異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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第3章【一途に想うからこそ】

21罪 人質⑥

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「助けてくれるのなら、鼠の銀の糸も外してくれてもいいんじゃない?」

 私は気を強く持った状態でネヘミヤにそう問いかけてみた。
 だけど、ネヘミヤは私の言葉に耳を傾けてくれることはなくて、悩ましげな表情を浮かべて何かを考えているようだった。
 それはおそらく、私に何を要求するのかを考えているんだと思う。

「雪ちゃんのバカッ!! なんで……なんで逃げなかったんだっ!?」
「ごめん、ヴェル君」

 ただただ謝るだけの私に、ヴェル君はグッと口をつぐんで言葉を飲みこんでいた。
 何を言っても意味がないと思ったんだろう。
 私はヴェル君に向けていた意識を、再度ネヘミヤに向け直すと彼の言葉を待った。何を要求されるのかわからないけれど、みんなを無事に助けるためにはこなさなければいけない。

「ふむ……決めた」

 うんうん、と大きく頷きながらネヘミヤの表情は、悩ましげなものから楽しげなものへと変わっていった。
 ドクン、と心臓が脈打つのがよくわかる。緊張というよりかは、何をされるのかわからないのが怖いんだと思う。

「うぬを殺すわけにはいかぬからな」

 やっぱりか、とネヘミヤの発言を耳にして率直に思った。
 七つの大罪グリモワールの一人である私を、彼は――否、彼らは殺すことができない。神国王に無事に届けなくちゃいけないからだと思う。
 ただ思うのは、ヴェル君の話を思い返すと、神国王は魔国の王を見つけるか、新しく魔国の王を選出するために私達を探しているという話だった。だとすれば、選出する人数が減るだけなのだから私を殺しても問題はなさそうなのに、殺さない選択をするということはどういうことだろうか。
 たぶん、一人でもかけちゃいけない“なにか”が理由としてあるのだろう。
 それのおかげで殺されずに済むのはありがたいが、彼らに捕まるのは正直怖いという感想が強まった。
 本当に王を見つけるか、魔国の王を選出するために私達を召喚したのか怪しいところだ。

「さて……まずは三人には黙って見ていてもらうぞ」

 パチンと指を鳴らすと、鼠から銀糸が追加で生成された。それがみんなの口を覆うように巻きついていった。

「なっ!? みんなにはもう何もしないで!!」
「大丈夫だ、終わればすぐに解放してやるさ」

 ギリッと奥歯を強く嚙みしめて、私はネヘミヤを睨みつけた。睨み付けることしかできなかった。

「さて……うぬには大人しく神国王に会ってもらうために、うぬの気を我にわけてもらうぞ」
「……は?」

 言っている意味が正直よくわからなくて、私は眉間にシワを寄せて首を傾げた。
 気をネヘミヤにわける? 大人しく会う? どういうこと?
 そんな風に疑問が脳裏をよぎり、混乱する。

「簡単なことだ。気を抜かれ過ぎて衰弱すれば大人しくなるだろう?」

 そのままみんなと一緒に、私を神国王のもとに連れていくという算段のようだ。
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