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第2章【交わる二人の歯車】
14罪 在りし日の過去を垣間見よ・1⑦
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「真兄さん、手を貸してもらってもいいかしら?」
「ああ」
静はそう言いながら真兄の方へと歩みを向けていった。真兄は口元を緩め、分かりにくい笑みを浮かべながら静の手を取った。その姿を見て、真兄良かったねと思う反面、静の態度が少しだけ怖くて、怒らせることでもしちゃったかな? と不安になった。
だけど、怒らせるようなことをした原因なんて、いくら考えても分からなくて、ただたんに虫のいどころが悪かったのかなと思う事にした。分からないことを延々と考え続けてても、疲れるだけだし、この場の空気が悪くなるだけだ。
「ヴェル君……ごめん、ね?」
「え? なんで?」
「だって……さっき、大丈夫だって言ったのに、結局手を借りちゃったし……」
もごもごと、私は申し訳なさでいっぱいになりながら答えた。本当は大丈夫じゃなかったし、虚勢を張っていただけだったけど、一度大丈夫だと言ってしまった手前、それを撤回して手を借りることになったのは、ヴェル君に申し訳なかったなと思った。だって、嘘をついたようなものじゃないか。
「別に、そんな事気にしてないよ。というか、雪ちゃんの事だから大丈夫じゃないのに大丈夫って言っちゃったんでしょ」
「な、なんでわかるの⁉」
「そりゃ、さすがにわかるよ」
私の驚きっぷりにヴェル君は大きく笑った。そして、私の頭にぽんぽんと撫でるように手を置くと、にっこりと笑みを浮かべて。
「雪ちゃんに頼られるのは、俺、嬉しいよ?」
そんな事を言われたら、私の頬はリンゴみたいに真っ赤になっていることだろう。私は両手で顔を覆い隠すように添え、小さく「うー……」と声を漏らした。
その様子を見て、ヴェル君は余計にクスクスと笑うだけだった。
「ほら、そんなじゃれ合っていないで、先に進みましょう?」
そんな私たちに後ろから静が声をかけた。ほんの少しだけ声色がイライラしている様に聞こえたのは私の気のせいだろうか?
「あ……ああ、ごめん。そうだね。それじゃ……石碑まで、案内するよ」
居心地悪そうに呟きながら、ヴェル君は私の手を握ると石碑へと向かって歩みを進めるのだった。ほんの少し、私の手を握るヴェル君の手に力が入っている様に感じたけれど、私は同じようにギュッと彼の手を握り返すことで気にしないようにした。
私と同じように、ドキドキしてくれてるんだったら嬉しいな……なんてひそかに期待しながら。
「ああ」
静はそう言いながら真兄の方へと歩みを向けていった。真兄は口元を緩め、分かりにくい笑みを浮かべながら静の手を取った。その姿を見て、真兄良かったねと思う反面、静の態度が少しだけ怖くて、怒らせることでもしちゃったかな? と不安になった。
だけど、怒らせるようなことをした原因なんて、いくら考えても分からなくて、ただたんに虫のいどころが悪かったのかなと思う事にした。分からないことを延々と考え続けてても、疲れるだけだし、この場の空気が悪くなるだけだ。
「ヴェル君……ごめん、ね?」
「え? なんで?」
「だって……さっき、大丈夫だって言ったのに、結局手を借りちゃったし……」
もごもごと、私は申し訳なさでいっぱいになりながら答えた。本当は大丈夫じゃなかったし、虚勢を張っていただけだったけど、一度大丈夫だと言ってしまった手前、それを撤回して手を借りることになったのは、ヴェル君に申し訳なかったなと思った。だって、嘘をついたようなものじゃないか。
「別に、そんな事気にしてないよ。というか、雪ちゃんの事だから大丈夫じゃないのに大丈夫って言っちゃったんでしょ」
「な、なんでわかるの⁉」
「そりゃ、さすがにわかるよ」
私の驚きっぷりにヴェル君は大きく笑った。そして、私の頭にぽんぽんと撫でるように手を置くと、にっこりと笑みを浮かべて。
「雪ちゃんに頼られるのは、俺、嬉しいよ?」
そんな事を言われたら、私の頬はリンゴみたいに真っ赤になっていることだろう。私は両手で顔を覆い隠すように添え、小さく「うー……」と声を漏らした。
その様子を見て、ヴェル君は余計にクスクスと笑うだけだった。
「ほら、そんなじゃれ合っていないで、先に進みましょう?」
そんな私たちに後ろから静が声をかけた。ほんの少しだけ声色がイライラしている様に聞こえたのは私の気のせいだろうか?
「あ……ああ、ごめん。そうだね。それじゃ……石碑まで、案内するよ」
居心地悪そうに呟きながら、ヴェル君は私の手を握ると石碑へと向かって歩みを進めるのだった。ほんの少し、私の手を握るヴェル君の手に力が入っている様に感じたけれど、私は同じようにギュッと彼の手を握り返すことで気にしないようにした。
私と同じように、ドキドキしてくれてるんだったら嬉しいな……なんてひそかに期待しながら。
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