親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

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第9章 最後の桜と変わる雰囲気

129時間目 自分を信じて

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「でさ、敦志。あんたの意思はちゃんと伝わった。けど、どの大学に行くの? 教育関係の大学はいっぱいあるけど」

 母さんに言われたその言葉、俺は自分で導いた答えを出す準備をしていた。だけど、それを言いにくいのはやはり、まだ覚悟が定まっていないからだろうか。

「それなんだけど、教育大学とかどうかなって思ってて無難に」

「教育大ねぇ、あんたの偏差値次第では行けるんじゃない? つっても期末まで気を抜かなきゃ成績は大丈夫だから、期末まではテストに集中して頑張んな。そのあとは文系科目で得意なもの作っておきな」

 とりあえずはこの進路を確定してもらった俺は、母さんにこの夏に夏期講習を行くことと赤本を買うこと、なるべく推薦を取れるならとることを条件に志望校への道のりを決めてもらった。

「これくらいじゃない? あんた、去年オープンキャンパス行っとけって言ってたのに結局、春に行ってギリギリだったじゃないの。もっと情報集めときゃよかったのに」

「いや、ネットの知識で足りるかと思ってたけどなめてたよ。でも絶対受かるから見てて」

「頑張りなさい。大切な人のために」

 素直になると一般的な高校生のように親との関係が少し冷えていた俺は元通りになる。よかった。ちゃんと出来て。

 親って一生の付き合いだから。大切にしなきゃ。

 自分が大切にしてもらったように、今度は俺が大切を返していく番だ。

 ──

「母ちゃん、今日俺進路の紙もらったんだけど、ちょっと話聞いてもらっていい?」

 晩ご飯を食べ終えてから少々時間が経った頃。俺は満を持して母ちゃんに話しかけた。

「遼太郎、よかった。母ちゃんに話してくれて。とりあえず、何か飲みながら話そうか。ホットハニーレモンでいいね?」

 ホットハニーレモンとは俺が好きなハチミツ入りのホットレモンティーのことだ。母ちゃん特性のそれは本当に美味しくて、冬から春はたくさん飲むんだよな。

「うん、ありがとう。でさ、俺」

 言え、遼太郎。お金とか立場とか関係なく、親は子供を最優先に考えてくれているから。言え!

「母ちゃんに迷惑かけるかもしれないけど」

「大学に行きたいんだ」

 そのときの母ちゃんの顔と言ったら安堵の表情だった。突然、大学に行きたいとの告白に驚きは見せず、最初から知っていたような顔だった。

「そっか。やっと言ってくれた」

「母ちゃんね、昔っから遼太郎がいつも無理して私や皆に合わせて自分を押し殺してるんじゃないかって思っててそれが心配だったんよね」

「自分の意見を言えて受け止めてくれる友達のおかげかしらね。もちろん、安心して行きなさい。お金は心配しなくていい。まだ遼太郎は子供やから。母ちゃんは親やから遼太郎を大人にする義務がある。立派な大人になって、いつかは大切な人を優しさで守ってください」

 母ちゃんの言葉に俺は、今まで我慢していた感情が押し出された。

 自分を否定しているわけじゃなかったけど、どこかは押さえ込んでいた部分が飛び出た。

「うぅ……。か、あちゃん。ありがとう……! 頑張る」

 幸いことにこれまで俺はどんなに不運でも耐えてきた。だから、これから起こりうることだって耐えれるはず。

 敦志と山内。そして俺を応援してくれる皆がいる限り。

 俺は、自分の意見にまっすぐに生きるよ。
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