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第2章【交わる二人の歯車】
15罪 告白⑪
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「いや、だって……雪ちゃん一人にするの、ちょっと心配というか……」
「……いい、の?」
「うん。雪ちゃんが嫌じゃないなら、俺は全然かまわないよ」
ふわりと微笑みを浮かべながら私の頭を撫でるようにポンポンとしてくれたヴェル君の言葉に、私は嬉しくて目じりを下げて破顔した。お酒の力だけじゃなく頬が熱くなる感じを覚えて、私は両手で頬を覆い隠した。
やっぱり……熱い。
「あ、ありがとう、ヴェル君。それじゃあ……お願いしても、いいかな?」
「お安い御用だよ。ほら、手……危ないから捕まって」
繋いだヴェル君の手は私の手よりも熱かった気がした。私は嬉しさと同時に恥ずかしさを感じて、ほんの少しだけうつむき気味にヴェル君を見た。彼も私と同じなのか、照れくさそうに笑って私を見てくれた。
静がまだこの会場に居るから、ヴェル君も残るんじゃないかって密かに思っていたことは、彼には内緒だ。今は、私を心配してついて来てくれている事に感謝しようと思った。
* * *
「雪ちゃん、大丈夫? 部屋ついたよ」
「うー……ぐるぐるするー……」
ヴェル君に支えられながら宛がわれた私の部屋に辿り着いた。言われるがままに視線を上げるも、目の前がぐるぐる回って気持ち悪い。
「部屋、入るよ?」
「うんー……いいよ……」
「おじゃまします……」
別に宛がわれた私の部屋ってだけで、本当の私の部屋ってわけじゃないんだからそこまで気にしたり緊張したりする必要なんてないのに、ヴェル君は佇まいを正すように背筋を伸ばしながら私を連れて部屋の中へと入っていった。ヴェル君の緊張感が肌越しに伝わってくる気がして、少しだけ笑ってしまった。
「雪ちゃん?」
「あ、うん……ありが、とうね」
「横になれる?」
「うんー……たぶん、大丈夫―……」
ヴェル君から離れ、支えのない状態で自分の部屋の中央にある布団に向けて歩きはじめる。その足取りは、まあ、千鳥足とまでは言わないけれどふらふらとしたものだった。
たぶん、はたから見てるヴェル君はもの凄く心配しちゃうんじゃないかなとも思った。これは付き添ってもらったの失敗だったかな……?
変に心配だけをかけてしまっているような気がして、申し訳なくも思った。こんな姿を見せるんだったら、ヴェル君には会場でまだまだ楽しんでもらっていた方が良かったんじゃないかな。
「ちょ……雪ちゃん⁉ 危ないよ⁉」
「ふえ?」
がしっ‼ と、ヴェル君の叫び声が聞こえた次の瞬間、私の体は前のめりで止まっていた。ヴェル君に腰を抱き寄せられた状態のようで、彼との距離が近い。
「……いい、の?」
「うん。雪ちゃんが嫌じゃないなら、俺は全然かまわないよ」
ふわりと微笑みを浮かべながら私の頭を撫でるようにポンポンとしてくれたヴェル君の言葉に、私は嬉しくて目じりを下げて破顔した。お酒の力だけじゃなく頬が熱くなる感じを覚えて、私は両手で頬を覆い隠した。
やっぱり……熱い。
「あ、ありがとう、ヴェル君。それじゃあ……お願いしても、いいかな?」
「お安い御用だよ。ほら、手……危ないから捕まって」
繋いだヴェル君の手は私の手よりも熱かった気がした。私は嬉しさと同時に恥ずかしさを感じて、ほんの少しだけうつむき気味にヴェル君を見た。彼も私と同じなのか、照れくさそうに笑って私を見てくれた。
静がまだこの会場に居るから、ヴェル君も残るんじゃないかって密かに思っていたことは、彼には内緒だ。今は、私を心配してついて来てくれている事に感謝しようと思った。
* * *
「雪ちゃん、大丈夫? 部屋ついたよ」
「うー……ぐるぐるするー……」
ヴェル君に支えられながら宛がわれた私の部屋に辿り着いた。言われるがままに視線を上げるも、目の前がぐるぐる回って気持ち悪い。
「部屋、入るよ?」
「うんー……いいよ……」
「おじゃまします……」
別に宛がわれた私の部屋ってだけで、本当の私の部屋ってわけじゃないんだからそこまで気にしたり緊張したりする必要なんてないのに、ヴェル君は佇まいを正すように背筋を伸ばしながら私を連れて部屋の中へと入っていった。ヴェル君の緊張感が肌越しに伝わってくる気がして、少しだけ笑ってしまった。
「雪ちゃん?」
「あ、うん……ありが、とうね」
「横になれる?」
「うんー……たぶん、大丈夫―……」
ヴェル君から離れ、支えのない状態で自分の部屋の中央にある布団に向けて歩きはじめる。その足取りは、まあ、千鳥足とまでは言わないけれどふらふらとしたものだった。
たぶん、はたから見てるヴェル君はもの凄く心配しちゃうんじゃないかなとも思った。これは付き添ってもらったの失敗だったかな……?
変に心配だけをかけてしまっているような気がして、申し訳なくも思った。こんな姿を見せるんだったら、ヴェル君には会場でまだまだ楽しんでもらっていた方が良かったんじゃないかな。
「ちょ……雪ちゃん⁉ 危ないよ⁉」
「ふえ?」
がしっ‼ と、ヴェル君の叫び声が聞こえた次の瞬間、私の体は前のめりで止まっていた。ヴェル君に腰を抱き寄せられた状態のようで、彼との距離が近い。
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