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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

109・8時間目 ゲーセンはやっぱり

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「二人ともごめん! 遅れたよ!」

 扉の前に裕太が立っていて、俺と遼太郎はその存在に気がついた。

「大丈夫だ。ちょうど、俺たちも飲み終えた頃だから。とりあえず、行くか。三島さん、ごちそうさまでした!」

「また来ますー!」

 俺と遼太郎はひと言をかけて、裕太はぺこりと会釈してから、俺たちはMISHIHANAを後にした。

 それから、俺たちは電車を移動手段として使い、よく行くことがあるショッピングセンターに来た。

 そこでは、小春のプレゼントを買ったり、遼太郎たちと遊んだり、みなみの誕生日プレゼントを買ったり、裕太が天野あまの優香ゆうかという元カノに出会ったりと、色々な時間を共にした場所だ。

 来年からは受験勉強で忙しくなるからと、三人で遊ぶ時間をここで確保することにした。

 しかし、今日は別に買い物をしに来たわけじゃないので、よく行く服が立ち並ぶ場所やフードコートにはいかない。

 今日の目的は、そのフードコートを越えたところにその場所はあった。

 絶えず、電子音やちかちかと眩しい光を放つその場所は、今話題のアニメのゲームやゲームセンターと言えばこれと定番なゲームに俺たちが名前も知らないようなひと昔前に流行ったようなゲームがずらりと列を組んで並んでいた。

「すごいゲームの数だね。これだけあれば、時間はあっという間に過ぎちゃうんじゃない?」

「そうだな。何からするか?」

「んー、メダルゲームしようぜ!」

 遼太郎が指差した場所にはひときわ大きく存在感を放つメダルゲームの機器があった。俺たちはひとまず、持ち金として十枚のコインを持ち、それぞれの席に座った。

 メダルゲームはほとんどしたことがなかったが、やってみると楽しかった。

「やべっ、もうコインあと一枚しかねぇ……。頼む。落ちてくれ!」

 開始早々、所持金だった十枚のコインは底をつきようとしていた。しかし、俺の願いが叶ったのか、最後の賭けにでたコインはみっつのコインを落とすことに成功。取りだし口から三枚の煌めきが鈍く光った。

「よしっ、これでたち直した!」

「あっ、敦志、なんかルーレットが流れてるよ! もしかしたら、すごいのがくるのかも!」

 裕太のその言葉は本当で、ルーレットを止めると、大量のコインが落ちる演出がでてきた。

 その画面に続いて、実際にたくさんのコインが波のように流れてくる。

「うおうおうお、すげぇな! 裕太ナイス!」

 ぎりぎりでたち直しから、一変し、コインはざくざくと貯まった。

「コインが山のようだね!」

「すげー! 裕太すげー!」

 俺も遼太郎も裕太もメダルが全て無くなるまでその台から離れることはなかった。

 やっぱり、ゲーセンは楽しい。これからも、こんな日々が続くといいな。

 受験を終えたら、また来たい場所がひとつ増えた。

 そして、夕暮れ。太陽がビル群に隠れようとしている頃。

 俺たちは、いつもの駅で小春がくるのを待っていた。
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