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第3章【一途に想うからこそ】

17罪‬ 身代わり⑨

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 あれからしばらく時間が経ち、太陽の光が差し込んで明るかった泉付近は一気に暗くなった。
 ヴェル君の手造りご飯を食べた後、私は静と一緒に水浴びをすることにした。最初は一人で入ろうかとも思ったのだけれど、知らない土地で一人だけで裸になるのは少しだけ心細い。

「ありがとうね、静」
「なにが?」
「一緒に水浴びしてくれて」
「私も浴びたかったから全然かまわないわよ」

 岩場からテントの方が見えないことを確認してから私と静は着ていた服を脱ぎ、それらを綺麗にたたむと岩場の上に置いた。そして、一糸纏わぬ生まれたままの姿になった私達はゆっくりと冷たい泉の中へつま先から体を沈めていった。
 ここは卯ノ国の雪山と違って温かくて、水の中へと体を落とした瞬間に感じる身に染みる冷たさを耐えきれば、あとは体が慣れてくれる。

「ふぅっ……つめたぁ……」
「お湯じゃないから仕方ないわ」
「むしろ野宿なのに浴びれることに感謝しないとだね」

 そんな風に私と静は顔を見合わせて笑うと、ザバンと肩まで浸かった。泉に近づくまでは分からなかったけれど、この泉、思ったよりも広い。

「ねぇ、雪ちゃん。もう少しあっちの方にも行ってみない?」
「え……? あまりみんなから離れない方がよくない?」
「少しくらい大丈夫だと思うわよ。魔獣とかが居ればヴェルくんが気付いてくれていたでしょうし」

 テントに一番近い場所で水浴びをしていたが、静が行こうと提案した場所は今、私達がいる場所と正反対の方向だ。姿を確認できなくなるほど遠くはないが、おそらく話し声は全く聞こえなくなるだろう。そんなに離れてしまうことが私には少しだけ不安だったけれど、静はそんなことはないみたいで、少しだけ強引に私の腕を引いて向かい始めた。

(こうなった静を止められないんだよねぇ……)

 こうと決めたら行動してしまう静の性格を理解していたからこそ、小さく聞こえないようにため息を吐くと私は観念したように肩をすくめた。

「向こうについたらすぐ戻るんでもいい?」
「ええ、構わないわ」

 向こう側を見に行ってみたいだけだから、と笑う静。私は静に引っ張られていくのではなく、自分の意思でそちらに向かおうと歩きはじめた。そうすると、引っ張っていた静の手が私の腕から離れた。
 水の中を歩くというのは負荷が結構かかって歩きにくくて、思った以上に目的地に到着するのに時間がかかった。テントの近くで話をしているヴェル君と真兄はきっと気付いていないんだろうなと思いながら、岩場に近づいていく静の背中を見つめた。
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