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第9章 最後の桜と変わる雰囲気
122時間目 レベルの差
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カリカリとペンが紙の上を走る音だけが鳴り響く教室で、僕らは模試を受けていた。進学+の選択科目の授業は基本的に自学自習または模擬試験での復習を徹底しており、普段の授業のように教師が教壇の前に立ち、板書を書くというのがほとんどない。三年生になってから、この数週間で分かったことはそれだ。
模試の問題は基本的に応用問題ばかりで僕もたまにだが疑問に思う問題がある。進学コースの生徒らしき人と僕と数名は割とすらすらとペンを進ませているが、それ以外の成績上位者はペンの進むスピードが極端に遅い。
「──はい、そこまで」
進学コースの担任の先生が冷淡に告げ、少しだけ辺りの空気が弛緩するのを感じた。
僕は廊下側の五列中一列目の一番後ろにいるので解答用紙を後ろから回収するときには動かなければ行けない。この席順には意味があって、校内の成績の順位を表しており、奥のグラウンド側に行くほど成績が振るわない生徒が多く、逆に廊下側に行くにつれて成績優秀者が多くなる。僕は一列目の一番後ろ──基本的に一列目は進学コースの生徒なのらしいがそれを抜いて成績が良いため──なのでこの学校の中でもトップファイブに入る。今まで僕は学年一位を取っていたが、それは進学コースを抜いての学年一位であり、本当は学年六位ほどだったのだと最近知った。
「──残り時間は自由に使って。チャイム鳴ったら解散。以上」
またもや淡々と先生は告げ、小説を読み始めた。
自由に使えと言われれば、ほとんどの生徒は友人たちと他愛もない会話をするために使うだろう。以前までの僕とそうだった。だけど、いくら成績に余裕があるとはいえ、上には上がいると言うようにまだ五人も上にいるのだ。きっと、気を抜いてしまえばすぐに追い抜かれてしまうことが分かる。だから、僕はこうして自分自身を追求する道を選ぶことにした。
英作文の練習をして、ちょうど出来上がった頃、チャイムが鳴り、選択科目の授業は終わった。
ふぅ……。中々今日も疲れる一日だったな。
この選択科目の授業は基本的に六時間目に授業が入るため、集中力が必要となってくる。最も教師側からすれば試しているのだろうけど。
僕は帰ろうとシャーペンを筆箱にしまおうとしたときに声をかけられた。
「山内クン、久しぶりじゃないカ」
オタク特有の少しカタコトな話し方。誰だろうと顔をあげると、一番前の席に座っている男子が立っていた。メガネに七三分けをしていかにもマジメでオタク感が漂う顔立ちだった。
「えっ……と、どうも」
まずい、名前を忘れてしまった。ここの選択科目で同じになってからたまに話にきてくれる子なのだが、ここの所割と忙しかったので周囲のことに目を向けることに集中していなかった。
「おや? その様子じゃボクの名前を忘れているようだネ。改めて自己紹介をしようカ」
彼はクイッとメガネをあげ、そのレンズを光らせた。
「ボクの名前は馬路一郎だ。覚えてくれたマエ」
そう言って彼──馬路君は不敵に笑った。
模試の問題は基本的に応用問題ばかりで僕もたまにだが疑問に思う問題がある。進学コースの生徒らしき人と僕と数名は割とすらすらとペンを進ませているが、それ以外の成績上位者はペンの進むスピードが極端に遅い。
「──はい、そこまで」
進学コースの担任の先生が冷淡に告げ、少しだけ辺りの空気が弛緩するのを感じた。
僕は廊下側の五列中一列目の一番後ろにいるので解答用紙を後ろから回収するときには動かなければ行けない。この席順には意味があって、校内の成績の順位を表しており、奥のグラウンド側に行くほど成績が振るわない生徒が多く、逆に廊下側に行くにつれて成績優秀者が多くなる。僕は一列目の一番後ろ──基本的に一列目は進学コースの生徒なのらしいがそれを抜いて成績が良いため──なのでこの学校の中でもトップファイブに入る。今まで僕は学年一位を取っていたが、それは進学コースを抜いての学年一位であり、本当は学年六位ほどだったのだと最近知った。
「──残り時間は自由に使って。チャイム鳴ったら解散。以上」
またもや淡々と先生は告げ、小説を読み始めた。
自由に使えと言われれば、ほとんどの生徒は友人たちと他愛もない会話をするために使うだろう。以前までの僕とそうだった。だけど、いくら成績に余裕があるとはいえ、上には上がいると言うようにまだ五人も上にいるのだ。きっと、気を抜いてしまえばすぐに追い抜かれてしまうことが分かる。だから、僕はこうして自分自身を追求する道を選ぶことにした。
英作文の練習をして、ちょうど出来上がった頃、チャイムが鳴り、選択科目の授業は終わった。
ふぅ……。中々今日も疲れる一日だったな。
この選択科目の授業は基本的に六時間目に授業が入るため、集中力が必要となってくる。最も教師側からすれば試しているのだろうけど。
僕は帰ろうとシャーペンを筆箱にしまおうとしたときに声をかけられた。
「山内クン、久しぶりじゃないカ」
オタク特有の少しカタコトな話し方。誰だろうと顔をあげると、一番前の席に座っている男子が立っていた。メガネに七三分けをしていかにもマジメでオタク感が漂う顔立ちだった。
「えっ……と、どうも」
まずい、名前を忘れてしまった。ここの選択科目で同じになってからたまに話にきてくれる子なのだが、ここの所割と忙しかったので周囲のことに目を向けることに集中していなかった。
「おや? その様子じゃボクの名前を忘れているようだネ。改めて自己紹介をしようカ」
彼はクイッとメガネをあげ、そのレンズを光らせた。
「ボクの名前は馬路一郎だ。覚えてくれたマエ」
そう言って彼──馬路君は不敵に笑った。
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