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第3章【一途に想うからこそ】
19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑦
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(そんな思いを、真兄に聞かせるわけにはいかないよ……)
私の心の闇の部分だ。これを私は人に見せようと思ったことはない。全部、全部、心の中に押しとどめて、隠して、蓋をして、闇に葬り去ろうとしていた部分だ。
「分かった。無理には聞かない。だが……」
私から視線をそらして、真兄は先を歩くヴェル君と静のあとをゆっくりとした足取りで追うように歩きながら。
「大丈夫じゃないなら大丈夫じゃないって言っていいんだ。無理しなくていいんだ」
「……うん、ありがとう」
小さく真兄にお礼を口にすると、私は彼の隣に並んで同じペースで歩みをすすめた。ヴェル君と静のあとを追いながらも決して距離を縮めることなく、一定の距離を開けていた。
無言でただひたすら子ノ国を目指しながら歩いていると、先ほど浮かんだ私の闇の部分を思い出してしまう。
当時は何とも思っていなかった……むしろ、静が私のためを思ってやってくれていたと思っていた事が、いま思うとなんだかおかしいような気がした。
* * *
「雪ちゃん、どうしたの?」
「うん……実はね、好きな人が出来たの」
「え、そうなの!? おめでとう、雪ちゃん!」
「もう、静は気が早いよ! 付き合ってるわけじゃないんだから……」
そんなやり取りを過去していたことを、思い出していた。
雪は頬を赤く染め上げ、照れながらも親友で幼馴染の静にカミングアウトした。
「今度ね、遊びに行こうって誘われたんだ」
「そうなの? えぇー、凄くいいじゃない」
嬉しそうに笑う雪の言葉に、静は羨ましそうに声を上げた。別に、静自身は男にモテるから雪を羨ましがらなくとも男は星の数だけ居る。
「どんな人なの?」
写真はないの? と私の顔をジッと見つめてくる静に、雪はおずおずと携帯を取り出した。
写真フォルダをあさり彼の写真を見つけると、画面いっぱいに表示させて恥ずかしそうにそれを静に見せた。
黒髪の毛先を少しワックスで遊ばせていて、健康的に焼けた肌、キリっとした黒い瞳、そして人懐っこそうに浮かべる笑顔。そんな男性だった。
「人懐っこそうね」
「うん、結構気さくで、優しいんだ」
携帯の画面をまじまじと見つめながら静は雪の言葉に「ふーん」と短く返す。けれど、視線は携帯の画面から一切外さず、右手の人差し指を唇の下に添えると。
「私も会ってみたいわ」
「え?」
「だって、雪ちゃんったら天然で、変な男に引っかかりそうで心配なんだもの。大丈夫な人か、私が見極めてあげないと」
「静、心配しすぎだよ」
私の心の闇の部分だ。これを私は人に見せようと思ったことはない。全部、全部、心の中に押しとどめて、隠して、蓋をして、闇に葬り去ろうとしていた部分だ。
「分かった。無理には聞かない。だが……」
私から視線をそらして、真兄は先を歩くヴェル君と静のあとをゆっくりとした足取りで追うように歩きながら。
「大丈夫じゃないなら大丈夫じゃないって言っていいんだ。無理しなくていいんだ」
「……うん、ありがとう」
小さく真兄にお礼を口にすると、私は彼の隣に並んで同じペースで歩みをすすめた。ヴェル君と静のあとを追いながらも決して距離を縮めることなく、一定の距離を開けていた。
無言でただひたすら子ノ国を目指しながら歩いていると、先ほど浮かんだ私の闇の部分を思い出してしまう。
当時は何とも思っていなかった……むしろ、静が私のためを思ってやってくれていたと思っていた事が、いま思うとなんだかおかしいような気がした。
* * *
「雪ちゃん、どうしたの?」
「うん……実はね、好きな人が出来たの」
「え、そうなの!? おめでとう、雪ちゃん!」
「もう、静は気が早いよ! 付き合ってるわけじゃないんだから……」
そんなやり取りを過去していたことを、思い出していた。
雪は頬を赤く染め上げ、照れながらも親友で幼馴染の静にカミングアウトした。
「今度ね、遊びに行こうって誘われたんだ」
「そうなの? えぇー、凄くいいじゃない」
嬉しそうに笑う雪の言葉に、静は羨ましそうに声を上げた。別に、静自身は男にモテるから雪を羨ましがらなくとも男は星の数だけ居る。
「どんな人なの?」
写真はないの? と私の顔をジッと見つめてくる静に、雪はおずおずと携帯を取り出した。
写真フォルダをあさり彼の写真を見つけると、画面いっぱいに表示させて恥ずかしそうにそれを静に見せた。
黒髪の毛先を少しワックスで遊ばせていて、健康的に焼けた肌、キリっとした黒い瞳、そして人懐っこそうに浮かべる笑顔。そんな男性だった。
「人懐っこそうね」
「うん、結構気さくで、優しいんだ」
携帯の画面をまじまじと見つめながら静は雪の言葉に「ふーん」と短く返す。けれど、視線は携帯の画面から一切外さず、右手の人差し指を唇の下に添えると。
「私も会ってみたいわ」
「え?」
「だって、雪ちゃんったら天然で、変な男に引っかかりそうで心配なんだもの。大丈夫な人か、私が見極めてあげないと」
「静、心配しすぎだよ」
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