親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

文字の大きさ
上 下
243 / 244
第10章 過去の執念と秀才の破滅

131・5時間目 ひとりぼっち達

しおりを挟む
 物心ついたとき、私は地獄のど真ん中にいた。

 母親が役目を全うしていない生活、極限状態の空腹に寂しさ。

 静寂が続きすぎる部屋で私は六年間生きてきた。

 でも、義母のおかげで私は「宮浦」と「カナ」というふたつの名前に憧れていた「普通」の生活を貰った。

 義父との間に子供が出来ず、寂しさを埋めるために私を見つけてくれた彼女に本当に感謝しかなかった。

そんな私が彼と出会ったのは、私が小学校に転校してからだった。

 もちろん、彼とは裕太君のことだ。裕太君とはこれから長い付き合いになる。本当に付き合えたらどれだけ嬉しかったか……。

 転校先の小学校では、私はあまり馴染めなかった。なんせ、同世代の子と関わりがほとんど無かったし、独りでいた時間が長すぎて人混みでは酔うことがしばしばあったのだ。

 私が転校してから三ヶ月がたった頃。ちょうどその頃、遠足のグループ決めがあり、私は皆が続々とグループを作っていくなかで一人立ちすくんでいた。

 誰かにグループに入れてと声をかけることも出来なければ、声をかけてくれる友達もいない。このときの私は完全に学校生活の電車に乗り遅れていた。

(ひとり、だれもこえかけない)

 当時は不安に押しつぶされて泣きそうになっていたのをかすかに覚えている。しかし、彼らしく、そんなときに、困ったときに手を差し伸べてくれたのが、裕太君だった。

「ねぇ、みやうらちゃん」

 彼はいつも微笑んでいた。誰に対しても、分け隔てない笑顔で、優しさで接していた。

「ぼくらのはん、ひとりたりないからきて」

「ぇ……。わたしでいいの?」

「うん! もちろんだよ! さ、きてきて!」

 引っ張られた手がとても暖かく、このとき、私は完全に彼に心を奪われた。

 しかし、当時はまだ好きとか愛とか分からない小学生。私を助けてくれるいい人としか思っていなかった。

 彼は進級を繰り返して、更に仲良くなった。初めて遊んだときは家が近くだったこともあり、毎日班として登校していた。

 小学校高学年になってから色恋に意識を皆しだす頃で、私は当時から裕太君のことが好きだと知り、周りは好き同士と噂をたてていた。それに彼は苦笑いし、私はまんざらでもなかった。

 中学生になっても、私たちの関係は変わらない。

 ずっと仲の良い幼なじみのような存在として私たちは関わった。裕太君は成長期で声変わりと背丈がすらりと伸びて今に近い大人っぽい印象になった。

 私はそんな彼に少しでも相応しくなるようにと清楚なふりを装った。それで何回かは自分の顔を勘違いしている男に告白を受けた。もちろん、瞬殺してあげた。裕太君以外、眼中にないから。そんな言葉は吐けなかったけど。

 一部から私の嫉妬で裏で遊んでるだの根拠のないこと言ってくる女がいたけどそいつらには皆圧力をかけて心から潰してあげた。裕太君に近づこうとするやつらも。

 そして、高校。私は失敗した。

 裕太君を怒らせた。彼は私より友達の方が大事だったのだ。

 私は彼に拒絶された。

 そのことだけを感じて、ただ無気力に二年の時を過ごした。

 ──

「こんな感じでいいのかなぁ」

 サラサラとキーボードを打ち、私は首をかしげる。

 「NAKANA」というペンネームを使って書いた私の人生と裕太君との出会いを描いた短編小説をネットに投稿した。

 タイトルは「過去の執念と秀才の破滅」というタイトルで、破滅はあの高橋敦志とかいう私の邪魔をした男に向けて綴った。

「裕太君、会いたいよぉ」

 26時、私は裕太君と夢のなかで会うことを期待して眠りについた。

 その日の夢はやっぱり最悪だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ファンファーレ!

ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡ 高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。 友情・恋愛・行事・学業…。 今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。 主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。 誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。 しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

処理中です...