異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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第3章【一途に想うからこそ】

20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2①

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 ただ見つめていても、私の両手は何の変哲もないただの手だ。血が通っている薄だいだい色の肌。けれど、その皮膚の下に、もしくは皮膚のまわりに何か力が通っているかもしれない。
 前世の記憶を取り戻したことで入手した七つの大罪グリモワールとしての力。それをまだ扱えていないけれど、存在自体感じられていないけれど、確実に手に入れてはいるはずなんだ。

「……雪ちゃん?」

 両手を見つめて微動だにしない私を心配したのか、静が不安そうな声色で近づいて来た。覗き込むように私の両手を見つめて、やっぱり何も見えなくて首を傾げている。
 だけど、私はなんとなくだけど、違和感を覚えた。

(手のひらが……暖かい?)

 今までは感じることのなかった暖かさ。手のひらだけじゃなく、私自身を包み込むように膜を張るように暖かい何かが巡っている様に思えた。
 もちろん、それが目に見えてわかるわけじゃない。ただ、見えない何かを見ようと意識を集中させると私の肌から少しだけ離れたところに暖かい空気が流れている感じを覚えた。
 私達の世界でだったら、きっと霊能者たちが言っていた“オーラ”がそれに近いんじゃないだろうか。

「ゆ、雪ちゃん……? 何を……しているの?」

 静の口調が少しだけ変わったのが分かった。何かに驚いているような、普通じゃあり得ない何かを目撃したかのように慌てた声。
 私はその感覚を忘れないように脳裏に焼き付けながら、ゆっくりと視線を静に向けた。

「何って……七つの大罪グリモワールの力を感じられないかなって…………」

 そう思っただけなんだけど……と、私は困惑したように見つめてくる静を困ったように笑いながら見つめ返した。

「そ、そうじゃなくて……」
「……え?」
「……雪、ちゃん?」

 ただ力を感じ取っているだけと答える私に、静もヴェル君も戸惑うように首を左右に振った。真兄ですら、何も言えずに丸くした瞳で私を見つめてきている。
 どういうこと? と私はあたりをキョロキョロと見渡すけれど、別に何かが変わっているわけでもなくて意味が分からなかった。

「気付いていないのか?」
「真兄までどうしたの?」

 言ってくれなきゃわからないよ、と思いながら首を傾げた。それが私から真兄に対する質問への回答だ。
 その様子を見ていた静が一つ息を吐くと、私に近づいて来て私の髪にすっと指先を絡めさせた。

「……静?」
「雪ちゃん、髪の色……見えるかしら?」
「髪の、色……?」

 静の指摘を受けて、私はちらりと視線を自分の右下――肩のあたりにちらりと見える自分の髪へ向けた。
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