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第3章【一途に想うからこそ】

20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2⑦

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 だが、彼らもまた親ばかと言ってもいいほどにわが子を可愛がっており、白卯はくうのその反応は至極当たり前なものだと認識していた。

「ねーねー! はくぴょんは、いつもどんなことをしてるのー?」

 ぐいっぐいっと、白卯はくうの白い狩衣を引っ張りながらゑレ妃えれひは上を見上げた。
 子供と大人という身長差の中、見上げるゑレ妃えれひの首が痛そうだと感じた白卯はくうは中腰になり身をかがめると、ゑレ妃えれひと視線を合わせるようにした。
 にっこりと慈しむように笑みを浮かべて白卯はくうゑレ妃えれひの頭を優しく撫でると、

「山の雪兎たちを管理したり、ゐ吹いぶき様の仕事のお手伝いをしたりしていますよ」
「はくぴょんは凄いのね!!」
「……え」
「だって! ちゃんとしているってことでしょ?」

 実際、ゑレ妃えれひには雪兎たちをどんなふうに管理しているのか、ゐ吹いぶきの仕事の手伝いとはどんなことをするのか、そう言うことは分からない。
 ただ、一国の王の娘で唯一の姫であるということもあり、それなりの教育はされてきた。だからこそ、少しは理解できるのだ。

「私は勉強でしか聞いたことがないけど、それをしてるっていうのは凄いと思う!」
「あ、ありがとう……ございます」

 キラキラとした瞳で見つめてくるゑレ妃えれひに、白卯はくうは少しだけ恥ずかしさを感じてもじもじとした。
 雪兎たちの長である白卯はくうは、自分が国のために何かをしゐ吹いぶきゑン姫えんきのために力をふるう事を当たり前だと思っていた。ゐ吹いぶきゑン姫えんきだって、そういうものだと教育されて王となってきたため当たり前だと思っていた。
 だからこそ、白卯はくうはそんな風に“凄い”と褒められたことがなかったのだ。
 嬉しくて、胸がギュッとなるのを感じながら白卯はくうは嬉しさを噛みしめていた。

「そうだわ、白卯はくう
「はい、なんでしょうか、ゑン姫えんき様」
ゑレ妃えれひの護衛を貴方にお願いしたいのだけれど」
「……私が、ですか!?」

 ゑン姫えんきの発言に、白卯はくうは驚き目を丸くしてゑレ妃えれひゑン姫えんきを交互に見つめた。
 その間もゑレ妃えれひはにこにこと白卯はくうを見つめるだけだ。いや、向けている視線の先はおそらく白卯はくうの耳だろう。白くて長い、柔らかそうな兎の耳。

ゑレ妃えれひ白卯はくうにずっと一緒に居てもらいたくない?」
「はくぴょんがずっと一緒に居てくれるの!?」
「ええ、ゑレ妃えれひが良ければ、白卯はくうに身の回りのお世話とかをさせたいのだけど……」
「嫌じゃないよ!! はくぴょんが居てくれるなら嬉しい! はくぴょんにお世話されたい!」

 満面の笑みを浮かべたゑレ妃えれひは、少しだけ興奮しながらまくし立てる様に言った。
 その言葉を受けて、ゑン姫えんきゑレ妃えれひから視線を白卯はくうに向けた。
 その視線は、白卯はくうの答えを聞くために催促するものだった。
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