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第2章【交わる二人の歯車】

15罪 告白⑭

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「それで、ヴェルくんからは答えは貰ったの?」
「……っ」

 静のその問いかけに、ヴェル君は小さく息を呑みそっぽを向いてしまった。いい雰囲気だったような気がしたんだけれど、ヴェル君はそうじゃなかったのかな? という疑問がよぎった。それか、静がいるから答えにくいのかな?

「ヴェルくん、女からの告白は凄く勇気がいるのよ? だから、答えをはぐらかしてなあなあにしちゃ駄目よ?」
「し、静! 別に私は今すぐ答えが欲しいってわけじゃないから……」

 そんなに急かさなくてもいいんじゃないかって思ったからこそ出た言葉だった。横になっていた私は、ゆっくりと状態を起こして布団の上で座った状態で二人を見つめた。だけど、静は私の言葉に対して首をゆっくり左右に振るだけだった。

「先延ばしにしたくなる気持ちは私にもわかるわ。答えを知るって……怖いものね」

 私が今じゃなくてもいいと言っているのに、なんで静がそんなに頑なに今答えを言わせようとするんだろうとも思った。だけど、静の言っていることも確かにその通りで、私はヴェル君に好きじゃないと言われるのが怖いと思っていた。私の勘違いだったと知ることが怖くて、先延ばしにしたいという気持ちも確かにあったからこそ、私は静の言葉を否定できずにいた。

「ヴェルくん」

 答えを促すように、催促するように、静がヴェル君の名前を呼んだ。
 ねぇ、なんで私は今じゃなくていいって言ったのに、静が答えるときを決めるの?
 ねえ、なんで静がヴェル君の傍に立っているの?
 ねえ、なんでそんなに…………笑っているの?

「……雪ちゃんの告白に、答えてあげて」
「――――っ」

 まるで、私だけ取り残されているような感覚だった。私とヴェル君の問題のはずなのに、なんでだろう、私とヴェル君と静の問題にすり替わっている様に感じてしまった。なんで私とヴェル君の事に静がこんなにも干渉してくるのか分からなかった。
 だけど、あんなに私とヴェル君の仲を取り持とうと尽力してくれた静に、隠れて告白して、隠れて答えを貰おうと思うのはおかしい事なのかもしれないとも思った。協力してくれたんだから、最後まで見届ける義務があると言われてしまえばそれまでだとも思った。

「雪、ちゃん……俺は……」

 さっき、ヴェル君とはいい雰囲気になった。だから、きっと、ヴェル君は照れているだけなんだろう。そりゃそうだよね。だって、色恋沙汰を他人に見られるって、恥ずかしさあるもんね。
 そんな風に前向きに考えているのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう。どうしてこんなにズキズキとした痛みを感じるの? 息苦しいような、心臓がギューッと締め付けられるような、そんな苦しさを感じるのはなぜ?

「俺は――――」

 ああ。聞きたくない。ヴェル君の言葉を聞きたくないっ。
 そう思ってしまったのは、なんでだろう。何かを勘付いていたのは、いつからだろう。
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