異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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第3章【一途に想うからこそ】

19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑩

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 なのに、どこか静は焦っているような……そんな感じを雪は覚えた。初対面の亮には気付かせなかったが、幼馴染の雪には隠しきれていなかった。

* * *

 楽しい食事の時間はあっという間に過ぎ、雪達は楽しかった時間に浸りながらも解散した。
 それから数日、雪と亮は変わらず連絡のやり取りを交わしていた。
 だが、それは雪だけではなかった。あの日、雪がトイレに立った時に静も亮と連絡先を交換していたのだ。

「雪ちゃん、朝からにやにやしてるけれど、どうかしたのかしら?」
「あ、静。え、顔に出てた?」

 静の指摘に雪は両手で頬を覆うようにして、恥ずかしそうに表情を緩めた。

「ものすごーく顔に出てるわよ。で、どうかしたのかしら?」

 苦笑を浮かべながら肩をすくめて問いかける静。
 まるで聞いて欲しそうに見える雪に、律儀に問いかけてあげるのは静なりの優しさなのか、それとも別の思惑があるのか。

「今度、また二人で会わないかって……さっきメールが来ていたの」

 その言葉を聞いた瞬間、静が一瞬だけ目を見開いた。けれど、雪はそれに気付いてはおらず、ただただ嬉しそうに微笑みながら「なんて返事しようかな……」なんて携帯を握りしめていた。
 その時の雪は、静の表情が全く見えていなかった。先日会ったときの良い印象を静が持ってくれていて、きっと自分を応援してくれるだろうと強く信じていた。
 だからこそ、そのあと出てくる静の言葉が雪は予想出来なかった。というよりも、予想したくなかったのかもしれない。

「雪ちゃん」
「うん? どうしたの?」

 凄く神妙な面持ちで、とても言いにくそうに口をもごもごとさせる静。雪はそんな静の様子が疑問で首を傾げた。
 なぜそんな反応をするのか、理解すらできなかった。これが初めてではなかったのに。予想しようと思えば出来たはずなのに……だ。

「あのね、とても言いにくいのだけれど……」
「うん」
「……亮さんと会うのは、よくないと思うわ」
「――――え?」

 会っておいでと言われると思っていた。いい人だから頑張れって祝福してくれると、雪は考えていた。
 だからこそ、会うのを止められる言葉が静の口から出てくるなんて思わなくて、間の抜けた声が雪から発された。

(会うの……よく、ない?)

 今、そう言ったの? と目をぱちぱちと何度も瞬かせて、じっと静を見つめた。
 雪の視線を真正面から受け止めながら、静は小さく頷きながらもう一度、

「よくないと……思うわ」

 同じ言葉を再度、雪に告げた。
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