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第3章【一途に想うからこそ】

19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち③

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「とりあえず、腹ごしらえしてからテントを片付けよう」
「うん、そうだね……あ、ありがとう」

 ヴェル君の言うとおり腹ごしらえは大切だと思った。鼻孔をかすめるいい匂いが、私のお腹が空腹だったことを思い出させた。
 大きめの木のスプーンで器の中のスープをすくうと、中に入っていた具材も一緒にすくえた。私の世界でいうジャガイモみたいなゴロゴロとした野菜や、ウインナーのような親指の太さくらいある肉類が入っていた。
 スープもまるでコンソメスープみたいな味で、とても温かく美味しくて、身も心もほっこりとした。

「……おいしい」
「そっか。それならよかった」
「いつもありがとうね、ヴェル君」
「好きでやってることだからいいよ、別に。それに、美味しそうに食べてくれる姿を見るだけで嬉しいというか、作りがいがあるしね」

 にっこりと笑いながらトンっと胸を軽く叩くヴェル君を見て、本当に彼は優しいなと思った。
 料理……しかも野外での調理なんてめんどくさくて大変だと思うのに、嫌な顔一つせずに引き受けてくれるのは彼らしいというかなんというか。本当にありがたい事だなと思った。
 体が温まり、胃が膨れると心までもがポカポカと温まってくる。その温かさに、涙が滲みそうになった。

「……雪ちゃん」
「えへへ……美味しすぎて泣きそ……」

 はぐらかしてもバレてしまう事はすぐに分かったからこそ、私は素直に泣きそうになっていることを言葉にしながら手の甲で涙をゴシゴシと拭った。

* * *

 あのあと、ヴェル君の手作りスープを全部飲み切った私達はテントを空間魔法でしまってもらうと、出発の準備を整えてから焚火の火を消してあの場所をあとにした。
 私は真兄に、静はヴェル君に手を借りながら山道をただひたすら進んだ。
 本当はヴェル君にまた手を借りたかったけど、昨日の出来事を考えるとどうしてもヴェル君に頼む気にはなれなかった。もちろん、静とヴェル君が付き合ってるという事実も念頭に置くと“ヴェル君に頼む”という事に二の足を踏んでしまう。当たり前な事だとは思うけれど。

「雪、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。ありがとう」

 心配をしてくれる真兄に、私は精一杯の笑顔を向けた。
 実際問題、大丈夫かといわれれば大丈夫じゃないかもしれない。心ももちろんの事だが、体も思った以上に辛い。
 人に与えられる快楽というものは自分で止めることが出来ず、際限なく与えられてしまうものだ。何度もイかされた私の体は、快感とともに疲労も蓄積されていたのか、今日起きた時からとてもだるかった。
 そして一番つらいのは、おそらく初めてを奪われたことでおこった臓器を引き裂かれたような痛みと、未だに中に入っているかのように感じる異物感だ。ズキズキと感じる痛みは大切な場所に招き入れてしまった証明となり、同時に異物感がそこに太いペニスを受け入れていた事を思い出させてくる。

「無理はするなよ」
「うん。辛かったら正直に言うよ」
「ああ。遠慮はするな」
「ありがとう……真兄、優しいね」
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