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第2章【交わる二人の歯車】

15罪 告白⑬

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「ヴェルくん? 雪ちゃーん? 大丈夫かしらー?」
「……っ!」
「……ぁ」

 唇が触れ合うまであと数センチ、という距離。その瞬間に聞こえた静の声に、ヴェル君は息を呑むように飛び起き、私も小さな声を漏らし第三者のお出ましに残念さを感じると同時に、少しだけホッとしていた。
 たぶん、あのまま顔が近づいていたらキス、をしていたと思う。だけど、私はキスをした経験がなかった。だからこそ、未知の行為でドキドキした半面少しだけ怖さもあった。

「雪ちゃん?」

 そう問いかけながら、静がゆっくりと私の部屋へと足を踏み入れた。布団に横になる私の姿と、そんな私を見下ろす距離の近いヴェル君を見て、静の目が丸く見開いたように見えた。けど、すぐににっこりとした笑顔を浮かべていて、目を丸くしていたのは気のせいだったのかな? とも思った。

「あ、静……心配、かけちゃったかな? ごめん」
「いいのよ。それより大丈夫?」
「うん……ヴェル君が心配して部屋まで付き添ってくれたから、問題ないよ」

 その言葉に、静の眉がぴくっと動いた気がした。だけど、静はいつもと同じ笑顔を浮かべていて、私を心配そうに見つめてくれている。
 やっぱり気のせいだよね。

「……そう、それなら良かったわ。私も心配していたのよ」
「ごめんね、心配かけちゃって……」

 二人に心配をかけてしまった事が申し訳なく思うと同時に、ということは真兄にも心配かけちゃったんだろうなって事に気付いた。

「あれ、真兄は?」
「真兄さんなら、まだ宴会場に居るわよ。私はヴェル君を迎えに来たから、もう少しだけ三人でこの後堪能するつもりよ」
「そっか……私のせいで台無しにしちゃったら申し訳なかったから……よかった」

 静の言葉に私はホッと胸を撫で下ろした。私が変に酔っぱらってしまったせいで、みんなが楽しめなかったとしたら、それは凄く申し訳ないし、本意じゃない。私抜きでも楽しんでもらえたら、それが一番うれしい事だ。

「それより、雪ちゃん……」
「うん?」
「ごめんなさいね……邪魔、してしまったようね」
「……えっ?」

 申し訳なさそうな静の表情と、その口調からして、なんとなく何の邪魔をしてしまった事を言っているのか理解できた。だからこそ、戸惑いと、恥ずかしさがふつふつと沸き上がり、困惑の声が漏れた。

「だって、告白……していたのでしょう?」
「え、なん……で」
「この雰囲気、なんとなくでも勘付くわよ」

 やっぱり気付かれていたか、と思った。聞かれていたのではないかとも思ったけれど、静からそういう風に言ってこないって事は、聞いていたのではなくて不可抗力で入室して感づいたという事なんだろう。
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