親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

文字の大きさ
上 下
222 / 244
第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

116時間目 さよならまでのカウントダウン

しおりを挟む
 それは年末のこと。突然、大学院に行かないかと教授に言われたのは昼下がりのある日だった。

 その大学から推薦で行けるという大学院は私が今いる地域からかなり離れたところだった。

「まぁ、神谷君は社会性もあって勉強も出来る。君をこのまま社会にだしてもいいが、私はその行為は粗磨あらみがきしたダイヤの原石をショーケースにだすものだと思っている。そんなの見るだけで綺麗で価値もあるがここから研磨けんますれば、更に価値があがる……だろう? まぁ、引っ越しやその他の準備もあるし、考える時間はあげるから、前向きに検討してみてくれ」

 そのとき私は分かりましたと言って駅にかけこんだけど、心のなかでは迷っていた。

 推薦でいけるのはとても喜ばしい。だけど、私はここから離れなければいけない。

 こんなとき、彼──橙太とうたならどうするのか。

 まだ、彼の隣にいれたならどんなアドバイスをくれたのか。

 分からない。もう、聞くことは出来ない。

 電車に揺られながら、私は考える。

 もし、彼がどんな関係でいても、やっぱりいった方がいいと言うだろうと。

 そういう人だから。自分に不利なことが起きても誰かの幸せを考える人だから。

 だから、私は好きになって好きで好きで。

 こんなにも、何年も初恋に縛り付けられている。

 早く、忘れたい。──でも忘れたくない。

 この矛盾が私を動かしてくれない。怖いから。思い出にすがらなければいけないことなんてないと頭では分かっていても、体が前に進まない。

 でも、これがきっかけになるかもしれないことは薄々と気がついていた。

 ──

「んっ……。今、どこかしら……」

 いつの間にか寝ていたようね。私は寝起きの冴えない頭を懸命に動かして、それに気がついて急激に覚めてしまった。

 いけない! 寝過ごしちゃったわ!

 ちょうどホームに停まった電車から脱け出して、改札へ急ぐ。

 私が降りた駅はマンションまでかなり歩かなきゃいけない。急いででちゃったから切符はもうないし、今日は年末だから家でゆっくりしたいというときに限って定期券を家に置き忘れちゃった。

 しかも、地下からでてみると外は大雨。大荒れの天気だったわ。

 あぁ、もうなんて日なの!

 とスキンヘッドの芸能人が叫んできそうだけど私は急ぎ足でどこかコンビニに寄ることにしたわ。

 大粒の雨が服を濡らそうとも私は厚手のコートとマフラーを盾にして前に進む。

 白いコートがねずみ色のしみを作ろうとも構わない。

 ようやく、店内にはいり、私はやっとの思いで少し休憩した。

 こんな、全力で走ったのは何年ぶりかしら。

「……いらっしゃいませー……」

 気の弱そうな男性店員の声を聞きながら私は傘を探す。

 そして、ぎりぎり足りたお金をレジにだそうとしたところで、彼と目があった。

「「あっ……」」

 重なるふたつの声。

 運命のいたずらとはこんなことをきっと言うのね。

 私と二回目の再会した彼──橙太は以前のような小汚ない身だしなみではなく、コンビニの制服を身にまとっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...