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第2章【交わる二人の歯車】
6罪 静の協力②
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「卯ノ国まであと少しだから頑張ろう」
歩いてきた道は少しずつ険しくなり、視線の先も先……遠くに見える山の頂上が白く見えるのは、ヴェル君が説明してくれたように雪山が近いからだろう。
それはつまり、卯ノ国が近いという証拠でヴェル君の言葉が信憑性を帯びてきた。もう少し……その事に気付くと、少しずつ緊張感を帯びていった。
「もうすぐ……なんだね」
「……みたいだな。うっすらと寒くなってきたような気がする」
「真兄さんの言う通り、確かに涼しくなってきたわよね」
魔国で暮らしやすいようにと渡されたネックレスは魔国の空気に適応できるように調整されていたのか、神国である卯ノ国に近づいてきて感じた寒さはしっかりと肌で感じた。
ものすごく寒いというわけではないが、肌寒いというか少しだけ体温を上げようと体が震える感覚を覚えた。
「足元もどんどん険しくなってきてるから気を付けろよ?」
「ええ、そうね、真兄さんありがとう」
「ほんと、躓いたら痛そう……っわぁ⁉」
「ほら、言ってる傍から雪ちゃんは危なっかしいなあ」
真兄の忠告を貰っていたのにもかかわらず、地面から盛り上がっていたほんの小さな木の根っこにつま先をぶつけた。そのまま倒れそうになる私を、慌てて抱き留めてくれたのは──
「あ、ありがとう……ヴェル君」
恥ずかしくて顔が熱くなった。今にも顔から火が出そうなくらい熱く感じる。真正面から彼の顔を見ることが出来ず照れながらお礼を口にし一人で立とうとするが、ヴェル君は私を話してくれなかった。
「ヴェ、ヴェル君⁇」
「なんだか雪ちゃん危なっかしいから、ほら……手」
私がしっかりと自分の足で真っすぐ立てていることを確認すると、ヴェル君は私を抱き留めた腕を離した。そして「ん」と小さく声を出すように手を差し伸べてくれた。それはつまり、手を繋いでいこう……という事の様で、皆が見ているという事実も相まってもの凄く恥ずかしかった。
「だ、だだだ大丈夫だよ⁉」
「そう言いながら、今さっきこけかけたのは誰だったかな?」
「う……」
「ほら、手」
「……う、うん。ありがとう……」
言われた言葉全部事実で、何も言い返せなかった。ヴェル君の手を取るしかなくて……もの凄く恥ずかしい。二人だけだったら、こんなに恥ずかしくないのにっ!
いや……二人っきりっていうのも、それはそれで恥ずかしいのかな⁉ ああ、もう、どっちにしろ恥ずかしいなら、なるようになるしかないっ……‼
「いつの間に二人ともそんなに仲良くなったの?」
「あ、うん。ほら……一緒に旅するわけだし、必要な物とか大丈夫か心配してくれていろいろ話したからさ」
だから、仲良くなったんだと私は静に笑い返した。その私の言葉に静は「ふーん」と軽い返事だけを返し、私とヴェル君を交互に見つめた。
「雪ちゃん、ヴェルくんの事好きになっちゃったの?」
「っ⁉ し、静っ⁉」
私の耳に口を寄せ、ぼそぼそっと私にしか聞こえないような小さな声で静は問いかけてきた。彼女の勘の良さに私はただただ驚くしかなかった。だって、彼を好きだと自覚したのは昨夜で、その事を私は静に話してもいない。
「見てれば分かるわよ。協力、してあげようか?」
「え?」
「ヴェルくんの好きなタイプとか、好きな物とか、そういうの知りたいでしょ?」
「そりゃ……気になる、けど」
ヴェル君の事について、知りたくないなんてわけがない。どんな些細な事でもいいから知りたいと思うのが、きっと惚れた弱みだろう。だけど、真っ向から彼に「好きなタイプは?」とか「好きな物ってなに?」とか聞けるわけがない。そんなの聞いたら「私は貴方の事が好きです」と告白しているようなものだ。
確かに、彼は私の事を心配してくれて、凄く気を使ってくれる。でも、彼が私と同じように好きという感情を持ってくれているかなんて分からない。彼も私の事が好きだって確証があるんだったら聞けたかもしれないけれど……そういうわけじゃない。
