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第1章【はじまりのモノガタリ】
2罪 七つの大罪(グリモワール)②
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「おそらくだけど、あんた達は魔国の王、魔王デモンから生み出された七つの大罪の生まれ変わりだと思うんだよね。どれか……まではちょっと俺には分からないけど」
そんな風にヴェル君は笑った。七つの大罪だと思う根拠を聞いても、彼は「そう感じた」とか「魂がビビッときた」としか言わず、結局のところは分からなかった。分かるような装置でもあるんだろうか? とも思ったが、この世界の事、この世界の物、聞いたところできっと私には理解が出来ないだろうから納得するしかないな、と肩をすくめた。
そして、私は彼の言葉を、話の続きを待った。私達が魔国の関係者たる所以はわかった。分かったけれど、神国の人達が私達を捕まえようとしている理由が分からない。
「私達が七つの大罪かもしれないことは、まあ納得するけど。私達が探されてる理由って……?」
「うん、それなんだけどね……魔国は天界しいては人界の他の国と停戦協定を結んでいてね」
「停戦協定……? 昔は争ってたの?」
「まあ、かなり昔にいろいろあってね……その当時に問題を起こして死んだ者が一人で暴走してやった事だから、天界も人界の国も与り知らぬ事だったらしくてね。まあ、納得しない者も勿論いたけど、争っても無益だからと停戦協定を結んだんだよ」
そう話すヴェル君の目が、とても遠くを見つめているようだった。他人事に話しているはずなのに、そう思えなかった。まるで今目の前で起きている出来事を話しているような、そんな傷ついた何かを感じ取れた。もちろん、私は事情を知らないし、過去の話なんて知る由もない。まして私はここに来たばかりだ。彼の事も知っていることは少ない。片手くらいかもしれない。
だから、感じた何かは勘違いかもしれない。かもしれないけど……なんとなく気にかかってしまった。
「国と国、世界と世界……何かしらいざこざはあるとは思うけれど……なかなかに辛い何かがあったのね……」
まるで私の気持ちを代弁するように、ぽつりと呟いたのは静だった。同情するような、心配するような、そんな熱い視線を彼に向けている姿が瞳に飛び込んできた。上目使いでヴェル君を見つめる静の姿に、私の事を見て、私の事を心配してくれた彼もやはり静に靡くんじゃないかと無意識に考えた。そのことに気付いて私はハッとした。
彼の気持ちは彼が決めることで、そのことで私が何かを思うなんておこがましい、と。
「まあ、それで停戦協定を結んでるから、天界から“七つの大罪を召喚するから協力するように”って通達が来てね。魔国の王が不在の状態で長い月日が経ってしまったから、王を見つけるか、見つからない場合は新しく王として宛がうために関係者である七つの大罪を召喚しようっていう事らしくてね」
苦笑しながら呟くヴェル君は最後にこう言った。
「俺達はいずれその時が来れば七つの大罪は転生してくるだろうから急ぐ必要はないって言ったんだけどね……」
そして、ため息交じりに肩を竦めた。その言葉からして、魔国の者たちは賛同していなかったことが伺えた。つまり、賛同していないのにもかかわらず天界は七つの大罪かもしれない私達を召喚した……という事か。なんとも迷惑な話である。
「そんなわけないのにね」
「え?」
ぼそっと聞こえたヴェル君の言葉に私は驚いた。そんなわけがないって、何に対して? 転生してくるって話? それとも召喚がそんなわけない? それとも……召喚する理由がそんなわけがない?
