親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

文字の大きさ
上 下
192 / 244
第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

103時間目 後悔と決意の文化祭

しおりを挟む
 色々なことを考え、決意をした。

 僕らの演奏がいよいよまもなくというところでMCの煽りが炸裂さくれつ

 ちなみに、この煽り文の原案は僕で、バンドメンバーと共に改稿をした。

「頑張ろうね」

 ボーイッシュなクラスメイトが、かなり緊張した声色で皆に伝えるように言った。

「──うん」

「最高のライブにしてやろうぜ!」

「頑張るよ」

 学年一位の友人、いつも一緒に下校をしている友人、僕の順に己の意思を伝えるように答えると、彼女は少し強ばっていた表情を緩め、フッと王子様のような笑みを見せた。

 やるしかない。

 後悔して立ち止まっていたって時間の無駄だろ。僕に必要なのはうじうじといつまでも立ち止まっている時間じゃなくて、明日の自分が今日の自分よりよいと思える、そんな時間が必要だ。

 あの三年間は無駄じゃない。

 あの日々がなければ、僕はきっと、こんな立派な人間になれなかった。

 別になにも成し遂げたり、すごいことをしているわけじゃない──でも、今を本気で楽しんで過去に辛いことがあったけどそれでも腐らずに生きているそんな自分がとても誇らしく思えるのは、自意識過剰というやつだろうか。

 でも、いいか。

 今日は年に一度の文化祭。

 せっかくのお祭り気分だ。

 味わえなかった三年分の青春をギュッと凝縮して今日でぜんぶ味わい尽くしてやろう。

 反省はしている。だけど、もう、後悔はしていない。

 これは、後悔と決意から始まる最高の文化祭せいしゅんの物語だ。

 ──

 MCの煽り文が、終わったとき、僕らの世界一輝いているステージが幕を開ける。

「うおおぉぉぉぉぉ!」

 四人で一斉に飛び出し、僕と学年一位の友人は、エレキギターとエレキベースを思いっきりかき鳴らす。

 途中から、友人のドラムが投入され、音に最高の幕開けといえる始まりを知らす。

 ステージからは、ライトの逆光で観客の顔は見えない。

 逆に言えば、僕にとってはとても都合のいい状態だった。

 もう、あの子やアイツ、彼の影を探さなくてすむから。

 一通り、観客を煽ると、ボーイッシュなクラスメイトが挨拶をした。

「皆さん、こんにちは! 【ZERO RESTARTゼロリスタート】です!」

 中性的な響きがいい声で彼女は挨拶すると、ファンだろうか女子の黄色い声援が聴こえてきた。

 あれ、山内先輩と同じくらいモテていない? この子。

「私たちは、とあるバンドが大好きでこのメンバーで組みました。ではさっそく聞いてください! 私たちが愛してやまないバンド! BLUE ENCOUNTで『もっと光を』!」

 この曲は、ボーイッシュなクラスメイトがおすすめした曲で、かなり難解なコードが揃う曲だ。

 しかし、元々の基礎能力があってか弾けないコードも練習を重ねていく間に弾けるようになった。

 ボーカルの静かな語り風の歌詞とそれを引き立てるギター。

 いきなりサビに突入すると、全ての楽器が希望のはじまりと言わんばかりに音を奏でる。

 Aメロ、Bメロもギターは難解なコードが続き、そして、もう一度、サビに突入。

 イントロ後とは違い、ギターの活躍は少なめ。

 だが、このあとはギターソロが待ち受ける。

 指が八本生えたかのように弦をどこまでも走る。

 指が少し痛むが関係ない。

 ギターソロが一番楽しくて、ギタリストの生きがいだから。

 ギターソロが終わり、再び語り風の歌詞に戻り、ギターは静かに身を潜める。

 そして、ラストのサビに突入。

「ずっと僕が君を照らすから!」

 ボーイッシュなクラスメイトのその歌詞を最後、僕らの一曲目は終了した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

あの空の向こう

麒麟
青春
母親が死に天涯孤独になった、喘息持ちの蒼が 引き取り先の兄と一緒に日々を過ごしていく物語です。 蒼…日本と外国のハーフ。   髪は艶のある黒髪。目は緑色。   喘息持ち。   病院嫌い。 爽希…蒼の兄。(本当は従兄弟)    職業は呼吸器科の医者。    誰にでも優しい。 健介…蒼の主治医。    職業は小児科の医者。    蒼が泣いても治療は必ずする。 陸斗…小児科の看護師。    とっても優しい。 ※登場人物が増えそうなら、追加で書いていきます。  

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

悩みの夏は小さな謎とともに

渋川宙
青春
お盆前に親戚の家を訪れた高校二年の蓮井悠人。この機会に普段は東京の大学で大学院生をしている従兄の新井和臣に進路相談をしとうと決意する。  そんな悠人と和臣に、祖母の志津が不思議な話を持ってきた。なんでも町はずれにある廃校舎を勝手に利用している人がいるという話で…

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

男だと思っていた年上の幼馴染がギャルになってた

朝日はじめ
青春
宮田晴彦は不登校児になってしまった。 このまま引き籠っているのはまずいと思い、晴彦はリハビリを兼ねた外出でゲームセンターへと足を運んだ。 そこには年上のギャルがいて―― 短編です。完結しました。

処理中です...