親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

120時間目 さよならの決意

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「──そうかァ。それがお前らの最期か」

 あれから、雨が本降りになってきたというのに睡蓮は僕の電話一本でここまで来てくれた。

 睡蓮は基本的に僕と違って暇じゃない。色々と業務があるにも関わらず、来てくれたのだ。彼曰く、「敦志に丸投げしてきた」とのことだ。高橋君困ってるだろうな。

「こうするしか、なかったんだ……。僕らは今まで忘れられない相手としてお互いを縛り付けていた。求め続けていた。だから、それさえなければ、彼女は前に進める。そう思ったから……。さよなら、した」

 さよなら、その言葉を言っただけで心結の悲しんだ顔を思い出す。

「睡蓮、僕は、僕らはどうしたらいいんだ?」

「ンなもん俺が知るかよ」

「……え?」

 ひと言そうきっぱりと言われて反応が遅れた。期待していた答えじゃないというのもあったけど、睡蓮がこうひと言しか言わないのは恐らく初めてじゃないのか。

「俺はお前らの理解者であっても別に恋愛のプロフェッショナルじゃねェンだ。むしろ、そっちは苦手だしな。女なんかしったこっちゃねェ。それに恋とかどうでもいいしな」

 睡蓮の恋愛に対しての価値観が低いとか高いとかそんなの置いておいて全くないということに驚いた。そんなことを考えていたとは思わなかったから。

 睡蓮はぶっきらぼうだけど、誰に対しても優しい。昔からモテなくとも仲良くしたいと思っているだろう異性は結構いた。この様子だと本人は気づいてなさそうだけど。

「俺は昔からずっと疑問に思っていたンだけどよ、恋愛って別れたら終わりなンか? 別れてからがスタートじゃねェの?」

 何を言っているか分からない。別れてしまったらそこでその人との物語は終わる。いなくなるのだ。

「違うだろ? 別れて、自分を知って、また新しい恋愛をするンだろ? まぁ、俺も人のこと言えねェけど」

 別れてしまったら、確かにその人との物語は終わる。けれど、別に死ぬわけじゃない。それを教訓に、きっと時間はかかるだろうけど、新しい恋愛を始めることだって出来る……かもしれない。

「逆に俺はお前らが羨ましいなァ。お互い離れていてもずっと相手を引き離すことが出来なくて、求めあって運よく巡り会えたンだからよ」

 そう話す睡蓮はとても悲しそうな顔をしていた。苦しい過去を話すような顔をしていた。実際、とても苦しいのだろう。

「それに学ンだじゃねェか。どれだけ距離があったって、好きな相手は離れてくれねェってことをよ」

 そうだ。僕はまた、学んだ。どれだけ離れていても好きな人がいることを。心が満たされていることを。好きで好きでたまらない。出会ってくっついて、離れて拒絶して失ってその想いにまた気がつく。

 さよならの決意をしたことは間違っていない。

 ──さよなら、心結。また、どこかで幸せになって会おうね。

 小雨になった雨が窓を叩く。ずぶぬれになった君がいたときは次は傘をさせるように、今度こそ幸せになろうと少しだけ前向きに生きていこうと思えた。
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