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第3章【一途に想うからこそ】

18罪 ハジメテ⑨

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「でもっ!」
「そんなに気にし過ぎないで? 私が静を助けたくてしたことなんだから。それに、静だって皆を呼んできてくれて、私を助けてくれたじゃん」
「だけど……」
「静のおかげで、私は助けられたんだよ?」
「……っ」

 そんなふうに優しく言っても、静はおそらくしばらくは自分を責め続けるんじゃないかなと思った。自分のせいだと思っている人間にどれだけ“そんな事はない”と言っても、ぬぐいきれるものじゃない。

「静、ありがとう」
「……雪、ちゃっ」

 声を詰まらせたように静は言葉を止め、私の肩に顔をうずめるとすりすりと顔を擦り付けてきた。
 そんな静の背中を、私は無言でポンポンと叩くように撫でて、彼女が落ち着くのを待つのだった。
 当初、人が目の前で死んで感じていた吐き気は、いつの間にか消え去っていた。

* * *

 あれから、落ち着いた静は恥ずかしそうに視線を逸らして私から身を離した。
 そして、今はゆっくりと体を休めようという事となり、バタバタと自分たちのテントを張った場所へ戻り、それぞれのテントへと入った。
 ずっしりと体の重さを感じ、どれだけ体が疲れているかが分かった。横になれば体が沈んでいくような感覚に陥り、そのまま意識は闇の中へと落ちていった。

* * *

「……雪ちゃん、大丈夫かな」

 ヴェルは自身のテントに広げた寝袋に横になりながら物思いにふけった。あんな怖い思いをさせたのだから、心配にならないわけがないのだ。
 ヴェルは頭の下で腕を組みながらテントの天井を見つめた。

(怖かった……よな。でも、静ちゃんが呼びに来てくれたおかげで雪ちゃんを助けに行けたのは良かった)

 恐怖で腰が抜けて、その場から逃げ出すことが出来なくても可笑しくはなかったのだ。ヴェルは少しだけ静を見直していた。
 なんだかんだ言って、静もやっぱり雪を大切にしていたんだという事がよくわかり、ヴェルはホッと胸を撫で下ろしていた。
 確かに彼女は言葉では雪を大切に思っていると何度も言っていたが、その行動を鑑みるととてもそうは思えなかった。だからこそ、今回の静の行動は本当に雪を大切に思っていたんだという確認が行えたようなものだ。

「……ヴェルくん? 少し……いいかしら」
「……静ちゃん?」

 テントの外からかかった声に、ヴェルは少し戸惑いながらも言葉を返した。自分が雪を心配しているように、静も雪が心配で、だけど雪の元に行くことは出来ず自分の元に来たのかもしれないとヴェルは少し考えた。

「……入っても、いい?」
「あ、うん……いい、よ」

(本当は、あんまり入ってきてほしくはないけど……)

 本心は隠した状態で、ヴェルは静を招き入れた。テントの中に姿を現した静は、疲れ切ったような表情を浮かべていた。そして、心配そうに両手をぎゅっと胸の前で握りしめて、眉をハの字に下げていた。
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