204 / 244
第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
107・5時間目 闇のなかを切り裂いて
しおりを挟む
小春の手を握りながら、俺は先導することにした。
遼太郎は暗い場所が苦手らしく裕太にしがみついている。困ったようにたはは……と笑いながら裕太は遼太郎を連れてついてきている。
時おり、ちらりと小春の方を見てあげると彼女は嬉しいのかクスリと笑った。
足元を照らすものはスマホのライトのみ。それ以外の視界は真っ暗で小春と握っている手だけが人肌を感じられる。
「遼太郎、裕太、大丈夫か?」
地面がアスファルトから土に変わった頃、俺は一度、後ろを振り向いて裕太たちの安否を確認した。
「あぁ、大丈夫だよ。僕も三石も一緒にいるよ」
「この先結構ごつごつした岩あるから気を付けろよ」
「了解。……あっ、三石、足元気を付けて」
「さて、俺たちも行くか。小春、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。敦志君、リードしてくれてありがとう」
暗闇のなかでの小春の笑顔が眩しい。「それくらい彼氏だからとうぜん」なんて言えるはずがないので、少し強く手を握るのに留めておいた。
先ほど、裕太たちに話したところまでは、神社の道のりを歩いていたが、ここからはもう道なき道を歩いている。
手入れされていないから、ごつごつした岩があるし、土砂崩れでも起きた跡なのだろうか、削られた地面があって、とにかく足場が悪い。
小春がこけたりしないように慎重に歩いていく。
そうして、道なき道を裕太たちの安否も確認しながら歩くこと大体二十分くらいか。やっと、山の中腹あたりであろう場所に着いた。
「はー、疲れた。ちょっと休憩するか。裕太と遼太郎を待つついでに」
「う、うん。あ、みてみて! 敦志君! ここからでも夜景すごいよ!」
はしゃぐ小春に肩を叩かれて振り返ってみると、夜の闇に点在する無数のきらめきがそこにはあった。
「おぉ……。すっげぇ綺麗だな」
「うん……! きれいだね!」
俺の肩にもたれるように抱きつく小春。俺はその細くしなやかな腰に自らの腕をよせた。
そこには、暗闇を怖がっていた小春はもういなかった。
無数のネオンを見る小春の瞳は今までで一番輝きを放っているような気がした。
「はぁ、み、三石、疲れたね」
「う、ん。まだ慣れたほうだけど……。あー、夜出歩くのとかあんまり好きじゃないんだよなー! というか暗すぎる……!」
「おっ、お疲れ二人とも。水、いるか?」
「うん、貰う。ありがとー、敦志。あー、生き返る」
大げさなと思いながら、裕太にもお疲れと遼太郎とここまで来てくれたことに感謝を伝える。
「おぉ、すごい景色だね」
裕太が少し興奮したような声で言った。
「まだ中腹あたりでこれだからな。頂上とかすごいだろうな」
「あっ! 敦志君これ……」
小春の声に振り返り、俺はそれを見たとたん、思わず「はっ……?」と言ってしまった。
「『中腹の展望スポットまであと一・五キロ』だって……?」
中腹だと思っていた場所は全く違っていた。
遼太郎は暗い場所が苦手らしく裕太にしがみついている。困ったようにたはは……と笑いながら裕太は遼太郎を連れてついてきている。
時おり、ちらりと小春の方を見てあげると彼女は嬉しいのかクスリと笑った。
足元を照らすものはスマホのライトのみ。それ以外の視界は真っ暗で小春と握っている手だけが人肌を感じられる。
「遼太郎、裕太、大丈夫か?」
地面がアスファルトから土に変わった頃、俺は一度、後ろを振り向いて裕太たちの安否を確認した。
「あぁ、大丈夫だよ。僕も三石も一緒にいるよ」
「この先結構ごつごつした岩あるから気を付けろよ」
「了解。……あっ、三石、足元気を付けて」
「さて、俺たちも行くか。小春、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。敦志君、リードしてくれてありがとう」
暗闇のなかでの小春の笑顔が眩しい。「それくらい彼氏だからとうぜん」なんて言えるはずがないので、少し強く手を握るのに留めておいた。
先ほど、裕太たちに話したところまでは、神社の道のりを歩いていたが、ここからはもう道なき道を歩いている。
手入れされていないから、ごつごつした岩があるし、土砂崩れでも起きた跡なのだろうか、削られた地面があって、とにかく足場が悪い。
小春がこけたりしないように慎重に歩いていく。
そうして、道なき道を裕太たちの安否も確認しながら歩くこと大体二十分くらいか。やっと、山の中腹あたりであろう場所に着いた。
「はー、疲れた。ちょっと休憩するか。裕太と遼太郎を待つついでに」
「う、うん。あ、みてみて! 敦志君! ここからでも夜景すごいよ!」
はしゃぐ小春に肩を叩かれて振り返ってみると、夜の闇に点在する無数のきらめきがそこにはあった。
「おぉ……。すっげぇ綺麗だな」
「うん……! きれいだね!」
俺の肩にもたれるように抱きつく小春。俺はその細くしなやかな腰に自らの腕をよせた。
そこには、暗闇を怖がっていた小春はもういなかった。
無数のネオンを見る小春の瞳は今までで一番輝きを放っているような気がした。
「はぁ、み、三石、疲れたね」
「う、ん。まだ慣れたほうだけど……。あー、夜出歩くのとかあんまり好きじゃないんだよなー! というか暗すぎる……!」
「おっ、お疲れ二人とも。水、いるか?」
「うん、貰う。ありがとー、敦志。あー、生き返る」
大げさなと思いながら、裕太にもお疲れと遼太郎とここまで来てくれたことに感謝を伝える。
「おぉ、すごい景色だね」
裕太が少し興奮したような声で言った。
「まだ中腹あたりでこれだからな。頂上とかすごいだろうな」
「あっ! 敦志君これ……」
小春の声に振り返り、俺はそれを見たとたん、思わず「はっ……?」と言ってしまった。
「『中腹の展望スポットまであと一・五キロ』だって……?」
中腹だと思っていた場所は全く違っていた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる