133 / 283
第3章【一途に想うからこそ】
19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑭
しおりを挟む
そんな彼女が私を貶めて、裏切って、見下して、悲しんで苦しんで辛い思いをしている姿を見てほくそ笑んでいる姿なんて、私は想像できない。
(……私の考えすぎだよね)
そう思う事にした。だって、過去に静の言う事を信じて身を引いたあと、今回みたいにその男の子と静が付き合ったりしていたわけじゃない。もし、それで付き合ったり関係を持っていたりしていたのなら、そう思ってしまっても仕方がないのかもしれないが。きっと、凄く好きになったヴェル君が静を選んだことが、そして協力を申し出てくれていた静が私に何も告げずにヴェル君を好きになって付き合うようになったことがショックで、そんな風に考えて結びつけてしまったんだろう。静が、私が傷つくようなことを進んでするはずがない。
(そう……だよね?)
私はそう思いながら、前を歩く静の背中を真っすぐ見つめた。ヴェル君の隣を歩きながら楽しげに会話をしている静の横顔を見て、少しだけチクリと胸が痛んだ。
昨日の事で私の事を凄く心から心配してくれていた静の事を、そんな風に疑ってしまった自分がふがいなかった。
* * *
森の中を彷徨い歩いて二日。私達は子ノ国の森にある石碑を探し回っていた。前回の卯ノ国と違って今回は誰も石碑の場所を教えてくれない。案内してくれる人だっていない。
土地勘のない私達は、ただひたすらに闇雲に探し回る事しか出来なかった。
「なかなか見つからないね……」
歩き続けることも、長時間かかれば疲れてくる。だけど、休んでいられるほど時間が有限にあるわけじゃない。
いつ神国の人達が襲ってくるかもわからない。子ノ国の人達が私達を見つけ、神国に密告するかもわからない。
「仕方ないね、こればっかりは」
「ええ。頑張って見つけましょう」
ふぅっと大きく息を吐き出しながら呟くヴェル君の言葉を、肯定しながら静も額にかいた汗を手の甲でぬぐった。
卯ノ国のように子ノ国は雪が降っているわけでもなく、涼しいわけでもない。そんな中で慣れない道を闇雲にあちこち探し回っているのだ。疲れも、熱さもピークになっていく。
「私達、七つの大罪の前世の記憶を封じ込めてるんだし、私達と共鳴したりしてくれないのかな」
「……共鳴、か」
「してくれたら確かに楽かもしれないわね。でも、力を使えるわけじゃないし、共鳴なんてさせられるのかしら」
七つの大罪の力を扱えるようになっていたら、もしかしたら可能性はあったかもしれない。その力を揮うことで共鳴させることが出来たかもしれない。
けれど現状、私達は七つの大罪の力を取り戻しているわけではない。まだ過去の記憶だって一つしか取り戻していない。そんな状態で石碑と共鳴なんて出来るかなんて、可能性はゼロに近い気がする。
「確かに力は使えないかもしれないけど、でも過去の記憶に七つの大罪としての力はすでに一部取り返してはいるはずだし……」
理論上は出来るんじゃないだろうかとも思えた。
まあ、やり方なんて知らないし思いつきもしないのだから、現状、詰んでいることには変わりないだろう。
だからといって何もせずに無理と決めつけてしまうのも違うような気もして、私は両手をジッと見つめてその場に立ち止まった。何かできるんじゃないか、何かあるんじゃないかと、私は取り戻したはずの力に意識を向けてみることにした。
(……私の考えすぎだよね)
そう思う事にした。だって、過去に静の言う事を信じて身を引いたあと、今回みたいにその男の子と静が付き合ったりしていたわけじゃない。もし、それで付き合ったり関係を持っていたりしていたのなら、そう思ってしまっても仕方がないのかもしれないが。きっと、凄く好きになったヴェル君が静を選んだことが、そして協力を申し出てくれていた静が私に何も告げずにヴェル君を好きになって付き合うようになったことがショックで、そんな風に考えて結びつけてしまったんだろう。静が、私が傷つくようなことを進んでするはずがない。
(そう……だよね?)
私はそう思いながら、前を歩く静の背中を真っすぐ見つめた。ヴェル君の隣を歩きながら楽しげに会話をしている静の横顔を見て、少しだけチクリと胸が痛んだ。
昨日の事で私の事を凄く心から心配してくれていた静の事を、そんな風に疑ってしまった自分がふがいなかった。
* * *
森の中を彷徨い歩いて二日。私達は子ノ国の森にある石碑を探し回っていた。前回の卯ノ国と違って今回は誰も石碑の場所を教えてくれない。案内してくれる人だっていない。
土地勘のない私達は、ただひたすらに闇雲に探し回る事しか出来なかった。
「なかなか見つからないね……」
歩き続けることも、長時間かかれば疲れてくる。だけど、休んでいられるほど時間が有限にあるわけじゃない。
いつ神国の人達が襲ってくるかもわからない。子ノ国の人達が私達を見つけ、神国に密告するかもわからない。
「仕方ないね、こればっかりは」
「ええ。頑張って見つけましょう」
ふぅっと大きく息を吐き出しながら呟くヴェル君の言葉を、肯定しながら静も額にかいた汗を手の甲でぬぐった。
卯ノ国のように子ノ国は雪が降っているわけでもなく、涼しいわけでもない。そんな中で慣れない道を闇雲にあちこち探し回っているのだ。疲れも、熱さもピークになっていく。
「私達、七つの大罪の前世の記憶を封じ込めてるんだし、私達と共鳴したりしてくれないのかな」
「……共鳴、か」
「してくれたら確かに楽かもしれないわね。でも、力を使えるわけじゃないし、共鳴なんてさせられるのかしら」
七つの大罪の力を扱えるようになっていたら、もしかしたら可能性はあったかもしれない。その力を揮うことで共鳴させることが出来たかもしれない。
けれど現状、私達は七つの大罪の力を取り戻しているわけではない。まだ過去の記憶だって一つしか取り戻していない。そんな状態で石碑と共鳴なんて出来るかなんて、可能性はゼロに近い気がする。
「確かに力は使えないかもしれないけど、でも過去の記憶に七つの大罪としての力はすでに一部取り返してはいるはずだし……」
理論上は出来るんじゃないだろうかとも思えた。
まあ、やり方なんて知らないし思いつきもしないのだから、現状、詰んでいることには変わりないだろう。
だからといって何もせずに無理と決めつけてしまうのも違うような気もして、私は両手をジッと見つめてその場に立ち止まった。何かできるんじゃないか、何かあるんじゃないかと、私は取り戻したはずの力に意識を向けてみることにした。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる