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第1章【はじまりのモノガタリ】
5罪 雪の恋心③
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「でも、雪ちゃんは静ちゃんに自分から弱音を吐きにいけないでしょ?」
「……っ」
「静ちゃんが気付いてくれれば、彼女の言葉を肯定してようやく弱音を吐けるかもしれないけど……」
そうじゃなければ、とヴェル君は言った。そして、その予想は“正解”だった。
私は自分から静に「辛い」と「助けて」と言えない。静だって辛くて助けてほしくて真兄に頼っているのに、私からの弱音を彼女に押し付けるなんて出来ない。
「……は、はは……」
本当に、御見通しで笑えない。あっけらかんと笑おうと思っても、喉から出てくる声は震えてしまう。弱い弱い自分が顔を出す。
まだ知り合って間もないはずなのに、なんでヴェル君にはこんなにも筒抜けなんだろうかと私は思った。そんなに私は顔に出やすいのか? と疑問が脳裏を過る。
「……ヴェル君は、どうしてそんなに分かってくれるの?」
だからか、素直な疑問が口をついて出た。ずっと我慢すればいいと思っていた。別に誰かに相談したり話を聞いてもらったりしないと死ぬわけでもない。だから、一人抱え込んで乗り越えていけばいいんだと思っていた。気付いてくれないなら言わなくていい。変に心配をかける必要はない、と。
なのに、ヴェル君はそんな私に気付いてくれた。抱え込もうとする私を理解して歩み寄ってくれた。
「……うん、なんで……だろうね」
ヴェル君にもなんで私を分かってくれるのか、理由は分からなかったようだ。困ったように笑って、ぽりぽりと頬を掻く姿を目に留まる。
「あえて言うなら、雪ちゃんが目に留まるから……かな?」
「目に留まるから⁇」
「うん。雪ちゃんを見てるから分かるんじゃないかなって俺は思うよ」
見て居なければ気付けないような些細な私の信号に、ヴェル君が気付いてくれたという事だろうか。そんな事が、そんな言葉が、私にはとても嬉しかった。
ヴェル君が“私の事”を見てくれている、という事実が凄く嬉しかった。静でもなく私を見てくれている。
「……気付いてくれて、ありがとう」
「……っ」
嬉しくて嬉しくて、私はうるんだ瞳を拭うことなくにっこりと微笑んだ。そんな私を見て、ヴェル君が息を呑んだのが分かった。
どうしたんだろう? と私は首を傾げて、ヴェル君の様子を伺った。
「……な、なんでもないよ」
「ほんと?」
「うん。本当になんでもないから‼」
わたわたと慌てる姿に、私は本当なのか疑問に思った。何でもないように見えないからこその問いかけだが、ヴェル君は両手を前に突き出してバタバタと手を振りながら肯定してきた。
彼がなんでもないと言うのなら、きっとそうなのだろうと思い私は小さく「ならいいけど……」と呟いた。その言葉を告げた直後、ヴェル君がホッと胸を撫で下ろしたのが見えた気がした。
「本当になんでもないよ、雪ちゃん」
優しい声色で呟き、ヴェル君はぽんっと私の頭に手を乗せた。そして、ゆっくりと頭を撫でてくれた。その優しい手に、声に、私は心臓がドキドキし始めたことに気付いた。
嬉しい反面、ちょっと恥ずかしい。
「……う、ん」
「俺で良ければいつでも弱音吐いていいからね。いつだって聞くから」
「……うん」
「我慢なんてする必要ないからね、雪ちゃん。俺は雪ちゃんの味方だから」
「……うんっ」
優しい声で、そんな優しい言葉を投げかけてくれる。優しい手付きで私の頭を撫でてくれる。彼のそんな優しさが胸に痛いほど染み渡った。うるんでいた瞳から涙が溢れ出してくる。
「……っ」
「静ちゃんが気付いてくれれば、彼女の言葉を肯定してようやく弱音を吐けるかもしれないけど……」
そうじゃなければ、とヴェル君は言った。そして、その予想は“正解”だった。
私は自分から静に「辛い」と「助けて」と言えない。静だって辛くて助けてほしくて真兄に頼っているのに、私からの弱音を彼女に押し付けるなんて出来ない。
「……は、はは……」
本当に、御見通しで笑えない。あっけらかんと笑おうと思っても、喉から出てくる声は震えてしまう。弱い弱い自分が顔を出す。
まだ知り合って間もないはずなのに、なんでヴェル君にはこんなにも筒抜けなんだろうかと私は思った。そんなに私は顔に出やすいのか? と疑問が脳裏を過る。
「……ヴェル君は、どうしてそんなに分かってくれるの?」
だからか、素直な疑問が口をついて出た。ずっと我慢すればいいと思っていた。別に誰かに相談したり話を聞いてもらったりしないと死ぬわけでもない。だから、一人抱え込んで乗り越えていけばいいんだと思っていた。気付いてくれないなら言わなくていい。変に心配をかける必要はない、と。
なのに、ヴェル君はそんな私に気付いてくれた。抱え込もうとする私を理解して歩み寄ってくれた。
「……うん、なんで……だろうね」
ヴェル君にもなんで私を分かってくれるのか、理由は分からなかったようだ。困ったように笑って、ぽりぽりと頬を掻く姿を目に留まる。
「あえて言うなら、雪ちゃんが目に留まるから……かな?」
「目に留まるから⁇」
「うん。雪ちゃんを見てるから分かるんじゃないかなって俺は思うよ」
見て居なければ気付けないような些細な私の信号に、ヴェル君が気付いてくれたという事だろうか。そんな事が、そんな言葉が、私にはとても嬉しかった。
ヴェル君が“私の事”を見てくれている、という事実が凄く嬉しかった。静でもなく私を見てくれている。
「……気付いてくれて、ありがとう」
「……っ」
嬉しくて嬉しくて、私はうるんだ瞳を拭うことなくにっこりと微笑んだ。そんな私を見て、ヴェル君が息を呑んだのが分かった。
どうしたんだろう? と私は首を傾げて、ヴェル君の様子を伺った。
「……な、なんでもないよ」
「ほんと?」
「うん。本当になんでもないから‼」
わたわたと慌てる姿に、私は本当なのか疑問に思った。何でもないように見えないからこその問いかけだが、ヴェル君は両手を前に突き出してバタバタと手を振りながら肯定してきた。
彼がなんでもないと言うのなら、きっとそうなのだろうと思い私は小さく「ならいいけど……」と呟いた。その言葉を告げた直後、ヴェル君がホッと胸を撫で下ろしたのが見えた気がした。
「本当になんでもないよ、雪ちゃん」
優しい声色で呟き、ヴェル君はぽんっと私の頭に手を乗せた。そして、ゆっくりと頭を撫でてくれた。その優しい手に、声に、私は心臓がドキドキし始めたことに気付いた。
嬉しい反面、ちょっと恥ずかしい。
「……う、ん」
「俺で良ければいつでも弱音吐いていいからね。いつだって聞くから」
「……うん」
「我慢なんてする必要ないからね、雪ちゃん。俺は雪ちゃんの味方だから」
「……うんっ」
優しい声で、そんな優しい言葉を投げかけてくれる。優しい手付きで私の頭を撫でてくれる。彼のそんな優しさが胸に痛いほど染み渡った。うるんでいた瞳から涙が溢れ出してくる。
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