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第3章【一途に想うからこそ】
20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2⑤
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『さあ……皆さん』
『記憶を、力を、取り戻す時間だよ』
そう言って、燿さんと耀さんはスッと石碑の方を見つめた。
あとは私達が近寄るだけだ。それは前回の卯ノ国で石碑と向き合ったときに分かっている。
だけど、その後の出来事も私達は知っている。だからこそ、私は躊躇してしまう。
『雪さん?』
「……ねえ、耀さん。燿さん」
『僕の事は燿でいいよ。それに敬語もいらない』
「あ、うん。じゃあ、燿。あのね……二人に、聞きたいことがあるの」
燿にそう訂正されれば、すぐさま頷き承諾した。聞きたいことがあるのだから、そこでああだこうだ言っていられない。
『なんですか?』
にっこりと微笑みながら、私の言葉を待つ耀さんを見つめると、胸が酷く痛かった。心臓を鷲掴みにされているみたいに、胸がキリキリと痛い。
だけど、ここで聞かない選択をする事なんて出来ない。むしろ、今、聞かないと先に進めない。
「私達が記憶と力を取り戻したら、二人は……どうなるの? 他の石碑のところに飛ぶの?」
卯ノ国で取り戻したとき、石碑は割れてしまった。ただの石になってしまったのだ。
もし、二人が石碑に憑いた状態で守り続けてくれていたのだとしたら、割れてしまったとき彼らがどうなってしまうのかが気がかりだった。
ただ、ここにいるだけなら、きっと石碑が割れたとしても大丈夫なんだとは思うけれど。
『大丈夫ですよ、雪さん』
「え?」
『この石碑が割れてしまったとしても、砕けてしまったとしても、消滅してしまったとしても……』
『次の国で会えるよ、雪ちゃん』
燿も耀さんも、ただただにっこりと微笑むだけだった。
ただ、有無を言わさない圧を感じた。これ以上は答えないと言わんばかりの、そんな圧を。
私は燿にも耀さんにも、それ以上なにも言うことが出来なかった。だって、そんな風に言われてしまったらどうしようもない。
「本当に、また会えるんだよね?」
『当たり前でしょ。僕が雪ちゃんに嘘を吐くわけがないだろ』
『そこは信じてください、雪さん』
燿と耀さんの二人にそう言い切られてしまえば、私はもうその言葉を信じるしかない。
ううん、信じようと思った。なんでこんなに懐かしくて苦しい気持ちを二人に感じるのかは分からないけれど、私の心の奥底はまた燿と耀さんに会いたいと思っていた。
「うん……わかった。信じるよ、また会えるって」
コクンと小さく頷き返すと、私は――私達は石碑の方へと体ごと視線を向けた。
『記憶を、力を、取り戻す時間だよ』
そう言って、燿さんと耀さんはスッと石碑の方を見つめた。
あとは私達が近寄るだけだ。それは前回の卯ノ国で石碑と向き合ったときに分かっている。
だけど、その後の出来事も私達は知っている。だからこそ、私は躊躇してしまう。
『雪さん?』
「……ねえ、耀さん。燿さん」
『僕の事は燿でいいよ。それに敬語もいらない』
「あ、うん。じゃあ、燿。あのね……二人に、聞きたいことがあるの」
燿にそう訂正されれば、すぐさま頷き承諾した。聞きたいことがあるのだから、そこでああだこうだ言っていられない。
『なんですか?』
にっこりと微笑みながら、私の言葉を待つ耀さんを見つめると、胸が酷く痛かった。心臓を鷲掴みにされているみたいに、胸がキリキリと痛い。
だけど、ここで聞かない選択をする事なんて出来ない。むしろ、今、聞かないと先に進めない。
「私達が記憶と力を取り戻したら、二人は……どうなるの? 他の石碑のところに飛ぶの?」
卯ノ国で取り戻したとき、石碑は割れてしまった。ただの石になってしまったのだ。
もし、二人が石碑に憑いた状態で守り続けてくれていたのだとしたら、割れてしまったとき彼らがどうなってしまうのかが気がかりだった。
ただ、ここにいるだけなら、きっと石碑が割れたとしても大丈夫なんだとは思うけれど。
『大丈夫ですよ、雪さん』
「え?」
『この石碑が割れてしまったとしても、砕けてしまったとしても、消滅してしまったとしても……』
『次の国で会えるよ、雪ちゃん』
燿も耀さんも、ただただにっこりと微笑むだけだった。
ただ、有無を言わさない圧を感じた。これ以上は答えないと言わんばかりの、そんな圧を。
私は燿にも耀さんにも、それ以上なにも言うことが出来なかった。だって、そんな風に言われてしまったらどうしようもない。
「本当に、また会えるんだよね?」
『当たり前でしょ。僕が雪ちゃんに嘘を吐くわけがないだろ』
『そこは信じてください、雪さん』
燿と耀さんの二人にそう言い切られてしまえば、私はもうその言葉を信じるしかない。
ううん、信じようと思った。なんでこんなに懐かしくて苦しい気持ちを二人に感じるのかは分からないけれど、私の心の奥底はまた燿と耀さんに会いたいと思っていた。
「うん……わかった。信じるよ、また会えるって」
コクンと小さく頷き返すと、私は――私達は石碑の方へと体ごと視線を向けた。
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