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第3章【一途に想うからこそ】
20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2⑪
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そのハルナの言葉にハドリーは嬉しそうに微笑み、ハルナの頭を優しく撫でた。
(大きく、元気に育ってね、ハルナ……貴方だけが、私の生きがい、私の人生……愛しているわ、ハルナ)
「おかあさま?」
「……どうしました?」
愛しそうに、けれど少しだけ辛そうに微笑みながら撫でてくるハドリーに、ハルナは首を傾げた。
ハッとして、ハドリーはすぐに笑顔をつくろってハルナに問いかえす。
「……ううん。おかあさま、だいすき!」
「ありがとう……私も大好きですよ」
ハドリーに抱きかかえられたままの状態で抱き着くハルナを、ハドリーは彼女にほおずりするように顔を寄せた。
そんな親子二人の様子を見つめながら、リフィルは慈しむように二人を見つめていた。
* * *
「……ん」
「……ぅ」
近くで聞こえた声に反応するように、私の意識もゆっくりと浮上した。先ほどまで見ていた記憶がまるで今しがたまで体験していたかのように感じるくらいリアルだった。
ゆっくりと瞼を開き、私と静は石碑の近くに横たわっていたことを理解した。意識が覚醒しきったのと同時に、私は体をゆっくりと起き上がらせて、周りを見渡した。
少し離れた場所でヴェル君が私達を心配そうに見つめていて、私達の近くには座り込んだままの真兄がいる。そして、石碑の近くには燿と耀さんが佇んでいた。
「おかえり、みんな」
そう言って出迎えてくれるヴェル君に、私も静も真兄も「ただいま」と答えた。
どことなく、真兄の様子が前回同様おかしいような気がしなくもないが、真兄は何もなかったと言いたげな態度だ。
『無事に記憶を取り戻したようですね』
『なんともなさそう? 大丈夫?』
「うん、大丈夫……私は私だし、別段さっきまでと変わったところはないかな?」
燿と耀さんの言葉を肯定しながら、私は自分の両手を見つめた。
今すぐに力が使えます! って感じになっているわけでもないし、力をひしひしと感じるというわけでもない。変色していた髪の毛先もいつの間にか元通りになっていたし。
ただ、この石碑を見つけようと意識を集中させていた時に感じた力よりも、微量だけど増えているような気がする。気のせいの可能性もあるけど。
「私も雪ちゃんと同じね。何かが変わったような感じはしないわ」
「俺も、だな」
私の言葉を肯定し、同じだと賛同する静と真兄。二人の感想を聞いて、私もやっぱりか……と納得した。
考えてもみれば、国は卯ノ国の子ノ国を除けばあと十国ほどあるのだ。今この段階で変化をひしひしと感じていたら、この先どうなってしまうことやら。
(大きく、元気に育ってね、ハルナ……貴方だけが、私の生きがい、私の人生……愛しているわ、ハルナ)
「おかあさま?」
「……どうしました?」
愛しそうに、けれど少しだけ辛そうに微笑みながら撫でてくるハドリーに、ハルナは首を傾げた。
ハッとして、ハドリーはすぐに笑顔をつくろってハルナに問いかえす。
「……ううん。おかあさま、だいすき!」
「ありがとう……私も大好きですよ」
ハドリーに抱きかかえられたままの状態で抱き着くハルナを、ハドリーは彼女にほおずりするように顔を寄せた。
そんな親子二人の様子を見つめながら、リフィルは慈しむように二人を見つめていた。
* * *
「……ん」
「……ぅ」
近くで聞こえた声に反応するように、私の意識もゆっくりと浮上した。先ほどまで見ていた記憶がまるで今しがたまで体験していたかのように感じるくらいリアルだった。
ゆっくりと瞼を開き、私と静は石碑の近くに横たわっていたことを理解した。意識が覚醒しきったのと同時に、私は体をゆっくりと起き上がらせて、周りを見渡した。
少し離れた場所でヴェル君が私達を心配そうに見つめていて、私達の近くには座り込んだままの真兄がいる。そして、石碑の近くには燿と耀さんが佇んでいた。
「おかえり、みんな」
そう言って出迎えてくれるヴェル君に、私も静も真兄も「ただいま」と答えた。
どことなく、真兄の様子が前回同様おかしいような気がしなくもないが、真兄は何もなかったと言いたげな態度だ。
『無事に記憶を取り戻したようですね』
『なんともなさそう? 大丈夫?』
「うん、大丈夫……私は私だし、別段さっきまでと変わったところはないかな?」
燿と耀さんの言葉を肯定しながら、私は自分の両手を見つめた。
今すぐに力が使えます! って感じになっているわけでもないし、力をひしひしと感じるというわけでもない。変色していた髪の毛先もいつの間にか元通りになっていたし。
ただ、この石碑を見つけようと意識を集中させていた時に感じた力よりも、微量だけど増えているような気がする。気のせいの可能性もあるけど。
「私も雪ちゃんと同じね。何かが変わったような感じはしないわ」
「俺も、だな」
私の言葉を肯定し、同じだと賛同する静と真兄。二人の感想を聞いて、私もやっぱりか……と納得した。
考えてもみれば、国は卯ノ国の子ノ国を除けばあと十国ほどあるのだ。今この段階で変化をひしひしと感じていたら、この先どうなってしまうことやら。
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