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第3章【一途に想うからこそ】

17罪‬ 身代わり⑤

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「雪ちゃん? どうかした?」
「何か見つけたのかしら?」

 立ち止まり悩みこむ私に気付いたのか、ヴェル君と静が心配そうに近寄ってきてくれた。私は掛けられた声に気付いて視線を二人に向けて、苦笑いを浮かべた。

「見つけたというか、見つからなかったというか……」
「どういうこと?」
「羽音が聞こえたから何か居るのかなと思ったんだけど、全然見つからなくて」

 ポリポリと頬を掻きながら、期待外れの答えを二人に告げているんじゃないかと思って申し訳なさを感じた。水場を見つけたわけでもないし、動物を見つけたわけでもないし、次のテントを張る候補地を見つけたわけでもない。なんならテントを張るにはまだ早い。

「どの辺から聞こえたか分かる?」
「ええと……」

 ヴェル君にそう言われた私は記憶をたどりながらあたりを見渡し、ある一点――――私から見て左側、深い緑色の草木の生えた先を見つめた。

「確か、あっちからしたはず」

 パッと見ではただ森が続いている様にしか見えない視界の先。だけど、ヴェル君がそう聞くってことは何かがあるって事なんだろう。

「行ってみようか」
「でも、姿を見たわけじゃないよ?」

 もちろん、音のした方を探しに行ったわけじゃないから完全に探したかと言われれば答えは否だ。
 もしかしたら、木々に隠れて空に飛んで行ってしまった後かもしれない。

「何か居るかもしれないし。見に行く価値はあると思うよ」
「……そうね。ヴェルくんの言うとおりだわ、行くだけ行ってみましょう」

 そう言って、ヴェル君と一緒に先に茂みの方へ近寄っていく静を追って、私は真兄と一緒に足を踏み出した。

「何がいるのかしら」
「予想つかないけど、まあ、狩れそうな鳥とか魔鳥だったら、夕食の食材にすればいいし」

 そうじゃなかったら逃げるが先決、と笑うヴェル君に少しだけ気が引き締まるのを感じた。
 がさがさと草をかき分けて先へ進んで行くとキラキラとまぶしい光が視界に飛び込んできて、まぶしさで目をぎゅっと閉じてからゆっくりと開いた。

「……わぁ……」

 ひらけた森に差し込む太陽の光が、そこにある泉に反射してキラキラと輝いていた。
 その泉の水面には、見たことのない真っ白な白鳥のような鳥が水浴びをしているようだった。私の世界にいる白鳥との違いといえば、長く伸びた虹色の尾だろう。それだけで、普通の鳥ではないという事がよくわかった。
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