異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

文字の大きさ
上 下
146 / 283
第3章【一途に想うからこそ】

20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2⑬

しおりを挟む
 そんな疑問が頭の中を巡った。
 もしそうだったのなら、知りたかったなんて言うはずがない。知りたいで、いいはずだ。むしろ、楽しみとかでもいいはずだ。
 なのに、なぜ耀ひかりさんは“知りたかった”と言ったんだろう。

『時間だね』
「……ぇ?」

 ひかるの声がぽつりと響いた気がした。その瞬間、ピシ……という嫌な音が聞こえた。
 私はひかる耀ひかりさんを見つめていた視線を、慌てて石碑に向けた。

(ヒビ、が……)

 私が気付いていなかっただけで、ひかる耀ひかりさんの間にある石碑にはヒビが入っていた。
 今にも石碑を真っ二つに割ってしまうような、深い亀裂が。

『無事に、貴方達に記憶を、力を届けられて良かったです』

 にっこりと微笑む耀ひかりさんの表情が儚く見えた。

『再び、貴方に会えて……良かったです』
「……耀ひかり、さん……」

 彼の言葉を耳にして、私は耀ひかりさんの名前を呼ぶだけで、他に何も言葉に出来なかった。
 否。何を言えばいいのか分からなかった。頭の中がぐちゃぐちゃに混乱していて、何か言いたいはずなのに何も言葉が出てこない。
 この状況が凄く悔しくて、時間が止まってほしいと凄く思った。

『あとは、別の僕達に任せるとするよ』
『そうですね、ひかる。私達は――もう、逝きましょうか』
「別の僕達とか、任せるとか、いくとか……意味が、分からない、よ……」

 ひかる耀ひかりさんの言葉を耳にして、余計に頭がぐちゃぐちゃになった。
 何を言っているのか全然わからない。まるで、今生の別れみたいな言い方をする。他の石碑だって守っているのなら、別れはまだ先のはずなのに。
 先の、はずなのに!!

『雪さん、本当は分かっているでしょう?』
「…………っ」

 その言葉で、私は認めざるを得なかった。
 耀ひかりさんの言うとおり、私は分かっていた。分かっていたんだ。

「雪ちゃん?」
「……静っ」

 心配そうに私の肩に手を添えて身を寄せてくれる静に、私は悲鳴に近い苦しい声を上げた。
 今にも泣きそうなくらい胸が痛い。だって、だって。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...