歩いてきた道は少しずつ険しくなり、視線の先も先……遠くに見える山の頂上が白く見えるのは、ヴェル君が説明してくれたように雪山が近いからだろう。
それはつまり、卯ノ国が近いという証拠でヴェル君の言葉が信憑性を帯びてきた。もう少し……その事に気付くと、少しずつ緊張感を帯びていった。
「もうすぐ……なんだね」
「……みたいだな。うっすらと寒くなってきたような気がする」
「真兄さんの言う通り、確かに涼しくなってきたわよね」
魔国で暮らしやすいようにと渡されたネックレスは魔国の空気に適応できるように調整されていたのか、神国である卯ノ国に近づいてきて感じた寒さはしっかりと肌で感じた。
ものすごく寒いというわけではないが、肌寒いというか少しだけ体温を上げようと体が震える感覚を覚えた。
「足元もどんどん険しくなってきてるから気を付けろよ?」
「ええ、そうね、真兄さんありがとう」
「ほんと、躓いたら痛そう……っわぁ⁉」
「ほら、言ってる傍から雪ちゃんは危なっかしいなあ」
真兄の忠告を貰っていたのにもかかわらず、地面から盛り上がっていたほんの小さな木の根っこにつま先をぶつけた。そのまま倒れそうになる私を、慌てて抱き留めてくれたのは──
「あ、ありがとう……ヴェル君」
恥ずかしくて顔が熱くなった。今にも顔から火が出そうなくらい熱く感じる。真正面から彼の顔を見ることが出来ず照れながらお礼を口にし一人で立とうとするが、ヴェル君は私を話してくれなかった。
「ヴェ、ヴェル君⁇」
「なんだか雪ちゃん危なっかしいから、ほら……手」
私がしっかりと自分の足で真っすぐ立てていることを確認すると、ヴェル君は私を抱き留めた腕を離した。そして「ん」と小さく声を出すように手を差し伸べてくれた。それはつまり、手を繋いでいこう……という事の様で、皆が見ているという事実も相まってもの凄く恥ずかしかった。
「だ、だだだ大丈夫だよ⁉」
「そう言いながら、今さっきこけかけたのは誰だったかな?」
「う……」
「ほら、手」
「……う、うん。ありがとう……」
言われた言葉全部事実で、何も言い返せなかった。ヴェル君の手を取るしかなくて……もの凄く恥ずかしい。二人だけだったら、こんなに恥ずかしくないのにっ!
いや……二人っきりっていうのも、それはそれで恥ずかしいのかな⁉ ああ、もう、どっちにしろ恥ずかしいなら、なるようになるしかないっ……‼
「いつの間に二人ともそんなに仲良くなったの?」
「あ、うん。ほら……一緒に旅するわけだし、必要な物とか大丈夫か心配してくれていろいろ話したからさ」
だから、仲良くなったんだと私は静に笑い返した。その私の言葉に静は「ふーん」と軽い返事だけを返し、私とヴェル君を交互に見つめた。
「雪ちゃん、ヴェルくんの事好きになっちゃったの?」
「っ⁉ し、静っ⁉」
私の耳に口を寄せ、ぼそぼそっと私にしか聞こえないような小さな声で静は問いかけてきた。彼女の勘の良さに私はただただ驚くしかなかった。だって、彼を好きだと自覚したのは昨夜で、その事を私は静に話してもいない。
「見てれば分かるわよ。協力、してあげようか?」
「え?」
「ヴェルくんの好きなタイプとか、好きな物とか、そういうの知りたいでしょ?」
「そりゃ……気になる、けど」
ヴェル君の事について、知りたくないなんてわけがない。どんな些細な事でもいいから知りたいと思うのが、きっと惚れた弱みだろう。だけど、真っ向から彼に「好きなタイプは?」とか「好きな物ってなに?」とか聞けるわけがない。そんなの聞いたら「私は貴方の事が好きです」と告白しているようなものだ。
確かに、彼は私の事を心配してくれて、凄く気を使ってくれる。でも、彼が私と同じように好きという感情を持ってくれているかなんて分からない。彼も私の事が好きだって確証があるんだったら聞けたかもしれないけれど……そういうわけじゃない。
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