七つの大罪グリモワールの生まれ変わりとされている静か真兄でも良かったのでは……? なんて考えてしまう。静でも真兄でも、たぶん結果は同じだったと思う。
 だけど、やっぱり友達である彼らに押し付けて自分だけ助かりたいとも思わないけど。

「みんなを解放して、私だけを連れていくって考えには……ならない?」

 もし、それが叶うのならば、私が一番望んだ形になる。だけど、ネヘミヤの表情を見てすぐに“そういう考えにはならない”ということがわかった。
 ネヘミヤは私の発言に対して、何を言っているんだと言わんばかりの表情を浮かべて私を見下ろしている。

「……ならない、よね」

 少しだけしょぼんとして、肩を落とした。そうなってくれたら、手放しで万々歳だった。

「そもそも、我はもともと七つの大罪グリモワールを除く一人は殺して、三人を神国王様に捧げるつもりだったからな。予定が狂ったが、神国王様に捧げる七つの大罪グリモワールを逃がすわけがなかろう?」
「じゃあ、私が二人を選んだ際に七つの大罪グリモワールじゃない人を選んでいたら!? 貴方、言うだけで選んではいなかったじゃない!」

 ネヘミヤはそう言うけれど、彼が二人助けると言っていた際に誰かを指定することはなかった。だから私が選んだ結果こうなったのだけれど。
 もし、私があの時こういう選択を選んでいなくて、本当に助かる人を二人選んでいたとしたら? そして、その選んだ二人のうち一人が、七つの大罪グリモワールではないヴェル君だったとしたら?
 そういう可能性だってあったはずだ。

「我は殺すとはあの時一言も言っておらんぞ?」

 その言葉でハッとした。

「残りの一人に対して、今の私にしようとしていることと同じことをするつもりだった……?」
「正解だ。もちろん、七つの大罪グリモワール二人を選んでいた場合は残された一人は殺すつもりだったがの」

 私の選択肢ひとつで、人の生き死にが変わっていたという事実に私は背筋が凍る思いだった。

「さて……では、さっそくうぬの気をわけてもらうぞ?」

 じり、とにじり寄るようにネヘミヤが私に近づいてくる。
 そういえば、気を奪われることは理解していたけれど、その方法を私は知らなかった。

(え、どうやるつもり?)

 そもそも、気がなんなのかというのさえ私はわかっていない。
 七つの大罪グリモワールの力とは別の、私自身がもともと持っている何かなのかなとは思うものの、よくはわからない。

「痛くはないから大丈夫だ」

 いや、そういう問題ではなくてね? 何もわからないから怖いんですけど?
 そんな風に思いながら、ネヘミヤがにじり寄ってきた分だけ私も後ろへ下がる。
 だけど、ずっと逃げ続けるわけにはいかないことはちゃんと理解している。みんなを人質に取られているようなものなのだから、下手に逃げてみんなに危害が加わってもよくない。
 むしろ、嫌だ。私はみんなに傷ついて欲しくなくて、この選択肢を選んだのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

【完結】令嬢が壁穴にハマったら、見習い騎士達に見つかっていいようにされてしまいました

雑煮
恋愛
おマヌケご令嬢が壁穴にハマったら、騎士たちにパンパンされました

幼馴染による寝取り性感マッサージ

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな幼馴染が迎えに来たお話。 今回はえっち多め、激しめのつもりです。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

処理中です...