わけがわからず、疑問がぐるぐると脳裏を駆け巡る。けれど、ヴェル君は私の疑問の声に答えてくれることはなかった。なんでもないよ、とはぐらかされるだけだった。
「まあ、そういう事で、あんた達が召喚されてくるのが分かっていたし、天界や神国があんた達を探していることも知っていた」
「だが、それだったら別に俺達を捕まえられないようにと匿ってくれる必要はないんじゃないか?」
真兄の言う通り、確かに魔国に連れていかれる理由がない。ましてや協力を促されている協定相手から私たちを隠そうだなんて……まるで何かから私たちを守ろうとしているみたいで疑問を覚えた。
そんな風にヴェル君は笑った。七つの大罪だと思う根拠を聞いても、彼は「そう感じた」とか「魂がビビッときた」としか言わず、結局のところは分からなかった。分かるような装置でもあるんだろうか? とも思ったが、この世界の事、この世界の物、聞いたところできっと私には理解が出来ないだろうから納得するしかないな、と肩をすくめた。
そして、私は彼の言葉を、話の続きを待った。私達が魔国の関係者たる所以はわかった。分かったけれど、神国の人達が私達を捕まえようとしている理由が分からない。
「私達が七つの大罪かもしれないことは、まあ納得するけど。私達が探されてる理由って……?」
「うん、それなんだけどね……魔国は天界しいては人界の他の国と停戦協定を結んでいてね」
「停戦協定……? 昔は争ってたの?」
「まあ、かなり昔にいろいろあってね……その当時に問題を起こして死んだ者が一人で暴走してやった事だから、天界も人界の国も与り知らぬ事だったらしくてね。まあ、納得しない者も勿論いたけど、争っても無益だからと停戦協定を結んだんだよ」
そう話すヴェル君の目が、とても遠くを見つめているようだった。他人事に話しているはずなのに、そう思えなかった。まるで今目の前で起きている出来事を話しているような、そんな傷ついた何かを感じ取れた。もちろん、私は事情を知らないし、過去の話なんて知る由もない。まして私はここに来たばかりだ。彼の事も知っていることは少ない。片手くらいかもしれない。
だから、感じた何かは勘違いかもしれない。かもしれないけど……なんとなく気にかかってしまった。
「国と国、世界と世界……何かしらいざこざはあるとは思うけれど……なかなかに辛い何かがあったのね……」
まるで私の気持ちを代弁するように、ぽつりと呟いたのは静だった。同情するような、心配するような、そんな熱い視線を彼に向けている姿が瞳に飛び込んできた。上目使いでヴェル君を見つめる静の姿に、私の事を見て、私の事を心配してくれた彼もやはり静に靡くんじゃないかと無意識に考えた。そのことに気付いて私はハッとした。
彼の気持ちは彼が決めることで、そのことで私が何かを思うなんておこがましい、と。
「まあ、それで停戦協定を結んでるから、天界から“七つの大罪を召喚するから協力するように”って通達が来てね。魔国の王が不在の状態で長い月日が経ってしまったから、王を見つけるか、見つからない場合は新しく王として宛がうために関係者である七つの大罪を召喚しようっていう事らしくてね」
苦笑しながら呟くヴェル君は最後にこう言った。
「俺達はいずれその時が来れば七つの大罪は転生してくるだろうから急ぐ必要はないって言ったんだけどね……」
そして、ため息交じりに肩を竦めた。その言葉からして、魔国の者たちは賛同していなかったことが伺えた。つまり、賛同していないのにもかかわらず天界は七つの大罪かもしれない私達を召喚した……という事か。なんとも迷惑な話である。
「そんなわけないのにね」
「え?」
ぼそっと聞こえたヴェル君の言葉に私は驚いた。そんなわけがないって、何に対して? 転生してくるって話? それとも召喚がそんなわけない? それとも……召喚する理由がそんなわけがない?
わけがわからず、疑問がぐるぐると脳裏を駆け巡る。けれど、ヴェル君は私の疑問の声に答えてくれることはなかった。なんでもないよ、とはぐらかされるだけだった。
「まあ、そういう事で、あんた達が召喚されてくるのが分かっていたし、天界や神国があんた達を探していることも知っていた」
「だが、それだったら別に俺達を捕まえられないようにと匿ってくれる必要はないんじゃないか?」
真兄の言う通り、確かに魔国に連れていかれる理由がない。ましてや協力を促されている協定相手から私たちを隠そうだなんて……まるで何かから私たちを守ろうとしているみたいで疑問を覚えた。
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