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第2章【交わる二人の歯車】

14罪 在りし日の過去を垣間見よ・1④

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「……え?」

 くぐるように簾の中から現れたゐ榛様とゑツ姫様を見て、私は驚きの声を上げた。いや、驚かないわけがない。そして、それはたぶん、私だけじゃないはずだ。
 ゐ榛様も、ゑツ姫様も、日本人特有の見た目――つまり、黒髪黒目という特徴を持っていたのだ。だけど、それだけだったらこの世界にもそういう見た目の人種がいると考えれば納得出来てしまう。私が驚いたのはそれだけじゃなかったからだ。

「雪ちゃんに……似てる……?」

 そっくりというわけではなかったけれど、血の繋がりがあるんじゃないかと言われたら否定できないような、そんな感じだった。私の両親だと言われたら、疑う人が居てもおかしくないくらい、私から見ても似ている。

「ゑレ妃っ」
「あ……えと、すみません。ゑレ妃様じゃ……ないんです、私……」

 昨日初めて会ったときの白卯ほどじゃないとしても、やっぱり驚き方が尋常じゃないゐ榛様とゑツ姫様に私は慌てて頭を左右に振って否定の言葉を口にした。
 そんなに私にそっくりなの? ゑレ妃さん……ううん、ゑレ妃は。
 自分の前世である人の名前に敬称をつけるのは、なんだかむず痒さを感じで私は撤回した。

「ああ、そう……だな。彼女は、すでに……亡くなっている」

 消え入りそうなくらい小さな声でゐ榛様が呟いた。懐かしむような、悲しむような、そんな何ともいえない感情を感じた。

「本当に……あの子にそっくりなのね、あなたは」
「え、と……」
「ああ、ごめんなさいね。雪さん……とおっしゃいましたっけ」

 戸惑う私にゑツ姫様は困ったような照れくさいような、そんな笑みを浮かべて私を真っすぐ見つめてきた。くしゃっとした、無理に作ったような笑顔を浮かべると。

「ゑレ妃は、わたくしの姪なのですよ。わたくしのせいで死なせてしまったようなものだったので……」
「ゑツ姫っ‼」
「あ……ごめんなさい、あなた」

 ゑツ姫様の発言の直後、それを咎めるように声を荒げたゐ榛様。その声がとても怖くて、私はびっくりした。だけど、その荒げた声はその話を他人にするなと怒っているような剣幕じゃなくて、どちらかといえば、それによってゑツ姫様が傷つくのを恐れてのことのようにも思えた。だって、叫んでる時の表情が、どことなく悲し気に見えたんだもん。だから、私はそう思った。もちろん、本当はそうじゃないかもしれないけど。それは本人たちにしか分からない事だ。
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