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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
107・8時間目 暗闇を見つめて
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「『中腹の展望スポットまであと一・五キロ』だって……?」
えぇ……。嘘だろ。ここまでかなり歩いてきたのに。そう思っていたが、これが現実なのだ。
「まだ上があるのか……。三石、大丈夫かい?」
「うん、この景色見てちょっと安心した。さ、俺、復活! 敦志、山内! 行こうぜ!」
遼太郎は、どうやら少し落ち着いたようだ。いつも通りの元気さで俺たちを引っ張ってくれる。
「小春、行こうか」
「うん、敦志君」
俺たちは再び、手を握り合い、道なき道を再び、歩き始めた。
道を進んでいると、色々なことが起こった。
まず、山の中だからか、すごく暗い。スマホのライトで照らしていない場所はほとんどなにも見えない。
そして、急に肌寒くなってきたことだ。幸いにも、俺と小春は少し寒いと感じるくらいだったが、遼太郎は体を震わせていた。
山の天気や気候は変わりやすいと言うが、大小関わらず、どの山も同じようだ。寒い。十一月ってこんなに寒かったっけ。
あと、これはまだ中腹の休憩場所から少し歩いた頃の話だ。
俺たちは慎重に歩きながら、ゆっくりながら確実に中腹へと歩いていた。
「あっ! あれって!」
前にいた遼太郎が何かを見つけて大声を出した。いや、実際はそんなに声を張っていないのだろうけど、山の静寂がその声を大きくしているだけなのかも知れない。
「どうしたの? 三石。……あっ! 確かにいるね!」
側にいた裕太も何かに気がついたようで、何やら二人は話していた。
「おいおい、大丈夫か。何がいるんだよ」
俺は小春のペースに合わせながら、早足で二人の側によった。
「敦志、あれ見てよ。猫じゃない……?」
「猫……? どこにいるんだよ……」
ライトを照らして見てみると、倒れた木の上に確かに一匹の黒猫がのんきにこちらを見ていた。
「しかも、黒猫じゃねぇか」
「黒猫だけど……。何かよくないことでもあるの……? あっ、黒猫って確か不幸を呼ぶって言うし……。俺たちヤバイんじゃない? どーしよ! どーしよ!」
「んー、確かに三石の言ってることも一理あるけど、なんでこんなところに猫が……。普通はいないはずだけど」
「ほらぁ! 山内がそう言ってるなら俺たちやべぇじゃん! なにこれ、どうなるの!? この物語ここで完結!? まだ高校二年生だけど‼」
「おいおい……。メタな発言はやめろよ……。奇妙だけど、たまたまここを住みかにしてる猫にあっただけだろ? とりあえず、行くぞ」
「敦志! あの猫敦志が歩き出したと同時にどっか行ったんだけど!? こわっ! 俺もう無理ー!」
「だあぁ! もう、行くぞほら!」
俺はびびる遼太郎を無理矢理連れていった。抵抗はしなかったからよかったけど、遼太郎が暗いところが苦手なのはこれからは配慮しようそう思った。
そして、今、山のちょうど中腹。
一回目の休憩場所と同様、立て看板には『頂上の展望台まであと一キロ』と書かれていた。
えぇ……。嘘だろ。ここまでかなり歩いてきたのに。そう思っていたが、これが現実なのだ。
「まだ上があるのか……。三石、大丈夫かい?」
「うん、この景色見てちょっと安心した。さ、俺、復活! 敦志、山内! 行こうぜ!」
遼太郎は、どうやら少し落ち着いたようだ。いつも通りの元気さで俺たちを引っ張ってくれる。
「小春、行こうか」
「うん、敦志君」
俺たちは再び、手を握り合い、道なき道を再び、歩き始めた。
道を進んでいると、色々なことが起こった。
まず、山の中だからか、すごく暗い。スマホのライトで照らしていない場所はほとんどなにも見えない。
そして、急に肌寒くなってきたことだ。幸いにも、俺と小春は少し寒いと感じるくらいだったが、遼太郎は体を震わせていた。
山の天気や気候は変わりやすいと言うが、大小関わらず、どの山も同じようだ。寒い。十一月ってこんなに寒かったっけ。
あと、これはまだ中腹の休憩場所から少し歩いた頃の話だ。
俺たちは慎重に歩きながら、ゆっくりながら確実に中腹へと歩いていた。
「あっ! あれって!」
前にいた遼太郎が何かを見つけて大声を出した。いや、実際はそんなに声を張っていないのだろうけど、山の静寂がその声を大きくしているだけなのかも知れない。
「どうしたの? 三石。……あっ! 確かにいるね!」
側にいた裕太も何かに気がついたようで、何やら二人は話していた。
「おいおい、大丈夫か。何がいるんだよ」
俺は小春のペースに合わせながら、早足で二人の側によった。
「敦志、あれ見てよ。猫じゃない……?」
「猫……? どこにいるんだよ……」
ライトを照らして見てみると、倒れた木の上に確かに一匹の黒猫がのんきにこちらを見ていた。
「しかも、黒猫じゃねぇか」
「黒猫だけど……。何かよくないことでもあるの……? あっ、黒猫って確か不幸を呼ぶって言うし……。俺たちヤバイんじゃない? どーしよ! どーしよ!」
「んー、確かに三石の言ってることも一理あるけど、なんでこんなところに猫が……。普通はいないはずだけど」
「ほらぁ! 山内がそう言ってるなら俺たちやべぇじゃん! なにこれ、どうなるの!? この物語ここで完結!? まだ高校二年生だけど‼」
「おいおい……。メタな発言はやめろよ……。奇妙だけど、たまたまここを住みかにしてる猫にあっただけだろ? とりあえず、行くぞ」
「敦志! あの猫敦志が歩き出したと同時にどっか行ったんだけど!? こわっ! 俺もう無理ー!」
「だあぁ! もう、行くぞほら!」
俺はびびる遼太郎を無理矢理連れていった。抵抗はしなかったからよかったけど、遼太郎が暗いところが苦手なのはこれからは配慮しようそう思った。
そして、今、山のちょうど中腹。
一回目の休憩場所と同様、立て看板には『頂上の展望台まであと一キロ』と書かれていた。
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