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第2章【交わる二人の歯車】

14罪 在りし日の過去を垣間見よ・1⑫

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「それがたぶん、石碑に封じられていた魔力だと思うよ」
「……これ、が」

 ヴェル君の言葉を聞いて、私は自分の両手を見つめた。目に見えて魔力が見えるわけじゃないけれど、なんとなく存在を感じる。温かくて、力強くて、頼りになるような力。だけど、その存在感はまだまだ小さく感じた。

「他の石碑を回って記憶と魔力を取り戻していけばもっとしっかりと感じられるようになると思うよ。それに、戦う事だってできるようになるはず」
「――うん、そうだね。それが目的だったんだもん」

 戦えるようになってくれないと困る。私はヴェル君の言葉に大きく頷きかえすと、力強く呟いた。確かに前世の記憶や魔力を取り戻すのは大事なことだ。避けては通れない事だ。だけど、私たちが一番重要で、一番優先しているのは“戦えるようになる事”なのだから。

「……ねえ、真兄さん。さっきから様子が変よ? どうしたの?」
「……本当になんでもない」
「本当に?」
「ああ」

 明らかに様子がおかしい真兄に、心配をする静。二人の様子を見ていて、私も若干不安を感じた。何でもないと言っているけど、本当に真兄は大丈夫なのか、凄く心配だ。
 けれど、本人が大丈夫と言っているんだから、私たちにはどうすることもできない。無理に聞き出すわけにもいかないし。

「何とも言えない内容だっただけだ。本当に大丈夫だから」
「……それなら、いいのだけれど……」

 大丈夫だとはっきりと言い切る真兄に、やはり信じ切れていない静。私も静と同じだからよくわかる。歯切れ悪く呟きながら、真兄の腕をぎゅっと掴む静の表情は心配の色でいっぱいだった。

「話す気になったら話してね?」
「……ああ」

 私の念を押す言葉に真兄は微妙な間を開けてから小さく頷いてくれた。果たして話してくれるかは分からない。だけど、もしかしたら静にだけはいつか話してくれるかもしれない。

「……ふえっくしょん!」
「……かっこつかないわね、雪ちゃん」

 大きなくしゃみをした私に静が笑いかけてくれた。確かに凄くカッコいい事を真兄に言ったはずなのに、その直後にこのくしゃみじゃかっこつかない。少しだけしょぼんとした。

「ああ! 流石に寒かったよね!」

 鼻をすすって体を震わせる姿を見て、ヴェル君が慌てたような声を上げた。けれど、こんな場所でお風呂なんて入れるわけもなく、冷え切った体を温める方法なんて思いつかなかった。

「しょ……しょうがないよ」
「今、冷え切った体あっためてあげるね」
「……え?」

 空元気を浮かべようとしてもさすがに寒すぎて無理であった。私は苦笑を浮かべたが、ヴェル君の“あっためてあげる”という言葉に素っ頓狂な声を上げた。
 え? どうやって? そんな素朴な疑問が浮かんだのは、きっと私だけじゃないはずだ。
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