201 / 244
第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
106・2時間目 思いの距離
しおりを挟む
文化祭が終わってからというもの、クラスのバカップルで有名な拓也と仲良くなった。
以前は席が近くてもそんなに話さなかったが、ここ最近は裕太たちと同じくらい他愛もない話をすることが多い。
「皆浮かれてるよな……。あれ? あいつら、付き合ってたっけ?」
拓也の声に彼が目を向けた方を見ると、かつてはそこに存在しなかった距離が縮まっている二人の男女がいた。
笑いあっている姿を見ると、小春との初々しい日々を思い浮かべる。
あのときは照れまくっていたからなぁ。
「なんか、このクラスだけでもカップルが結構増えたらしいぜ? そっちはどうよ?」
「俺たちはもうラブラブだからなぁ。高橋はたしか他校の子だっけ? 遠距離って寂しくねぇ? すぐに会えない距離にいるのは俺は嫌だな」
拓也の声に改めて考えさせられる小春との距離。別に他の県に住んでいるわけじゃないし、電車を数本乗り継げば会える距離だ。
でも、学校が同じだけで、一週間のうち、五日は必ず会える。
ほとんどの時間を共に過ごせる。
俺たちにはそれがない。
「俺って遠距離なのか……。うーん、俺の恋愛っておかしいのか?」
「いや、そういうわけじゃないな。ほら、高校生ってどうしても同じ学校の子と関わりがあるから、それでお互いを好きになる……みたいな。ま、高橋みたいに中学から好きで偶然にも再会してそれでも好きだったってケースが稀だからな。もちろん、それが悪いとかそんなんじゃないけどな」
少し暗くなった俺に必死に弁解をする拓也。
「まぁ、恋人同士になってからがスタートだもんな。俺たちはかれこれ、七ヶ月くらいだけど、高橋は来月で一年だろ? 充分円満じゃね? だから距離に焦ることねぇよ」
拓也がそう言ったところで、恋人である咲希が教室にやってきた。
「拓也ぁ! おはよっ!」
「よっ、咲希。……じゃあな、高橋」
「おう」
咲希と腕組みをしながら、教室の奥の方に歩いていく二人。
その二人を見ていると、やはり脳裏に浮かぶのは小春の顔。
「恋人との距離、か」
らしくねぇな。こんなことで悩むなんて。
あと一ヶ月で小春と付き合って一年。時間だけが積もった恋愛じゃないはずだ。
想いを伝えあった。言葉を見つけあった。意心地の良さを感じあった。
独りよがりの恋じゃないはずだ。
「恋って難しいのな……」
分かっていたはずだった。他校の子と付き合うと言うことが、難しいということを。
それでも、想いは伝わっている。
小春は俺の隣で笑顔でいてくれているだろ。
小春はいつも楽しそうにしてくれているだろ。
俺は小春を大切に想っているだろ。
それでも、分からないことがある。
恋愛初心者でモテたことのない俺には、分からない。
小春への想いがちゃんと伝わっているかどうか。
以前は席が近くてもそんなに話さなかったが、ここ最近は裕太たちと同じくらい他愛もない話をすることが多い。
「皆浮かれてるよな……。あれ? あいつら、付き合ってたっけ?」
拓也の声に彼が目を向けた方を見ると、かつてはそこに存在しなかった距離が縮まっている二人の男女がいた。
笑いあっている姿を見ると、小春との初々しい日々を思い浮かべる。
あのときは照れまくっていたからなぁ。
「なんか、このクラスだけでもカップルが結構増えたらしいぜ? そっちはどうよ?」
「俺たちはもうラブラブだからなぁ。高橋はたしか他校の子だっけ? 遠距離って寂しくねぇ? すぐに会えない距離にいるのは俺は嫌だな」
拓也の声に改めて考えさせられる小春との距離。別に他の県に住んでいるわけじゃないし、電車を数本乗り継げば会える距離だ。
でも、学校が同じだけで、一週間のうち、五日は必ず会える。
ほとんどの時間を共に過ごせる。
俺たちにはそれがない。
「俺って遠距離なのか……。うーん、俺の恋愛っておかしいのか?」
「いや、そういうわけじゃないな。ほら、高校生ってどうしても同じ学校の子と関わりがあるから、それでお互いを好きになる……みたいな。ま、高橋みたいに中学から好きで偶然にも再会してそれでも好きだったってケースが稀だからな。もちろん、それが悪いとかそんなんじゃないけどな」
少し暗くなった俺に必死に弁解をする拓也。
「まぁ、恋人同士になってからがスタートだもんな。俺たちはかれこれ、七ヶ月くらいだけど、高橋は来月で一年だろ? 充分円満じゃね? だから距離に焦ることねぇよ」
拓也がそう言ったところで、恋人である咲希が教室にやってきた。
「拓也ぁ! おはよっ!」
「よっ、咲希。……じゃあな、高橋」
「おう」
咲希と腕組みをしながら、教室の奥の方に歩いていく二人。
その二人を見ていると、やはり脳裏に浮かぶのは小春の顔。
「恋人との距離、か」
らしくねぇな。こんなことで悩むなんて。
あと一ヶ月で小春と付き合って一年。時間だけが積もった恋愛じゃないはずだ。
想いを伝えあった。言葉を見つけあった。意心地の良さを感じあった。
独りよがりの恋じゃないはずだ。
「恋って難しいのな……」
分かっていたはずだった。他校の子と付き合うと言うことが、難しいということを。
それでも、想いは伝わっている。
小春は俺の隣で笑顔でいてくれているだろ。
小春はいつも楽しそうにしてくれているだろ。
俺は小春を大切に想っているだろ。
それでも、分からないことがある。
恋愛初心者でモテたことのない俺には、分からない。
小春への想いがちゃんと伝わっているかどうか。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。


俺たちの共同学園生活
雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。
しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。
そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。
蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる