親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

文字の大きさ
上 下
193 / 244
第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

103・5時間目 青春は人生最大の宝物

しおりを挟む
 ボーイッシュなクラスメイトは最後の歌詞を歌い終え、一曲目が終了した。

 鼓膜に響き渡る歓声は地響きとして、体にも振動を与える。

 ライトの逆光で観客の表情が分からなくても、楽しんでいることは跳び跳ねている姿を目視できれば、すぐに分かることだった。

 この感覚は、きっと、二度目だろう。

 体がジンジンと熱くなり、思考は楽しいことばかりを考え、過去のことなんて一時的に忘れる──そんな状態は中学の頃にライブをやったとき以来だろう。

 これだよ本当の自分をだせるときの感覚は。

 本当の自分は、過去なんかに縛られずに楽しいことばかりを考えて生きてきた。

 なにも知らなかった頃の小学生のようなテンションに戻っても、いいだろう。

 たった一日のお祭りなんだから。

 歓声は次第に止んだが、二曲目はまだかとザワザワとしたざわめきは止まることはなかった。

「一曲目を聞いていただき、ありがとうございました。二曲目は映画の主題歌にもなった曲です。同じくBLUE ENCOUNTで『ユメミグサ』。聞いてください」

 その曲は、僕が中学三年生に進級したときからハマった曲だった。

 原作が小説の実写映画の主題歌であるその曲は、もし春にあなたを抱きしめて涙を背負ってあげればあなたと一緒にいれたかなという後悔をテーマにした曲。

 当時の僕にはこれ以上にないふさわしい曲だった。

 いつのまにかその鼻歌を歌っているくらい耳にかせ、ギターコードもなにも見なくても弾けるようになったその曲。

 本当はその曲だけでもボーカルをしたかったけど、僕には歌は無理。

 だから、後悔の想いは、ボーイッシュなクラスメイトが代弁して伝えてほしい。

 いきなり、ボーカルのサビからはいり、ドラムとギターを投入。

 僕らのふたつの音は静かで、もう伝えたくても伝えられない女々しい思いを描く。

 まるで、謝りたくても謝れないどこかの青春の罪を犯した少年のように。

 Aメロ、Bメロは過去の回想。

 桜舞う季節にあなたと出会い、友達として共に過ごしていた。けれど、時折みせるその悲しそうな顔に僕は気がつかないでいた。

 はじめは、仲良くいたけど、クラスが変わり、お互いの環境が変わってしまって、一緒にいることはなくなった。桜の花びらが落ちるように少しずつ、友情も砕けていった。

 そして、サビ──僕はいつでも、思い出す。

 もし、あの日に帰れたなら。

 あの子あなたのあの涙を僕は背負ってあげれただろうか。

 こんな僕と共に過ごしてくれてありがとう。

 最低ななにもなかった僕といてくれて。

 だから、今、こんな最低だった僕を許せたんだ。

 覚えていて僕のこと。

「大人になんてなれやしないよ。大人になんてなりたくないよ」

 ボーイッシュなクラスメイトの歌詞に心を引き込まれる。

 反省はしている。でも、もう、後悔はしていない。

 最低だった鷹乃祐麻ぼくはもういない。

 そして、僕らのライブは最高の幕を閉じた。

 心に青春の大切さと後悔の思いを刻みながら。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...