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第2章【交わる二人の歯車】

14罪 在りし日の過去を垣間見よ・1⑧

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 道のりはそう険しいものではなかったと思う。雪が降っていて足場が少し悪かったくらいで、私も静も支えてもらっていたからか、そんなに労力を割かずに石碑まで辿り着くことができた。
 雪山の奥も奥。山を登り森を進み、たどり着いた場所は開けた場所だった。澄んだ泉が円形に広がり、その中央に石碑がぽつんと存在していた。雪山のはずなのに、泉の水は凍っていなくて、不思議な感覚を覚えた。

「ここ、が……?」
「そう、ここが石碑。みんなの前世を思い出す場所」

 呟いた私の声はかすれていた。それほど神秘的で息を呑む雰囲気があった。
 私の言葉を肯定するように告げたヴェル君の言葉に、私はごくりと息を呑み静と真兄へと視線を向けた。

「覚悟は出来ているわ」
「ああ、俺も……いつでも構わない」

 そう答える二人に、私は小さく頷きかえして同じ考えだという事を示した。
 石碑を使って前世の記憶を思い出すため、どういう行動をすればいいのか。それを私たちは知らないはずだった。そう、知らないはずなのに不思議と脳裏にはどういう手順を踏めばいいのかという事が自然と流れてきた。
 その感覚は、第三者の映像を脳裏に流されるような不思議な感じだ。

「……雪ちゃん?」

 私は無意識に泉に向かって歩きはじめていたみたいだ。ヴェル君の声で気付いた。けれど、今更止まることは出来なかった。これは、私たちが記憶を取り戻すための必要な行動だ。

「大丈夫。いって……くるね」

 一瞬だけ振り返ってヴェル君を見ると、私はにっこりと微笑みを浮かべた。
 どんな記憶がよみがえるかは分からない。辛い記憶かもしれないし、楽しい記憶かもしれないし、悲しい記憶かもしれない。でも、それは記憶を取り戻すまでは分からない“未定の未来”だ。
 怖がってばかりはいられないし、怖いからってここで断念したらここまで来た意味がない。記憶を取り戻すって豪語したのに、言い出しっぺが“やっぱり無理です”なんて言えるはずがない。まずは私が行動に出さないと、きっと誰もついてこない。
 私が……やらないと。

「雪だけじゃない」
「私たちも一緒よ」

 意気込み、体に力がはいる私の肩に真兄と静がポンと手を置いた。二人の存在に、二人の言葉に、二人のぬくもりに、少しだけ心が救われたような気がした。
 そうだ、私は一人じゃない。静と真兄が居るんだ。そう思うと、凄く心強く感じた。
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