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第3章【一途に想うからこそ】
18罪 ハジメテ⑭
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「さ、静ちゃん。今日はあんたも疲れたでしょ、そろそろ休もう」
「……まだ、休みたくないわ」
「そういって無理して、明日辛くなってもしらないよ?」
心配している風を装って、ヴェルは静を自分のテントに帰るように促したかった。
このまま一緒に居たら、また静に体の関係をねだられてしまいそうだったからだ。雪があんな目にあったばかりなのに、静を抱くなんてヴェルは考えることが出来なかった。
「私はそんなに辛くなるようなことはないと思うのだけれど……」
「そんな事ないと思うよ。静ちゃんが思っている以上に、きっと疲れてると思うよ、体も心も」
優しく微笑みを浮かべてヴェルは静の頭をぽんぽんと撫でた。上目づかいで見つめてくる静を真っ向から見つめ返して、有無を言わさない感じで帰ることを促し続ける。
(頼むから、今日は帰ってくれ……)
そうは思っても、はっきりと静に言えない事がもどかしい。
「……そんなに心配してくれるのなら、今日は自分のテントに戻るわ」
きっとヴェルは意見を変えないだろうと分かった静は、小さくため息をついて肩をすくめた。
ゆったりとした動きで立ち上がると、座ったままのヴェルを見下ろして笑った。
「また明日、ね。ヴェルくん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ、静ちゃん。いい夢を」
「ええ。ヴェルくんも、良い夢を」
そんな風に夜の挨拶を交わし、静はヴェルのテントを後にした。
静が去ったテントの出入り口付近を見つめたまま、ヴェルはしばらくボーっとしていた。まさか、こんなにあっさりと帰ってくれるとは思っていなかったから、驚いたのだ。
(……いつもこんな感じに、こっちの意図をくんでくれると助かるんだけどなぁ)
そう願っても、そうならないことはヴェル自身がよく知っている。だからこそ、疲れるのだ。
(さすがに今回は雪ちゃんのこともあったから引いてくれたんだと思いたいな……)
言葉の端々であまり雪の事を心配しているのが見えなかった静の事を考えると、それはないようにも思えるがヴェルはそう願うしかなかった。
実際には静の気まぐれだったという事実は、静本人しか知る由もない。
「……まだ、休みたくないわ」
「そういって無理して、明日辛くなってもしらないよ?」
心配している風を装って、ヴェルは静を自分のテントに帰るように促したかった。
このまま一緒に居たら、また静に体の関係をねだられてしまいそうだったからだ。雪があんな目にあったばかりなのに、静を抱くなんてヴェルは考えることが出来なかった。
「私はそんなに辛くなるようなことはないと思うのだけれど……」
「そんな事ないと思うよ。静ちゃんが思っている以上に、きっと疲れてると思うよ、体も心も」
優しく微笑みを浮かべてヴェルは静の頭をぽんぽんと撫でた。上目づかいで見つめてくる静を真っ向から見つめ返して、有無を言わさない感じで帰ることを促し続ける。
(頼むから、今日は帰ってくれ……)
そうは思っても、はっきりと静に言えない事がもどかしい。
「……そんなに心配してくれるのなら、今日は自分のテントに戻るわ」
きっとヴェルは意見を変えないだろうと分かった静は、小さくため息をついて肩をすくめた。
ゆったりとした動きで立ち上がると、座ったままのヴェルを見下ろして笑った。
「また明日、ね。ヴェルくん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ、静ちゃん。いい夢を」
「ええ。ヴェルくんも、良い夢を」
そんな風に夜の挨拶を交わし、静はヴェルのテントを後にした。
静が去ったテントの出入り口付近を見つめたまま、ヴェルはしばらくボーっとしていた。まさか、こんなにあっさりと帰ってくれるとは思っていなかったから、驚いたのだ。
(……いつもこんな感じに、こっちの意図をくんでくれると助かるんだけどなぁ)
そう願っても、そうならないことはヴェル自身がよく知っている。だからこそ、疲れるのだ。
(さすがに今回は雪ちゃんのこともあったから引いてくれたんだと思いたいな……)
言葉の端々であまり雪の事を心配しているのが見えなかった静の事を考えると、それはないようにも思えるがヴェルはそう願うしかなかった。
実際には静の気まぐれだったという事実は、静本人しか知る由もない。
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