上 下
75 / 283
第2章【交わる二人の歯車】

15罪 告白⑪

しおりを挟む
「いや、だって……雪ちゃん一人にするの、ちょっと心配というか……」
「……いい、の?」
「うん。雪ちゃんが嫌じゃないなら、俺は全然かまわないよ」

 ふわりと微笑みを浮かべながら私の頭を撫でるようにポンポンとしてくれたヴェル君の言葉に、私は嬉しくて目じりを下げて破顔した。お酒の力だけじゃなく頬が熱くなる感じを覚えて、私は両手で頬を覆い隠した。
 やっぱり……熱い。

「あ、ありがとう、ヴェル君。それじゃあ……お願いしても、いいかな?」
「お安い御用だよ。ほら、手……危ないから捕まって」

 繋いだヴェル君の手は私の手よりも熱かった気がした。私は嬉しさと同時に恥ずかしさを感じて、ほんの少しだけうつむき気味にヴェル君を見た。彼も私と同じなのか、照れくさそうに笑って私を見てくれた。
 静がまだこの会場に居るから、ヴェル君も残るんじゃないかって密かに思っていたことは、彼には内緒だ。今は、私を心配してついて来てくれている事に感謝しようと思った。

* * *

「雪ちゃん、大丈夫? 部屋ついたよ」
「うー……ぐるぐるするー……」

 ヴェル君に支えられながら宛がわれた私の部屋に辿り着いた。言われるがままに視線を上げるも、目の前がぐるぐる回って気持ち悪い。

「部屋、入るよ?」
「うんー……いいよ……」
「おじゃまします……」

 別に宛がわれた私の部屋ってだけで、本当の私の部屋ってわけじゃないんだからそこまで気にしたり緊張したりする必要なんてないのに、ヴェル君は佇まいを正すように背筋を伸ばしながら私を連れて部屋の中へと入っていった。ヴェル君の緊張感が肌越しに伝わってくる気がして、少しだけ笑ってしまった。

「雪ちゃん?」
「あ、うん……ありが、とうね」
「横になれる?」
「うんー……たぶん、大丈夫―……」

 ヴェル君から離れ、支えのない状態で自分の部屋の中央にある布団に向けて歩きはじめる。その足取りは、まあ、千鳥足とまでは言わないけれどふらふらとしたものだった。
 たぶん、はたから見てるヴェル君はもの凄く心配しちゃうんじゃないかなとも思った。これは付き添ってもらったの失敗だったかな……?
 変に心配だけをかけてしまっているような気がして、申し訳なくも思った。こんな姿を見せるんだったら、ヴェル君には会場でまだまだ楽しんでもらっていた方が良かったんじゃないかな。

「ちょ……雪ちゃん⁉ 危ないよ⁉」
「ふえ?」

 がしっ‼ と、ヴェル君の叫び声が聞こえた次の瞬間、私の体は前のめりで止まっていた。ヴェル君に腰を抱き寄せられた状態のようで、彼との距離が近い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼馴染による寝取り性感マッサージ

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな幼馴染が迎えに来たお話。 今回はえっち多め、激しめのつもりです。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

【完結】令嬢が壁穴にハマったら、見習い騎士達に見つかっていいようにされてしまいました

雑煮
恋愛
おマヌケご令嬢が壁穴にハマったら、騎士たちにパンパンされました

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

処理中です...