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第3章【一途に想うからこそ】
19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑫
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雪が静の提案を拒絶して何かを望むとは思っていなかったのだ。静にとって予想外の雪の選択だった。
「だって、静にその気がないなら可能性はあるんじゃないかなって。それに……脈なしなんだとしたら亮さんから二人で会おうなんて誘ってきてくれるはずないもん」
雪の賢明な考えに、強い気持ちに、静は舌打ちをしたい気持ちを必死に抑えた。
一生懸命に表情をつくろって雪を心配するように笑みを浮かべ、雪の両手を包んでいた手で彼女の肩をしっかりと掴んだ。
そして、ゆっくりと首を左右に振って“やめたほうがいい”と視線で訴えた。
「……なんで、静はそんなに否定的なの? 会ったときにいい人って……言ってたのに」
「ええ、あの時はそう思ったわ。凄く優しくて、気も利いて、話も面白くて、とてもいい人だって。この人だったら雪ちゃんを任せられるって……そう、思ったわ」
言葉を選びながら呟く静を見て、雪はごくりと息を呑んだ。当日はそう思ってくれていたはずなのに、なにがどうなって否定的になったのか全くもって理解出来なかった。何があったのかと思ってしまうくらい、静の意見は百八十度変わってしまっている。
(……いつもの雪ちゃんなら、ここまで言えば“分かった”って言ってくれるのに……)
吐き出したくなるため息をこらえ、静は大きく深呼吸を繰り返すと雪の目を真っすぐ見つめて泣きそうな表情を浮かべた。
その静の表情に雪はギョッとした。
「し、静……?」
「本当はこれは言いたくなかったのだけど……」
「……なに? 関係あることなら、隠さないで教えて?」
「いい、の?」
「うん。聞きたいの」
何を言われるんだろうと、雪は身構えながらも静の言葉を待った。その時間は長くはなかったけれど、緊張をしている雪にとってはとても長く感じる時間だった。
「雪ちゃんの事を気に入っていたんじゃないの? って聞いたのよ。そしたら、亮さんは……っ」
「し、静!? だ、大丈夫……?」
「え、ええ……ごめんなさい、ちゃんと伝えないといけないのに……」
「ゆっくりで構わないから……」
ぽろりと瞳から涙をこぼした静はパッと顔を隠すように下を向いた。そんな静の反応を見て雪は心配そうに顔を覗き込んだ。
「あの、ね……」
「うん」
「……雪ちゃんのことは確かに気に入っていた、と言っていたわ」
亮を好いていた雪にとって、その言葉は救いとなる嬉しいものだった。
「雪ちゃんのこと、亮さんは“彼女にするには重そうだけど、セフレにするには丁度良さそうだから気に入ってる”って言ったのよっ。雪ちゃんのこと、単純で勘違いさせとけば簡単に股を開きそうだって……」
静の口から告げられた言葉は、先ほど持ち上げられた嬉しい気持ちを一気に叩き落してくるものだった。
「だって、静にその気がないなら可能性はあるんじゃないかなって。それに……脈なしなんだとしたら亮さんから二人で会おうなんて誘ってきてくれるはずないもん」
雪の賢明な考えに、強い気持ちに、静は舌打ちをしたい気持ちを必死に抑えた。
一生懸命に表情をつくろって雪を心配するように笑みを浮かべ、雪の両手を包んでいた手で彼女の肩をしっかりと掴んだ。
そして、ゆっくりと首を左右に振って“やめたほうがいい”と視線で訴えた。
「……なんで、静はそんなに否定的なの? 会ったときにいい人って……言ってたのに」
「ええ、あの時はそう思ったわ。凄く優しくて、気も利いて、話も面白くて、とてもいい人だって。この人だったら雪ちゃんを任せられるって……そう、思ったわ」
言葉を選びながら呟く静を見て、雪はごくりと息を呑んだ。当日はそう思ってくれていたはずなのに、なにがどうなって否定的になったのか全くもって理解出来なかった。何があったのかと思ってしまうくらい、静の意見は百八十度変わってしまっている。
(……いつもの雪ちゃんなら、ここまで言えば“分かった”って言ってくれるのに……)
吐き出したくなるため息をこらえ、静は大きく深呼吸を繰り返すと雪の目を真っすぐ見つめて泣きそうな表情を浮かべた。
その静の表情に雪はギョッとした。
「し、静……?」
「本当はこれは言いたくなかったのだけど……」
「……なに? 関係あることなら、隠さないで教えて?」
「いい、の?」
「うん。聞きたいの」
何を言われるんだろうと、雪は身構えながらも静の言葉を待った。その時間は長くはなかったけれど、緊張をしている雪にとってはとても長く感じる時間だった。
「雪ちゃんの事を気に入っていたんじゃないの? って聞いたのよ。そしたら、亮さんは……っ」
「し、静!? だ、大丈夫……?」
「え、ええ……ごめんなさい、ちゃんと伝えないといけないのに……」
「ゆっくりで構わないから……」
ぽろりと瞳から涙をこぼした静はパッと顔を隠すように下を向いた。そんな静の反応を見て雪は心配そうに顔を覗き込んだ。
「あの、ね……」
「うん」
「……雪ちゃんのことは確かに気に入っていた、と言っていたわ」
亮を好いていた雪にとって、その言葉は救いとなる嬉しいものだった。
「雪ちゃんのこと、亮さんは“彼女にするには重そうだけど、セフレにするには丁度良さそうだから気に入ってる”って言ったのよっ。雪ちゃんのこと、単純で勘違いさせとけば簡単に股を開きそうだって……」
静の口から告げられた言葉は、先ほど持ち上げられた嬉しい気持ちを一気に叩き落してくるものだった。
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