240 / 244
第9章 最後の桜と変わる雰囲気
129時間目 自分を信じて
しおりを挟む
「でさ、敦志。あんたの意思はちゃんと伝わった。けど、どの大学に行くの? 教育関係の大学はいっぱいあるけど」
母さんに言われたその言葉、俺は自分で導いた答えを出す準備をしていた。だけど、それを言いにくいのはやはり、まだ覚悟が定まっていないからだろうか。
「それなんだけど、教育大学とかどうかなって思ってて無難に」
「教育大ねぇ、あんたの偏差値次第では行けるんじゃない? つっても期末まで気を抜かなきゃ成績は大丈夫だから、期末まではテストに集中して頑張んな。そのあとは文系科目で得意なもの作っておきな」
とりあえずはこの進路を確定してもらった俺は、母さんにこの夏に夏期講習を行くことと赤本を買うこと、なるべく推薦を取れるならとることを条件に志望校への道のりを決めてもらった。
「これくらいじゃない? あんた、去年オープンキャンパス行っとけって言ってたのに結局、春に行ってギリギリだったじゃないの。もっと情報集めときゃよかったのに」
「いや、ネットの知識で足りるかと思ってたけどなめてたよ。でも絶対受かるから見てて」
「頑張りなさい。大切な人のために」
素直になると一般的な高校生のように親との関係が少し冷えていた俺は元通りになる。よかった。ちゃんと出来て。
親って一生の付き合いだから。大切にしなきゃ。
自分が大切にしてもらったように、今度は俺が大切を返していく番だ。
──
「母ちゃん、今日俺進路の紙もらったんだけど、ちょっと話聞いてもらっていい?」
晩ご飯を食べ終えてから少々時間が経った頃。俺は満を持して母ちゃんに話しかけた。
「遼太郎、よかった。母ちゃんに話してくれて。とりあえず、何か飲みながら話そうか。ホットハニーレモンでいいね?」
ホットハニーレモンとは俺が好きなハチミツ入りのホットレモンティーのことだ。母ちゃん特性のそれは本当に美味しくて、冬から春はたくさん飲むんだよな。
「うん、ありがとう。でさ、俺」
言え、遼太郎。お金とか立場とか関係なく、親は子供を最優先に考えてくれているから。言え!
「母ちゃんに迷惑かけるかもしれないけど」
「大学に行きたいんだ」
そのときの母ちゃんの顔と言ったら安堵の表情だった。突然、大学に行きたいとの告白に驚きは見せず、最初から知っていたような顔だった。
「そっか。やっと言ってくれた」
「母ちゃんね、昔っから遼太郎がいつも無理して私や皆に合わせて自分を押し殺してるんじゃないかって思っててそれが心配だったんよね」
「自分の意見を言えて受け止めてくれる友達のおかげかしらね。もちろん、安心して行きなさい。お金は心配しなくていい。まだ遼太郎は子供やから。母ちゃんは親やから遼太郎を大人にする義務がある。立派な大人になって、いつかは大切な人を優しさで守ってください」
母ちゃんの言葉に俺は、今まで我慢していた感情が押し出された。
自分を否定しているわけじゃなかったけど、どこかは押さえ込んでいた部分が飛び出た。
「うぅ……。か、あちゃん。ありがとう……! 頑張る」
幸いことにこれまで俺はどんなに不運でも耐えてきた。だから、これから起こりうることだって耐えれるはず。
敦志と山内。そして俺を応援してくれる皆がいる限り。
俺は、自分の意見にまっすぐに生きるよ。
母さんに言われたその言葉、俺は自分で導いた答えを出す準備をしていた。だけど、それを言いにくいのはやはり、まだ覚悟が定まっていないからだろうか。
「それなんだけど、教育大学とかどうかなって思ってて無難に」
「教育大ねぇ、あんたの偏差値次第では行けるんじゃない? つっても期末まで気を抜かなきゃ成績は大丈夫だから、期末まではテストに集中して頑張んな。そのあとは文系科目で得意なもの作っておきな」
とりあえずはこの進路を確定してもらった俺は、母さんにこの夏に夏期講習を行くことと赤本を買うこと、なるべく推薦を取れるならとることを条件に志望校への道のりを決めてもらった。
「これくらいじゃない? あんた、去年オープンキャンパス行っとけって言ってたのに結局、春に行ってギリギリだったじゃないの。もっと情報集めときゃよかったのに」
「いや、ネットの知識で足りるかと思ってたけどなめてたよ。でも絶対受かるから見てて」
「頑張りなさい。大切な人のために」
素直になると一般的な高校生のように親との関係が少し冷えていた俺は元通りになる。よかった。ちゃんと出来て。
親って一生の付き合いだから。大切にしなきゃ。
自分が大切にしてもらったように、今度は俺が大切を返していく番だ。
──
「母ちゃん、今日俺進路の紙もらったんだけど、ちょっと話聞いてもらっていい?」
晩ご飯を食べ終えてから少々時間が経った頃。俺は満を持して母ちゃんに話しかけた。
「遼太郎、よかった。母ちゃんに話してくれて。とりあえず、何か飲みながら話そうか。ホットハニーレモンでいいね?」
ホットハニーレモンとは俺が好きなハチミツ入りのホットレモンティーのことだ。母ちゃん特性のそれは本当に美味しくて、冬から春はたくさん飲むんだよな。
「うん、ありがとう。でさ、俺」
言え、遼太郎。お金とか立場とか関係なく、親は子供を最優先に考えてくれているから。言え!
「母ちゃんに迷惑かけるかもしれないけど」
「大学に行きたいんだ」
そのときの母ちゃんの顔と言ったら安堵の表情だった。突然、大学に行きたいとの告白に驚きは見せず、最初から知っていたような顔だった。
「そっか。やっと言ってくれた」
「母ちゃんね、昔っから遼太郎がいつも無理して私や皆に合わせて自分を押し殺してるんじゃないかって思っててそれが心配だったんよね」
「自分の意見を言えて受け止めてくれる友達のおかげかしらね。もちろん、安心して行きなさい。お金は心配しなくていい。まだ遼太郎は子供やから。母ちゃんは親やから遼太郎を大人にする義務がある。立派な大人になって、いつかは大切な人を優しさで守ってください」
母ちゃんの言葉に俺は、今まで我慢していた感情が押し出された。
自分を否定しているわけじゃなかったけど、どこかは押さえ込んでいた部分が飛び出た。
「うぅ……。か、あちゃん。ありがとう……! 頑張る」
幸いことにこれまで俺はどんなに不運でも耐えてきた。だから、これから起こりうることだって耐えれるはず。
敦志と山内。そして俺を応援してくれる皆がいる限り。
俺は、自分の意見にまっすぐに生きるよ。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる