216 / 244
第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
113時間目 永遠を求めて
しおりを挟む
小春と付き合ってから、今日で一年。
きっと、去年の今頃は聖なる夜にふさわしい雪空のもとで、クリスマスツリーの下で告白しているんだろう。
ちょうど、今みたいに雪が降り始めて、ちらちらと舞いだした頃に俺は告白したから。
今でも、あのときのことは覚えている。俺が言った言葉の一字一句。頬を赤らめ告白の言葉を待ち望んでいた小春の笑顔にまじった涙を。
『私も、好き』
この言葉を聞きたくて、俺はこの日に勇気をだしたんだ。
ここまで色々なことがあった。でも、それらは全て将来への投資に過ぎない。
俺が今、一番恐れているもの。それは必ずくると言っていい別れのことだ。
もちろん、ここの別れは、卒業について。分かっていた。中学校でも別れを経験したから。でも、悲しむことはなかった。
正直、会わなくなっても会えてもどっちでもよかった。でも、裕太は。遼太郎は。小春は。
……違う。
これから来る別れがあるとしても、別れたくない。ずっと友達でいたい。
俺は今、どれだけ子供っぽくて哀れなことを思っているのか自分でも分かっている。
卒業すれば、疎遠になるやつがいる。
きっと、裕太たちとは、違う道に進むから、集まる時間が短くなる。
小春とだって、もしかしたら、更に遠距離恋愛になるかもしれない。
でもそれでも──
「敦志君! 写真撮ろ!」
「お、おう……」
「敦志どうした?」
「もしかして、疲れちゃった?」
裕太と小春が心配そうな目で見てくる。
今まで考えていた暗い考えは一度心のなかで捨て、つとめて笑顔を作るようにした。
「いや、大丈夫だ。それにしても……。このツリー、去年のよりもでかいな」
「うん、そうだね。去年と言えばなんだけど……」
小春がなにかを言いかけた瞬間、俺は今までの感謝を伝えることにした。
「俺と」「私と」
「「付き合ってくれてありがとう‼」」
「「え??」」
重なった言葉に俺たちは二人そろって目を見開いた。
「あっ、いやその……。小春も同じこと思っていたんだな」
俺は恥ずかしくなっておもむろにツリーの方を見た。
闇夜に光る黄金のひとつ星の輝きが優しく俺の目に反射した。
「敦志君と同じことを思っていて嬉しいな。私、ここまで誰かを好きになったことなかったから」
俺はその言葉に小春に向き合うと、見つめあう形になった。
「私、敦志君と出会えてよかった。あの日、私を助けてくれてありがとう。私とまた出会ってくれてありがとう。私をカノジョにしてくれてありがとう。敦志君の特別にしてくれてありがとう」
「これからも、私は敦志君とずっと一緒にいたいです」
出会った頃と、友人だった頃と変わらない小春の柔らかな笑顔と嘘のない本音に俺は全身が熱くなった。
どうしようもないくらい、小春が好きだ。
これからの不安もこの笑顔を見れば消え去る。全てが上手くいくんじゃないかと思える。
「……俺も、小春とこれからもずっとらいたい。卒業をすれば、お互い忙しくなるけど、距離ができると思うけど。小春と幸せになりたいです」
「卒業って……。まだ一年もあるよ?」
「まぁ、そうだけどさ。最近すごく将来が不安で」
「敦志君なら大丈夫だよ。こうやって考えてくれていることがもう、ちゃんと将来のことを考えてくれているってことだから」
「そう、かな。そう……なのか。俺、推薦で大学に行くよ。まだ、間に合うから」
「うん、敦志君なら大丈夫」
小春の声は本当に反則だ。聞けば不安も吹き飛び、根拠のない励ましの言葉よりもちゃんと説得力があるように思えるから。
「敦志、好きだよ」
「俺も。ずっと愛してる」
「ふふっ……」
「ははっ」
二人そろってこの甘い空気に笑ってしまう。
小春との時間がずっと続けていけるように頑張ろうと俺は、この日、誓った。
きっと、去年の今頃は聖なる夜にふさわしい雪空のもとで、クリスマスツリーの下で告白しているんだろう。
ちょうど、今みたいに雪が降り始めて、ちらちらと舞いだした頃に俺は告白したから。
今でも、あのときのことは覚えている。俺が言った言葉の一字一句。頬を赤らめ告白の言葉を待ち望んでいた小春の笑顔にまじった涙を。
『私も、好き』
この言葉を聞きたくて、俺はこの日に勇気をだしたんだ。
ここまで色々なことがあった。でも、それらは全て将来への投資に過ぎない。
俺が今、一番恐れているもの。それは必ずくると言っていい別れのことだ。
もちろん、ここの別れは、卒業について。分かっていた。中学校でも別れを経験したから。でも、悲しむことはなかった。
正直、会わなくなっても会えてもどっちでもよかった。でも、裕太は。遼太郎は。小春は。
……違う。
これから来る別れがあるとしても、別れたくない。ずっと友達でいたい。
俺は今、どれだけ子供っぽくて哀れなことを思っているのか自分でも分かっている。
卒業すれば、疎遠になるやつがいる。
きっと、裕太たちとは、違う道に進むから、集まる時間が短くなる。
小春とだって、もしかしたら、更に遠距離恋愛になるかもしれない。
でもそれでも──
「敦志君! 写真撮ろ!」
「お、おう……」
「敦志どうした?」
「もしかして、疲れちゃった?」
裕太と小春が心配そうな目で見てくる。
今まで考えていた暗い考えは一度心のなかで捨て、つとめて笑顔を作るようにした。
「いや、大丈夫だ。それにしても……。このツリー、去年のよりもでかいな」
「うん、そうだね。去年と言えばなんだけど……」
小春がなにかを言いかけた瞬間、俺は今までの感謝を伝えることにした。
「俺と」「私と」
「「付き合ってくれてありがとう‼」」
「「え??」」
重なった言葉に俺たちは二人そろって目を見開いた。
「あっ、いやその……。小春も同じこと思っていたんだな」
俺は恥ずかしくなっておもむろにツリーの方を見た。
闇夜に光る黄金のひとつ星の輝きが優しく俺の目に反射した。
「敦志君と同じことを思っていて嬉しいな。私、ここまで誰かを好きになったことなかったから」
俺はその言葉に小春に向き合うと、見つめあう形になった。
「私、敦志君と出会えてよかった。あの日、私を助けてくれてありがとう。私とまた出会ってくれてありがとう。私をカノジョにしてくれてありがとう。敦志君の特別にしてくれてありがとう」
「これからも、私は敦志君とずっと一緒にいたいです」
出会った頃と、友人だった頃と変わらない小春の柔らかな笑顔と嘘のない本音に俺は全身が熱くなった。
どうしようもないくらい、小春が好きだ。
これからの不安もこの笑顔を見れば消え去る。全てが上手くいくんじゃないかと思える。
「……俺も、小春とこれからもずっとらいたい。卒業をすれば、お互い忙しくなるけど、距離ができると思うけど。小春と幸せになりたいです」
「卒業って……。まだ一年もあるよ?」
「まぁ、そうだけどさ。最近すごく将来が不安で」
「敦志君なら大丈夫だよ。こうやって考えてくれていることがもう、ちゃんと将来のことを考えてくれているってことだから」
「そう、かな。そう……なのか。俺、推薦で大学に行くよ。まだ、間に合うから」
「うん、敦志君なら大丈夫」
小春の声は本当に反則だ。聞けば不安も吹き飛び、根拠のない励ましの言葉よりもちゃんと説得力があるように思えるから。
「敦志、好きだよ」
「俺も。ずっと愛してる」
「ふふっ……」
「ははっ」
二人そろってこの甘い空気に笑ってしまう。
小春との時間がずっと続けていけるように頑張ろうと俺は、この日、誓った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる