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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─
103・5時間目 青春は人生最大の宝物
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ボーイッシュなクラスメイトは最後の歌詞を歌い終え、一曲目が終了した。
鼓膜に響き渡る歓声は地響きとして、体にも振動を与える。
ライトの逆光で観客の表情が分からなくても、楽しんでいることは跳び跳ねている姿を目視できれば、すぐに分かることだった。
この感覚は、きっと、二度目だろう。
体がジンジンと熱くなり、思考は楽しいことばかりを考え、過去のことなんて一時的に忘れる──そんな状態は中学の頃にライブをやったとき以来だろう。
これだよ本当の自分をだせるときの感覚は。
本当の自分は、過去なんかに縛られずに楽しいことばかりを考えて生きてきた。
なにも知らなかった頃の小学生のようなテンションに戻っても、いいだろう。
たった一日のお祭りなんだから。
歓声は次第に止んだが、二曲目はまだかとザワザワとしたざわめきは止まることはなかった。
「一曲目を聞いていただき、ありがとうございました。二曲目は映画の主題歌にもなった曲です。同じくBLUE ENCOUNTで『ユメミグサ』。聞いてください」
その曲は、僕が中学三年生に進級したときからハマった曲だった。
原作が小説の実写映画の主題歌であるその曲は、もし春にあなたを抱きしめて涙を背負ってあげればあなたと一緒にいれたかなという後悔をテーマにした曲。
当時の僕にはこれ以上にないふさわしい曲だった。
いつのまにかその鼻歌を歌っているくらい耳に聴かせ、ギターコードもなにも見なくても弾けるようになったその曲。
本当はその曲だけでもボーカルをしたかったけど、僕には歌は無理。
だから、後悔の想いは、ボーイッシュなクラスメイトが代弁して伝えてほしい。
いきなり、ボーカルのサビからはいり、ドラムとギターを投入。
僕らのふたつの音は静かで、もう伝えたくても伝えられない女々しい思いを描く。
まるで、謝りたくても謝れないどこかの青春の罪を犯した少年のように。
Aメロ、Bメロは過去の回想。
桜舞う季節にあなたと出会い、友達として共に過ごしていた。けれど、時折みせるその悲しそうな顔に僕は気がつかないでいた。
はじめは、仲良くいたけど、クラスが変わり、お互いの環境が変わってしまって、一緒にいることはなくなった。桜の花びらが落ちるように少しずつ、友情も砕けていった。
そして、サビ──僕はいつでも、思い出す。
もし、あの日に帰れたなら。
あの子のあの涙を僕は背負ってあげれただろうか。
こんな僕と共に過ごしてくれてありがとう。
最低な僕といてくれて。
だから、今、こんな最低だった僕を許せたんだ。
覚えていて僕のこと。
「大人になんてなれやしないよ。大人になんてなりたくないよ」
ボーイッシュなクラスメイトの歌詞に心を引き込まれる。
反省はしている。でも、もう、後悔はしていない。
最低だった鷹乃祐麻はもういない。
そして、僕らのライブは最高の幕を閉じた。
心に青春の大切さと後悔の思いを刻みながら。
鼓膜に響き渡る歓声は地響きとして、体にも振動を与える。
ライトの逆光で観客の表情が分からなくても、楽しんでいることは跳び跳ねている姿を目視できれば、すぐに分かることだった。
この感覚は、きっと、二度目だろう。
体がジンジンと熱くなり、思考は楽しいことばかりを考え、過去のことなんて一時的に忘れる──そんな状態は中学の頃にライブをやったとき以来だろう。
これだよ本当の自分をだせるときの感覚は。
本当の自分は、過去なんかに縛られずに楽しいことばかりを考えて生きてきた。
なにも知らなかった頃の小学生のようなテンションに戻っても、いいだろう。
たった一日のお祭りなんだから。
歓声は次第に止んだが、二曲目はまだかとザワザワとしたざわめきは止まることはなかった。
「一曲目を聞いていただき、ありがとうございました。二曲目は映画の主題歌にもなった曲です。同じくBLUE ENCOUNTで『ユメミグサ』。聞いてください」
その曲は、僕が中学三年生に進級したときからハマった曲だった。
原作が小説の実写映画の主題歌であるその曲は、もし春にあなたを抱きしめて涙を背負ってあげればあなたと一緒にいれたかなという後悔をテーマにした曲。
当時の僕にはこれ以上にないふさわしい曲だった。
いつのまにかその鼻歌を歌っているくらい耳に聴かせ、ギターコードもなにも見なくても弾けるようになったその曲。
本当はその曲だけでもボーカルをしたかったけど、僕には歌は無理。
だから、後悔の想いは、ボーイッシュなクラスメイトが代弁して伝えてほしい。
いきなり、ボーカルのサビからはいり、ドラムとギターを投入。
僕らのふたつの音は静かで、もう伝えたくても伝えられない女々しい思いを描く。
まるで、謝りたくても謝れないどこかの青春の罪を犯した少年のように。
Aメロ、Bメロは過去の回想。
桜舞う季節にあなたと出会い、友達として共に過ごしていた。けれど、時折みせるその悲しそうな顔に僕は気がつかないでいた。
はじめは、仲良くいたけど、クラスが変わり、お互いの環境が変わってしまって、一緒にいることはなくなった。桜の花びらが落ちるように少しずつ、友情も砕けていった。
そして、サビ──僕はいつでも、思い出す。
もし、あの日に帰れたなら。
あの子のあの涙を僕は背負ってあげれただろうか。
こんな僕と共に過ごしてくれてありがとう。
最低な僕といてくれて。
だから、今、こんな最低だった僕を許せたんだ。
覚えていて僕のこと。
「大人になんてなれやしないよ。大人になんてなりたくないよ」
ボーイッシュなクラスメイトの歌詞に心を引き込まれる。
反省はしている。でも、もう、後悔はしていない。
最低だった鷹乃祐麻はもういない。
そして、僕らのライブは最高の幕を閉じた。
心に青春の大切さと後悔の思いを刻みながら。
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