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第3章【一途に想うからこそ】

17罪‬ 身代わり⑥

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「レインボースワンか」
「レインボースワン?」
「水辺を渡る虹色の尾を持つ魔鳥のことだよ。あいつが居るところには絶対水辺があるって言われてるんだ。まあ……実際そうだしね」

 私の問いかけにヴェル君が分かりやすく答えてくれた。私達の世界にいる白鳥と似て異なる存在ってことか、と納得するとレインボースワンを遠巻きに見つめた。

「レインボースワンは襲ってきたりしないのかしら?」
「ああ、あいつは魔鳥の中ではおとなしい部類で、こっちから手を出さなければ何もしてこないよ」

 それならよかった……とヴェル君の言葉を聞いて私達はホッと胸を撫で下ろすと、泉のまわりを確認するように視線を巡らせた。
 場所的にも開けていて狭くもなく、人数分のテントを張るのにも問題はなさそうな広さがあった。水浴びをしたい私達の気持ちを汲んでくれているかのように泉のまわりにはゴツゴツとした岩場が広がっていて、いい感じに視界を遮ってくれそうだ。

「今日はここにテントを張る感じ?」
「うん、それでいいと思うよ。静ちゃんと真はどう? ここで大丈夫?」

 私の問いかけにヴェル君はコクンと頷きかえすと、確認するように静と真兄にも同じように問いかけてくれた。

「水浴びもできるし、私もここで問題ないわ」
「俺も、静と雪がここで問題ないなら大丈夫だ」

 静の答えも予想どおりだったし、私と静を第一に考えてくれている真兄の発言も予想どおりで少しだけフッと笑ってしまった。

「じゃあ、早めにテントを張っちゃおうか」
「さんせーい」

 空間魔法で取り出したテント一式をヴェル君から受け取ると、私達はそれぞれ好きな場所にテントを張り始めた。
 私はなるべくまわりの気配を感じなくて済むように、泉やみんなのテントから少し距離をとって張ることにした。静とヴェル君と真兄はつかず離れず、一定間隔をあけてテントを張るようだ。

「……雪ちゃん、ほんとにそこでいいの?」

(まあ、そりゃ……気にされるよね)

 心配そうに私を見つめてくるヴェル君に私は申し訳なさそうな笑みを浮かべると、ポリポリと鼻の横を人差し指で軽く掻いた。
 張られた全員のテントの位置を見ると完全に私一人がひとりぼっちのように見える配置になっているのだから、誰かしらに気にされるのはなんとなくわかっていた。だけど、今更テントの位置をみんなのテントに近づけるつもりもないし、この位置を選んだ私自身の考えを後悔したりもしない。
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