親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

97・8時間目 演劇の厳しさ

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 演劇と聞くと、キラキラした舞台に堂々と立ち、圧巻の演技で観客を魅了する──そんなことが想像できる。

 だが、それは厳しい稽古けいこや練習があってこそ。

 練習もせず、都合よく、人々を魅了出来る演技をすることなんて出来ない。

 だから、日が経つにつれ、自身の演技に納得できず首をかしげる裕太を見て、いくら高スペックな人間でも、出来ないことのひとつやふたつはあるんだなと思った。

「はい、ストップー! おーい、三石ー! もう少し感情をこめてくれないかー? 暗い感じで頼むー!」

 演技指導者兼監督で担任の藤木は、遼太郎にアドバイスとは言えないアドバイスを送った。
んー、ムズいよな。

「高橋」

 俺の肩を叩いたのは、クラスのバカップルの男の方である拓也だった。

「ん? どうした?」

 彼は、先ほど、自分の役を終えたからか、台本をうちわがわりにパタパタと仰いでいた。

「劇って、難しいな。三石とか山内とかすごいわ、あいつら。俺、あんなにセリフ覚えれる自信ない」

 ふぅとため息をつきながら、彼は言った。

 確かにすごいと思う。

 裕太は、自ら勝ち取って、遼太郎は推薦されてだが、形は違えど、重要な立ち位置のため、覚えるセリフが多い。

 ちらりと、二人の方を見てみると、

「ごめん! 山内! セリフ飛んじゃった!」

「飛んじゃってたね。次、頑張ろう」

 一通り、終えたあとなのか、藤木にアドバイスをもらいながら、着々と覚えていく二人。

「高橋、練習するか?」

「いいのか? じゃあ頼む」

 ちょうど、俺の役と拓也の役で会話をするシーンがあったため、そこを練習することにした。

 そのシーンは、主人公の家の近くに住むヒロインを軽蔑するクラスの人気者が、主人公の育ての親の持っている荷物を持ち、手伝うといったシーンだ。

 いくら軽蔑をする人間だったとしても、誰かを助けたりする……人の多方面の姿を作者は巧妙に物語として落としこんでいる。

「じいさん、その荷物重そうだな。大丈夫か?」

「なぁに、構わんよ。気遣ってくれてありがとうなぁ」

「いやいや、じいさん、顔色悪いぜ? 俺が持つよ」

 劇本番では、ここで俺が持っている荷物を拓也が持つ。

「ほっほっほ……。あんたは優しいのぉ。それ、そこの赤い屋根の家があるじゃろ? そこまで頼む」

「おうよ!」

 ……。

 拓也、演技めっちゃ上手くないか? 自然体な感じがでて、劇じゃなくても人助けしてそう。

「高橋、お前……」

 拓也は放心したような顔でいた。

「じいさんの役上手くね!?」

「は? どこがだよ!」

「高橋が70才くらい老けたらこうなってそうなんだが……」

「マジで?」

 俺って、そんなじいの役上手いの?

「いいじゃん! あとはあいつらと合わせるだけだな!」

 拓也がニカッと笑って、言った。

 そうだな。でも、肝心の二人は結構苦戦してるようだな。

「失礼しまーす! 藤木先生! 衣装が出来上がりましたよ!」

 ガラガラと教室の扉が開け放たれたと思えば、ひとりの男子生徒が、そう報告をした。

「おぉー! マジかー。それじゃあ、さっそくつけてみようぜー。高橋ー、山内ー、三石ー。集合ー」

 藤木のその声に俺たち三人は、集まった。
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