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第3章【一途に想うからこそ】
19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑨
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大人の余裕とでもいうのか、驚く雪の姿を見て亮は「これくらいはね」と笑いながら返してくれた。
(優しそうで、気が利く人なのね……)
亮の言動を見つめながら静は値踏みするように彼を見つめていた。
楽しそうに会話を繰り広げる雪と亮の半歩後ろを歩きながら、
(こんな人と雪ちゃんはどこで知り合ったのかしら?)
学校以外で出会う機会はそうそうないはずなのは静も知っていた。だからこそ、亮とどこで知り合ったのかとても気になったのだ。
予約してくれたという店についたら聞けばいいかと自己完結した静は、そのまま二人の後を無言で追いかける様について行きお店に到着した。
中に通されるとすでに用意されていた四人席に案内されると静と雪が一緒に座り、雪の目の前に亮が座った。
コースで頼んであるため、雪達は料理が運ばれてくるのを待つだけだった。
「最初の飲み物はなににする?」
「あ、私はグレープフルーツジュースで」
「私はジンジャエールにするわ」
「了解。俺の飲み物と一緒に頼んじゃうね」
そう言うと亮はウエイトレスを呼び止め、雪と静の飲み物と一緒に自分自身の飲み物を頼んでいた。
ウエイトレスを呼んでから、それぞれに飲みたい飲み物を頼むのではなくてまとめて頼んでくれる様子を見て静は感心していた。
「二人はどこで知り合ったのかしら?」
「去年、俺が落とした免許証を雪さんが拾ってくれて、届けてくれたんだよ」
「それで、亮さんがお礼にって食事に誘ってくれて、ご飯食べに行って連絡先を交換して――って感じだったの」
「そんな事があったのね。交番に免許証を落とし物として届けることも出来ただろうに、雪ちゃんは偉いのね」
「もしかしたらすぐに必要かもしれないって思ったら……交番に届けてたら亮さんに届くまでに時間かかるかもって思って」
照れくさそうに笑う雪を見て、亮は嬉しそうにニコニコと微笑みを浮かべていた。
ウエイトレスが持ってきてくれた飲み物を配りながら静は話に耳を傾け「へぇ」と小さく声を漏らした。
「最寄り駅で雪さんに急に声をかけられたときはびっくりしたよ」
「そ、そうですよね! その時は、全然知らない人だったんだもん……」
「だけど、身分証としても使ってたから、おかげで助かったよ」
静から渡されたグラスを受け取り、亮はごくりと一口飲み物を呑みこんでからはにかむように笑った。
2人は免許証を渡したときに一度会って、その後の食事でもう一度会い、それ以降は亮が忙しく予定が合わなくてメールでのやり取りばかりで、今日で会うのは三回目のはずなのだが、雪と亮はなんだかいい雰囲気を醸し出していた。
そんな二人の空気をひしひしと肌で感じた静は、雪と亮を交互に見つめた。
「静? どうかしたの?」
「ううん、なんでもないわ。二人とも仲良さげで良かったと思っただけよ」
じっと見つめてくる静が気になった雪は、亮との会話を止めると静に問いかけていた。
けれど、静はゆっくりと左右に首を振ってにっこりと微笑むだけだった。雪を心配してついて来たのだから、仲良さげだったのはとても良い事のはずだ。
(優しそうで、気が利く人なのね……)
亮の言動を見つめながら静は値踏みするように彼を見つめていた。
楽しそうに会話を繰り広げる雪と亮の半歩後ろを歩きながら、
(こんな人と雪ちゃんはどこで知り合ったのかしら?)
学校以外で出会う機会はそうそうないはずなのは静も知っていた。だからこそ、亮とどこで知り合ったのかとても気になったのだ。
予約してくれたという店についたら聞けばいいかと自己完結した静は、そのまま二人の後を無言で追いかける様について行きお店に到着した。
中に通されるとすでに用意されていた四人席に案内されると静と雪が一緒に座り、雪の目の前に亮が座った。
コースで頼んであるため、雪達は料理が運ばれてくるのを待つだけだった。
「最初の飲み物はなににする?」
「あ、私はグレープフルーツジュースで」
「私はジンジャエールにするわ」
「了解。俺の飲み物と一緒に頼んじゃうね」
そう言うと亮はウエイトレスを呼び止め、雪と静の飲み物と一緒に自分自身の飲み物を頼んでいた。
ウエイトレスを呼んでから、それぞれに飲みたい飲み物を頼むのではなくてまとめて頼んでくれる様子を見て静は感心していた。
「二人はどこで知り合ったのかしら?」
「去年、俺が落とした免許証を雪さんが拾ってくれて、届けてくれたんだよ」
「それで、亮さんがお礼にって食事に誘ってくれて、ご飯食べに行って連絡先を交換して――って感じだったの」
「そんな事があったのね。交番に免許証を落とし物として届けることも出来ただろうに、雪ちゃんは偉いのね」
「もしかしたらすぐに必要かもしれないって思ったら……交番に届けてたら亮さんに届くまでに時間かかるかもって思って」
照れくさそうに笑う雪を見て、亮は嬉しそうにニコニコと微笑みを浮かべていた。
ウエイトレスが持ってきてくれた飲み物を配りながら静は話に耳を傾け「へぇ」と小さく声を漏らした。
「最寄り駅で雪さんに急に声をかけられたときはびっくりしたよ」
「そ、そうですよね! その時は、全然知らない人だったんだもん……」
「だけど、身分証としても使ってたから、おかげで助かったよ」
静から渡されたグラスを受け取り、亮はごくりと一口飲み物を呑みこんでからはにかむように笑った。
2人は免許証を渡したときに一度会って、その後の食事でもう一度会い、それ以降は亮が忙しく予定が合わなくてメールでのやり取りばかりで、今日で会うのは三回目のはずなのだが、雪と亮はなんだかいい雰囲気を醸し出していた。
そんな二人の空気をひしひしと肌で感じた静は、雪と亮を交互に見つめた。
「静? どうかしたの?」
「ううん、なんでもないわ。二人とも仲良さげで良かったと思っただけよ」
じっと見つめてくる静が気になった雪は、亮との会話を止めると静に問いかけていた。
けれど、静はゆっくりと左右に首を振ってにっこりと微笑むだけだった。雪を心配してついて来たのだから、仲良さげだったのはとても良い事のはずだ。
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